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TRONプロジェクト、組み込みシステム向け標準開発プラットフォームを発表

2001年12月12日 23時38分更新

文● 編集部 佐々木千之

TRON(The Real-time Operating system Nucleus)プロジェクトは12日、都内で記者発表会を開催し、TRON OSをベースとした、組み込みシステム向けのオープンな標準開発プラットフォーム“T-Engine(ティ・エンジン)”を発表した。T-EngineはこれまでのTRONと異なり、ソフトウェアとともにハードウェアについても仕様が決められている。そのため、システム開発においてT-Engineを使った場合、ソフトウェアコンポーネントが再利用しやすく、組み込みシステムの開発効率が高まるとしている。正式な仕様は2002年6月にウェブサイトなどで公開予定としている。

発表会でT-Engineについて説明する、TRONプロジェクトの坂村健教授。手に持っているのは電子書籍端末のモックアップ
発表会でT-Engineについて説明する、TRONプロジェクトの坂村健教授。手に持っているのは電子書籍端末のモックアップ

T-Engineとそれをベースとしたハードウェア、ソフトウェアに関しては、(株)アプリックス、イーソル(株)、(株)エヌ・ティ・ティ・データ、パーソナルメディア(株)、(株)日立製作所、三菱電機(株)、ヤマハ(株)の7社が発表会で開発表明を行なった。

日立製作所による“標準T-Engine”仕様のアプリケーション開発プラットフォーム『HI ApplicationEngine for T-Engine』
日立製作所による“標準T-Engine”仕様のアプリケーション開発プラットフォーム『HI ApplicationEngine for T-Engine』
ヤマハが試作したT-Engineアプリケーションの例。外部に接続したMIDI機器を使うMIDIミュージックプレーヤー
ヤマハが試作したT-Engineアプリケーションの例。外部に接続したMIDI機器を使うMIDIミュージックプレーヤー

TRONは、基本的にカーネルの仕様を公開し、誰でも自由にその仕様に従った“TRON OS”を作ることができる。これに対し、今回TRONプロジェクトが発表したT-Engineは、組み込みシステム向けのTRONである“μITRON(マイクロアイトロン)”をベースに開発したOS“T-Kernel(ティ・カーネル)”、ハードウェア“T-Engineボード”、デバッグモニター“T-Monitor(ティ・モニター)”までを含んだ、組み込みシステム開発プラットフォームの仕様となっている点が大きく異なる。

三菱電機による“μT-Engine”仕様のボードを使った評価デモシステム。ウェブサーバーとしての機能を持ち、上部のイメージセンサーで受信した画像を、Ethernet経由でリアルタイムに流している
三菱電機による“μT-Engine”仕様のボードを使った評価デモシステム。ウェブサーバーとしての機能を持ち、上部のイメージセンサーで受信した画像を、Ethernet経由でリアルタイムに流している
上記の評価デモ機器のウェブサーバーにアクセスして、イメージセンサーからの画像を表示しているところ
上記の評価デモ機器のウェブサーバーにアクセスして、イメージセンサーからの画像を表示しているところ

またT-Engineには、携帯情報端末など比較的高度なユーザーインターフェースを持つ機器向けの“標準T-Engine”、家電向けの“μT-Engine(マイクロ・ティ・エンジン)”、スイッチやセンサー、バルブなどに向けた“pT-Engine(ピコ・ティ・エンジン)”の3種類がある。標準T-EngineのCPUボードの仕様は、MMU(メモリーマネージメントユニット)付き32bitCPU(CPUの機種は規定しない)、16/32MBのRAM、4MBフラッシュメモリー、通信速度384kbps以上のシリアルインターフェース、PCカードスロット、USBポート、液晶パネルインターフェース、タッチパネルインターフェース、サウンドCODEC、拡張バスインターフェースなどとなっている。なお、T-Engineではインターネットなどの“安全でない”ネットワークで通信を行なった場合のセキュリティー確保のため、CPUや暗号化回路、メモリーと専用OS“eTRON(イートロン)”を含む“eTRONチップ”が搭載可能となっている。

発表会で挨拶した、TRON提唱者/プロジェクトリーダーで東京大学教授の坂村健氏は「TRONプロジェクトの目標の1つとして、“どこでもコンピューター(ユビキタスコンピューティング)”のインフラストラクチャーの実現があった。これはありとあらゆるものにネットワークに接続できるチップが組み込まれ、すべての人が情報端末を携帯し、それらがすべてネットワークで接続されるという世界だ。チップ技術の進歩により、ハードウェア面ではほぼ実現可能になった。汎用リアルタイムOSとしてのμITRONは完成の域に達しているが、これまでの10年以上の経験から、組み込み機器の開発生産性を上げるためには、OSの規定だけでは限界があり、ハードウェアから開発環境まで含めたトータルなオープンプラットフォームを規定することにした」と述べ、「T-Engineはユビキタスコンピューティングのための新しいスーパー標準開発環境だ」とした。

坂村氏によると「組み込み機器でのソフトウェア開発は非常にたいへんな作業だ。ところがこれまでは、μITRONを使っているといっても、ハードウェアが違えばOSも微妙に異なるため、ソフトウェアを部品として再利用することができず、同じことをさせるためのプログラムを、システム案件ごとに一から書く必要があった。TRONプロジェクトでは“弱い標準化”(※1)をモットーとしてきたが、T-Engineの仕様決定にあたっては、ソフトウェア部品を再利用できる程度にまでは厳しくした」という。

※1 弱い標準化:TRONでは、基本的にOSの仕様(プログラムのコードではない)を規定して公開し、使いたいユーザーはその仕様に従って自由にOSを作って、TRON OSであると名乗る(あるいは名乗らない)ことができる。TRONが動作するハードウェアについては規定がない。

日立のHI ApplicationEngine for T-Engineの外側のケースを取り去って裏返したところ(左)と、携帯電話を想定した液晶ディスプレーを搭載したもの(右)
日立のHI ApplicationEngine for T-Engineの外側のケースを取り去って裏返したところ(左)と、携帯電話を想定した液晶ディスプレーを搭載したもの(右)

発表会には、T-Engine参加各社の代表が出席した。半導体メーカーとして日立製作所とともに参加した三菱電機の長澤紘専務取締役兼半導体事業本部長は「T-Engineによって標準的なプラットフォームができれば、システム開発が容易になり、エンドユーザーによって使いやすいものができる。そうすれば装置もたくさん出て、半導体もたくさん売れるという考えで積極的に取り組んでいきたい」と述べた。また、パーソナルメディアの泉名達也代表取締役社長は「T-Engine上に漢字150万字を扱うことができる『超漢字』の移植を行なった。コンパクトで高性能なT-Engineは、今後のポストPC時代において重要な地位を占めると考えている」と、ポストパソコン時代の標準になるとの期待を寄せた。

T-Engineボードで動作する、パーソナルメディアの『超漢字』。トンパ文字を表示している
T-Engineボードで動作する、パーソナルメディアの『超漢字』。トンパ文字を表示している

組み込み機器向けのμITRONは、日本の組み込み機器向けOSとしては50%以上の機器で使われており、特に現行の高機能な携帯電話では、そのほとんどで使われている。しかし、μITRONを使っていても、これまでは同じ会社の中であっても、ハードウェアの仕様が異なるためにソフトウェアを再利用することは困難で、これが開発コストの高騰や開発期間が長くなる原因になっていたという。このように標準となるプラットフォームを作って、ソフトウェアの開発効率を高めようという動きとしては、インテル(株)が携帯電話向けに進めている“インテル パーソナル・クライアント・アーキテクチャー(PCA)”がある。インテルPCAはハードウェアのみでOSまで含むものではないが、ソフトウェアの開発効率を高めるという共通の狙いを持っている。

アプリックスによる、T-Engine向けのJava環境『JBlend』のデモ。横に置いた携帯電話用JBlendと同じアプリケーションが動いている
アプリックスによる、T-Engine向けのJava環境『JBlend』のデモ。横に置いた携帯電話用JBlendと同じアプリケーションが動いている

ネットワークにつながる小型情報ということでは、日本にはインターネット対応携帯電話という市場がある。すでにTRONの採用が多いうえに、非常に競争が激しいことを考えると、最もT-Engineが受け入れられやすいのは携帯電話であると思われる。T-Engineが携帯電話で成功すれば、情報家電などでも一気に採用が進む可能性もある。

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