このページの本文へ

VAIO type X VGX-X90P

VAIO type X VGX-X90P

2004年12月14日 00時00分更新

文● 編集部・小西利明

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

“タイムマシンビュー”がもたらすtype Xの決定的な優位性

X3ビデオサーバー
type Xが2台内蔵している「X3ビデオサーバー」。

 type Xには合計7基のTVチューナーが搭載されているが、一般的なTVパソコンとは異なり、7基すべてがパソコンに直接PCIバス経由で接続されているわけではない。パソコンに直結されているのは1基だけで、残りの6基は“X3ビデオサーバー”と呼ばれる、パソコンから独立した“HDDレコーダー”に搭載されている。ここがまず普通のTVパソコンとは大きく違う点だ。

 1台のX3ビデオサーバーには、3基のTVチューナーとMPEG-2エンコーダー、シリアルATA接続の250GB HDD、ネットワークインターフェースなどが搭載されており、完全にパソコンとは独立して動作する。type XにはこのX3ビデオサーバーが2台内蔵されているので(ソニースタイルモデルでは1台に変更も可能)、3チューナー×2+パソコン本体のTVチューナーで合計7チューナーとなるわけだ。どのくらい独立しているかというと、type Xの本体に電力が供給されると、パソコン部分が稼動している/いないに関わらず、勝手に起動して(設定されていれば)録画を始めるというもの。パソコン側がフリーズしたり、OSが起動していなくても、X3ビデオサーバーは電力が供給される限り動作しつづける。通常のTVパソコンでは、起動しなかったりOSがフリーズすれば当然録画もできなくなるが、type XのX3ビデオサーバーなら、そうした問題は起きない。

 X3ビデオサーバーとtype Xのパソコン側とは、本体内のネットワーク(100BASE-TX)とスイッチングハブを介して接続されている。type Xのネットワーク端子をインターネットアクセス環境(例えば家庭のブロードバンドルーターなど)に接続すると、パソコン側だけでなくX3ビデオサーバーもインターネットに接続できるようになる。録画は独立して行なえるX3ビデオサーバーだが、録画した動画を見たり、それをDVDに記録したりといった操作は、type Xのパソコン側で行なう。ビデオの視聴や管理には、VAIOシリーズ共通の統合AVソフト“Do VAIO”を使用する。type XのDo VAIOには、X3ビデオサーバー専用の機能であるタイムマシンビューが備わっていて、これを使ってX3ビデオサーバーが録画したビデオを管理する。



新聞のテレビ欄のようなレイアウトで、録画した番組を一覧できる“タイムマシンビュー”
新聞のテレビ欄のようなレイアウトで、録画した番組を一覧できる“タイムマシンビュー”。

 X3ビデオサーバーは設定された時間帯の番組をすべて録画する。しかも単純に設定時間分をまとめて1番組として録画するのではなく、ソニーコミュニケーションネットワーク(株)が運営するTV情報サイト“テレビ王国”のEPGデータを元に、自動的に番組単位で切り分けて録画してくれる。そしてタイムマシンビューは録画した日時順に、新聞のTV欄のようなレイアウトで録画済みビデオを分類表示する。この機能・インターフェースのおかげで、いつどのチャンネルでどんな番組が録画されたのかが後から一目で分かり、とても使いやすい。録画時間帯を毎日24時間カバーできるように設定しておけば、24時間録り続けるので、見たい番組を録り逃すなんてことは一切ない。「録り逃しの悪夢よさらば!」となるわけだ。このEPGに基づいた番組の自動切り分け・分類表示こそが、type Xとそれ以外のTV録画ソリューションの“決定的な違い”と言える。

X3ビデオサーバーがどの曜日/時間を録画するかの設定は、Do VAIOから行なう チューナー1つごとに、録画チャンネルや曜日、何時から何時まで録るか(1指定につき最長12時間)、録画モード(ビットレート)を指定できる。番組単位のビットレート指定はできない
X3ビデオサーバーがどの曜日/時間を録画するかの設定は、Do VAIOから行なう。チューナー1つごとに、録画チャンネルや曜日、何時から何時まで録るか(1指定につき最長12時間)、録画モード(ビットレート)を指定できる。番組単位のビットレート指定はできない。
X3ビデオサーバーが使う“テレビ王国”のEPG(画面はDo VAIOの別の機能のものです)。タイトルやジャンル、(EPGにあれば)出演者といったEPG情報も、自動でビデオに付記される EPGが正常に受信された状態で録画されたビデオには、タイトルやジャンルなどが自動で付加される
X3ビデオサーバーが使う“テレビ王国”のEPG(画面はDo VAIOの別の機能のものです)。番組タイトルやジャンル、(EPGにあれば)出演者といったEPG情報も、自動でビデオに付記される。EPGが正常に受信された状態で録画されたビデオには、タイトルやジャンルなどが自動で付加される。

 仮にWチューナー搭載のHDD&DVDレコーダーを3台用意して、type Xと同じことをさせることを想像してみよう。例えば時間帯を“12時から24時まで”と指定して録画した場合は、12時間分がまとめて1本のビデオ(1ファイル)として録画されてしまう。EPGを自動取得する機能はHDD&DVDレコーダーでも珍しくはないが、すべての番組を番組単位で録画するには、ユーザーが手作業でEPGから録画予約をしなくてはならない。番組表は毎日異なるわけで、こんな作業は毎日続けられるはずもない。また、“キーワード指定”の録画機能を使っても、希望の全番組を漏らさず録ることはまずできない。X3ビデオサーバーはこうした手間を完全に払拭してしまうわけだ。既存のHDD&DVDレコーダーやTVパソコンを何台束にしても、type Xを真似できない最大の理由はここにある。

 ただし、タイムマシンビューにも弱点はある。EPGの番組情報を元にして動作するため、スポーツ中継の延長などがあった場合、延長分が他の番組として録画されてしまい、EPG情報と実際の番組が同一に戻るまで、ずれつづけてしまうのだ。それでも録り逃しは発生していないので、ほかのHDD&DVDレコーダーやTVパソコンと比べればかなり救われるはずである。

放送がない時間帯が録画時間帯に含まれていた場合は、何も映っていない画面が録画される。自動で判別する機能が備わるとよいのだが……
深夜~早朝などの、放送がない時間帯が録画時間帯に含まれていた場合は、何も映っていない画面がひたすら録画される。ここを自動で判別する機能が備わるとよいのだが……。

 タイムマシンビューでのビデオ視聴は、見たいビデオを選んで再生を選択するだけ。特に悩むこともなく簡単にできる。本体内部のLAN経由で情報をやりとりするため、タイムマシンビューの表示時には若干待たされるが、再生後はパソコン側でビデオやDVDを見ているのとなんら変わりなく操作できる。注意点としては、“X3ビデオサーバーが現在録画中の番組は見られない”ことだ。そうした番組を見たい場合は、パソコン側のTVチューナーで見ることになる。パソコン側のTVチューナーは1基だけなので、type Xでも放送中の番組を同時に複数チャンネル表示することはできない。可能ならばリアルタイムの複数チャンネルを視聴可能に改善してほしいところだ。

画面はテレビ表示中のものだが、X3ビデオサーバーのビデオを見る際もUIは基本的に同等
画面はテレビ表示中のもの(モザイク処理済み、以下同様)だが、X3ビデオサーバーのビデオを見る際もインターフェースは基本的に同等だ。

 タイムマシンビュー以外に、設定したキーワードやジャンルを元にビデオを検索して一覧表示する、“キーワードビュー”という表示モードもある。たとえば“韓国”というキーワードを設定すると、EPG情報に“韓国”と書かれたビデオを抽出して、表形式で表示する。ソニーの“スゴ録”などは、キーワードを含む番組を自動で録画する機能を持つが、type Xなら指定した時間帯の全番組を元々録画しているので、“選んで録る”のではなくすでに録画済みビデオ群から“選んで見る”わけだ。

キーワードビューの画面。左側の2列は、キーワードに“たけし”“韓国”と指定して該当したビデオ。それ以外の5列はジャンルで分類されたビデオ。使ってみると便利な機能だ キーワードやジャンルを指定もDo VAIOから行なう。あくまでEPG情報を元に検索・分類を行なうので、EPG情報にない出演者や、省略されたタイトルには引っかからない
キーワードビューの画面。左側の2列は、キーワードに“たけし”“韓国”と指定して該当したビデオ。それ以外の5列はジャンルで分類されたビデオ。使ってみると便利な機能だ。キーワードやジャンルを指定もDo VAIOから行なう。あくまでEPG情報を元に検索・分類を行なうので、EPG情報にない出演者や、省略されたタイトルには引っかからない。

 肝心の画質だが、X3ビデオサーバーが搭載するMPEG-2エンコーダーチップは、低ビットレート時でもブロックノイズが目立たず、画質が良好な点を評価して採用したのだと言う。またゴーストリダクション機能や3次元Y/C分離といった、基本的な高画質化機能も備わっている。実験してみると、長時間モード(2.5Mbps)と標準モード(4Mbps)では、画質の違いはほとんど感じられないほどだった。古い世代のTVパソコンの4Mbps(高画質化機能のない場合)と比べたら、高画質化機能とエンコーダーの画質の良さにより、むしろtype Xの2.5Mbpsのほうがきれい見えるように感じる。2.5Mbpsで24時間録画を行なった場合、X3ビデオサーバーの250GB HDDでは約3日分の映像を記録できる。十分見られる画質で3日間丸ごと録れれば、録り逃しや見逃しの心配はほとんどないだろう。画質はやや落ちるが1.25Mbpsならば6日間は録れるし、Sony StyleモデルでX3ビデオサーバーのHDDを400GBに増量すれば、2.5Mbpsでも24時間録画で約4日分、1.25Mbpsならば約8日分も録画できる。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン