(社)トロン協会は第13回総会を31日に都内で開催し、それに合わせて特別講演会と記者懇談会を行なって、今後の事業方針を発表した。
“どこでもコンピュータ”の概念 |
講演会、記者懇談会ともに“TRON(The Real-time Operating system Nucleus)”の生みの親である東京大学の坂村健教授が、TRONプロジェクトの現状と新しい取り組みについて説明した。
東京大学坂村健教授 |
まず、現状について坂村教授は、TRONは「世界で最も使われている組み込みOS」であり、多くの携帯電話のOSとして、あるいは自動車のエンジン制御用として使用されているとした。また、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモが試験サービスを開始した次世代携帯電話“FOMA”にも、TRONが使われていることを明らかにした。TRONそのものを製品化する動きについても触れ、実際に米レッドハット(Red Hat)社などが、TRON系の製品を販売している。
そして今回、新たな展開として坂村氏はネットワークへの接続、それもセキュリティーの確立したネットワークの構築・接続を掲げた。坂村氏は以前から“どこでもコンピュータ”を提唱しており、また「悪いことをする人のレベルは世界標準」だと、ネットワークのセキュリティーをもっと考慮すべきだ との考えを示していた。
発表したのは、オープンプラットフォームの“T-Engine ”とTRON系OS『eTRON』。
“T-Engine ”のCPUボード |
“T-Engine”は多用途のプラットフォームで、各種サイズの拡張ボードから開発ツールまでを指す。これまでのTRONは非常にゆるやかな規格で構成されていたが、“T-Engine”ではボードのサイズなどもこまかく規定している。主に開発のプラットフォームや汎用の制御ボードなどとして製品化する予定。
『eTRON』はネットワーク機能を取り込んだTRONで、ネットワークを通じてファイルを高速かつ安全に移動することが可能な“電子実体”を実現している。たとえば、非接触型カード上のICチップに実装して、認証のための実体(プログラム、またはデータ)を、カードとカードリーダーの間で、実際にやりとりさせることなどが可能。
坂村氏は「非常にセキュリティーの高い、新しい組み込み型OSを提供する」とし、“T-Enginre”および『eTRON』が3~5年後には広く利用されるようになるだろうと予測している。
パーソナルメディア(株)のトンパ文字書体。中国のナシ族が現在でも使っている象形文字 |
富士通デバイス(株)のBruetoothアクセスポイント。夏ごろ発売する予定だが、このままの形かどうかは未定 |
また、総会の会場近くには、Bruetoothアクセスポイントや、トンパ書体など、TRONを使用したさまざまな製品が展示されていた。