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ネットワークの入り口はコンセントだ

電灯線ネットワークの可能性

2001年02月27日 04時58分更新

文● NETWORK MAGAZINE編集部

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NETWORK MAGAZINE
 こうしたホームオートメーション用途の電灯線ネットワークは基本的に9600bps程度の低速でよく、米国の例をみれば分かるとおり、技術的にはかなり確立された分野である。しかし、PC上でのLANやインターネット接続といった需要にはとても応えられるものでない。いくら日本のインターネット接続がいまだに遅いとはいえ、アナログモデムですら56kbpsを出し、64kbpsのISDNもかなり普及している。100BASE-T製品が安価になっていることを考えれば、好きこのんで低速なネットワーク機器を選択するユーザーはいないだろう。しかし、電灯線でこうしたメガビットクラスの高速データ伝送を実現するのは、それほど簡単なことではない。理由としては、やはり技術的限界と法制度という2つの問題が挙げられる。



ノイズとスペクトラム拡散方式

 ノイズに関しては、電灯線であろうが、無線であろうが、通信を考える際には避けて通ることができない。いかにノイズを軽減させ、伝送効率を上げるかという問題に対して昔からさまざまな技術が製品に投入されてきた。現在の電灯線ネットワーク製品の多くは、無線LANと同じスペクトラム拡散方式を用いるのが主流となっている。

 このスペクトラム拡散方式は、もともとノイズ耐性が強いという実績がある。ある程度広帯域の周波数帯を使うことで、ノイズ削減効果も大きくなり、伝送効率を上げることができるわけである(図5)。

図5 スペクトラム拡散方式の動作原理

図5 スペクトラム拡散方式の動作原理
スペクトラム拡散方式は、まず送信側が出力された信号を広帯域に拡散した上で、線路に流すという処理を行なう。受信側では信号を送信した際と同じルール(符号)で拡散することで、元の信号が復元される。逆に通信経路で発生したノイズは復元される信号とは逆に、はじめて拡散処理を受けるため信号への干渉を低くおさえることができる

実際、2.4GHz帯域の2400~2497MHzまでを用いる無線LAN(IEE802.11)では11Mbpsという速度を実現しているのはご存じのとおりだ(ただし実測値は4Mbps程度)。

法制度の問題

 しかし、日本では電灯線でこうした広帯域な周波数帯を用いることが電波法により制限されている。そのため、技術的には高速化できても、法制度的に高速化できないという状況にある。国内での電灯線通信に関しては、電波法第4条、第44条、第46条などで規定されており、利用周波数帯域は10~450kHzと限定されている。これ以上を用いると、AMラジオの利用する周波数帯域に干渉するというのが理由である。

 もちろん、こういった周波数規定は欧米でも行なわれており、日本だけが厳しく決められているわけではない。しかし、ヨーロッパのCENELECや米国のFCCなどの規定では、例外条項が数多く設けられているため、たとえば電力会社が電灯線通信を行なう場合などは数MHz帯域を利用することができる。一方、日本では例外条項がいっさい存在しない。時代に適合しない法制度ほど醜いものはない。通信事情の変 化に合わせた柔軟な法整備が要求されていると言えるだろう。

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