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『Adobe Acrobat 7.0』で目指す電子文書ソリューションの未来とは?――米アドビ システムズ パム・デジオ氏に聞く

2004年12月14日 09時21分更新

文● 取材・文:千葉英寿

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デジオ氏は米Palm社でPalm OSやHotSyncの開発を指揮し、Palm OSの市場シェア90%に導いた経験を持つビジネスウーマン
デジオ氏は米Palm社でPalm OSやHotSyncの開発を指揮し、Palm OSの市場シェア90%に導いた経験を持つビジネスウーマン
[千葉] PDFフォームの導入などについては、国内や海外(米国など)での事例を耳にしています。最新の状況を教えていただけますか?
[デジオ氏] すでにお伝えしているとおり、日本国内の政府・行政関連では、文部科学省、埼玉県庁、企業ではホンダや住友商事、みずほ銀行や東京三菱銀行といった金融関係、米国では内国歳入庁に導入いただいています。これら以外には、具体的にお話できる事例はないのですが、EU(欧州連合)の主要国政府の中からも導入例が報告されています。これに関しては今後、詳細をお伝えできると思います。
[千葉] PDFによる電子ドキュメントソリューションの利用普及のために必要なものは何でしょう? Adobe Readerの普及はすでに十分だとお考えですか?
[デジオ氏] Adobe Readerは現在、5億5000万本を超える配布実績がありますが、もちろんそれで足りているとは考えていません。しかし、今回のAdobe Readerのエンハンスメント(機能強化)は大きなステップと言えます。さらにPDFが単にスタティックなドキュメント(改ざん不能な文書)ということだけでなく、(PDFで)何ができるかについて、さらに啓蒙しなければならないと考えています。
[千葉] PDF戦略を進めるアプリケーションとして、AcrobatとAdobe LiveCycle Serverソリューションの2つがあるわけですが、この2つの戦略的なバランスをどのようにお考えでしょう?
[デジオ氏] 2つの製品ラインがあるとことで、双方にシナジー(相乗)効果があるものと考えています。Acrobatはデスクトップのアドホックなソリューションとして、また、LiveCycle Serverソリューションは、ワークフロー管理された構造化したシステムに使われます。(将来の正しい)予測は難しいと思いますが、きちんと私たちがやるべきことをしていけば、両方とも成長するはずだと考えています。
[千葉] PDFの普及において、何か障害になっている事はありますか? あるようでしたらお聞かせください。
[デジオ氏] これは障害ということではないと思いますが、北米では日本のように、電子署名のインフラがまだ整っていないことがあるかと思います。米国では、セキュリティーは“パスワード”と“ユーザーネーム”が先行してしまいました。


デジオ氏
[千葉] そうした日本と米国のように、国によって違いがあることについては、どのようにお考えですか?
[デジオ氏] こうした国ごとの違いは、それぞれ一方の市場から教訓を学ぶことができると考えています。
[千葉] 日本では“e-文書法”“個人情報保護法”と法整備がなされつつありますが、それにより電子文書の捉え方、考え方も変わってくると思いますが、その変化や差異をPDFというひとつの技術で対応できるものでしょうか?
[デジオ氏] 規則や規制は国によって違うと思いますが、文書の利用ということではビジネスプロセスや公的なプロセス、認識については各国で共通しているものと考えます。日本の場合ですと、“印鑑”をつかったワークフローのように(手順の)違いもありますが、ベースにあるものは変わらないと思います。
[千葉] それはつまり、各国ごとに異なる対応を行なう可能性もあるということですか?
[デジオ氏] はい。国ごとにAcrobatやサーバー製品をカスタマイズする戦略を図っていきます。印鑑への対応のように地域に合ったセキュリティーを実装することが可能ですし、弊社自身も技術情報を各パートナーに供給していきます。事実、すでに現在、1800ものプラグインがあります。これはAPIやSDKを提供しているので、さらにカスタマイズすることができるのです。

今回のAdobe Acrobat 7.0は、プロ・クリエイティブ向けの機能を強化しているが、ASCII24でこの記事をお読みの方の多くにはそれほど関係ない機能と思われるかもしれない。もちろん、出版を行なう上では大変重要な機能を有しているわけだが、いま、一般ビジネスユーザーやコンシューマユーザーにとってより重要なのは、電子文書フォームやセキュリティーポリシーといったAdobe Readerとサーバー製品の提供するソリューションだと言える。

現在のAdobe Acrobatはこのビジネスとプロ・クリエイティブの“2つの顔”を持つわけだが、そろそろ双方の方向性にマッチした変化も必要になってきている。ビジネスとクリエイティブ、クライアントとサーバー、2つの側面を持つようになったAcrobatが今後どういった変化を遂げていくのか、大いに注目したい。

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