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総合警備保障、巡回警備ロボット“ガードロボ D1”をお披露目!――オプション機器で初期消火作業にも対応

2005年06月23日 19時15分更新

文● 編集部 小西利明

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今回発表された“ガードロボ D1”。写真はオプションの消火ユニットを装備した状態 標準状態のD1。身長は約1mとのことで、両隣の警備員と比べるとずいぶん小さく見える
今回発表された“ガードロボ D1”。写真はオプションの消火ユニットを装備した状態標準状態のD1。身長は約1mとのことで、両隣の警備員と比べるとずいぶん小さく見える

綜合警備保障(株)は23日、巡回警備ロボット“ガードロボ D1”の開発を発表。D1と警備員を組み合わせた新しい常駐警備システムの導入を開始すると発表した。記者発表会ではD1が活躍するさまざまなシチュエーションを想定したデモが行なわれ、消火ユニットを使った初期消火作業の実演なども披露された。

同社では以前より、社会構造の変化にともなう労働人口の減少や、顧客企業の変化、犯罪の増加など、さまざまな問題がコアビジネスである警備にも影響を与えると分析。1982年という早い時期から警備用のロボット開発に取り組んでいた。1985年の“A”シリーズから始まり、2002年には“ガードロボ C4”を商用化したほか、愛知万博会場でも、C4をベースにした“ガードロボi”などが活躍しているという。今回発表されたD1は直接市販されるものではないが、屋内での巡回警備という利用シーンに重点を置いた、非常に実用的な警備ロボットである。

ガードロボ D1につながる同社のロボット開発の歴史。愛知万博に行った方は、屋外で活動するガードロボiをごらんになったかもしれない
ガードロボ D1につながる同社のロボット開発の歴史。愛知万博に行った方は、屋外で活動するガードロボiをごらんになったかもしれない

D1は身長約1m、重量約90kg。内蔵のリチウムイオン充電池で駆動し、走行速度は約30cm/秒。登坂角度は車椅子用スロープを走行できる±5度ということだ。映像用のカメラを5台内蔵するほか、各種のセンサー(後述)を搭載。さらに無線LAN機能によって警備センターと接続され、リアルタイムに映像を伝送したり、ロボットの遠隔操作も可能となっている。基本的に深夜の建物内部の巡回警備作業を代替することを目的としていて、あらかじめ設定された巡回ルートを移動して警備を行ない、侵入者の発見や火災、漏水検知、不審物の発見や設置物の写真による監視といった作業を行なう。走行や障害物の回避、回避等によって巡回ルートを外れた場合のコース再設定などは、自律して行なえる。また充電ユニットへの接続も自動で行なえるようになっている。同社ではD1のような巡回警備にロボットを導入することで警備要員のコストを削減しつつ、警備回数を増やすことでセキュリティーリスクを軽減可能としている。

D1の顔に当たる部分には可動式のカメラが搭載されている。そのほか足まわりにも多数のセンサーが装備されている お腹の部分にはディスプレーと、警備センターとの会話用の“呼び出し”ボタンが備わる。簡単な案内業務にも利用可能としている
D1の顔に当たる部分には可動式のカメラが搭載されている。そのほか足まわりにも多数のセンサーが装備されているお腹の部分にはディスプレーと、警備センターとの会話用の“呼び出し”ボタンが備わる。簡単な案内業務にも利用可能としている

D1はある程度の自律行動が可能だが、完全な無人運用ではなく、あくまで有人の警備システムの一環として運用されるロボットだ。通常は無線LAN経由で警備センターからモニターされ、カメラ映像は警備センターへリアルタイムで転送されるほか、ロボット自体の遠隔操作やエレベーター乗降の際のドア操作などは、警備センター側で行なう。不審人物等を発見した場合は、「侵入者発見!」音声で警告しつつ、人物をカメラで捉え続けられるように追跡を行ない、警備センターからは警備員が現場にかけつけるという運用となる。映像は警備センターに送られるだけでなく、ロボット本体のレコーダーにも記録されるという。不審者とそうでない人物を区別する機能はないので、従業員が活動していない夜間などの運用が前提となる。ロボットを経由して警備センターと通話する機能もあるので、不審者でなければ警備センターとの通話で事情を話すということもできるだろう。またICカードリーダーを搭載して、カードによる認証を行なうといったことも検討されているもようだ。

想定されるD1の用途。これらの用途に適切に利用できるよう、ガードロボ C4からオーバースペックなセンサーは省くなどの、実用性を重視した設計が行なわれている
想定されるD1の用途。これらの用途に適切に利用できるよう、ガードロボ C4からオーバースペックなセンサーは省くなどの、実用性を重視した設計が行なわれている

映像監視用カメラは5台(+画像認識用1台)内蔵されていて、顔に当たる部分のカメラ映像はカラー、それ以外の両側面と背面はモノクロで映像伝送されていた。搭載されるセンサーは多種多様で、対人対物観測用のレーザー距離センサーや超音波センサー、人物感知用の遠赤外線センサー、火災感知用の赤外線センサーや匂いセンサー(物が燃える匂いを感知する)、漏水で濡れた床を識別する足下のセンサーなどが搭載されているという。各種のセンサーを組み合わせ、さらに警備センターでの警備員と連携することにより、実用的な警備ロボットとなるわけだ。ちなみに侵入者を撃退するための装備は備えていない。デモで利用されていた無線LAN機器は、普通に市販されている機器で、ロボットのモニタリングもごく普通のWindowsパソコンで行なわれていた。

不審人物対処のデモ。センサー内に人間が入ると音声で警告したうえ、搭載カメラとセンサーで追尾も行なう。カメラ映像は警備センターに伝送される(右写真の左上画像)ので、警備員はリモートで人物の確認を行なえる

またオプションの消火ユニットを装着することも可能で、火災を発見した場合は警備センターに通報したうえで、警備員による遠隔操作で初期消火活動を行なうことができる。消火作業は自律行動ではなく、警備員により操作されるとのことだ。

このロボットがただちに市販されるわけではなく、値段もついてはいない。同社では大人数の警備先や高層ビル、ホテルなどに導入して有効性の検証を行なったうえで本格導入し、将来の販売につなげたいとしている。

消火ユニット装備時の背面。赤いランドセルの左右に普通の消火器が計2本内蔵可能。ランドセル中央下の銀色の部分の内側には、充電設備とのドッキングコネクターが隠されている。充電設備への接続も自律で可能だ
消火ユニット装備時の背面。赤いランドセルの左右に普通の消火器が計2本内蔵可能。ランドセル中央下の銀色の部分の内側には、充電設備とのドッキングコネクターが隠されている。充電設備への接続も自律で可能だ
右腕のノズルから消火剤を噴射! 腕は上下に角度を変えられるほか、左右にボディーを軽く振って、まんべんなく消火剤を浴びせられる
右腕のノズルから消火剤を噴射! 腕は上下に角度を変えられるほか、左右にボディーを軽く振って、まんべんなく消火剤を浴びせられる
消火作業のデモを行なったD1のコントローラー機材。ごく普通のWindowsノートと無線LANアクセスポイントを利用していた。運用システムに市販品や既存技術を活用することで、トータルでの運用コストを削減できる
消火作業のデモを行なったD1のコントローラー機材。ごく普通のWindowsノートと無線LANアクセスポイントを利用していた。運用システムに市販品や既存技術を活用することで、トータルでの運用コストを削減できる

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