ノイズとスペクトラム拡散方式
ノイズに関しては、電灯線であろうが、無線であろうが、通信を考える際には避けて通ることができない。いかにノイズを軽減させ、伝送効率を上げるかという問題に対して昔からさまざまな技術が製品に投入されてきた。現在の電灯線ネットワーク製品の多くは、無線LANと同じスペクトラム拡散方式を用いるのが主流となっている。
このスペクトラム拡散方式は、もともとノイズ耐性が強いという実績がある。ある程度広帯域の周波数帯を使うことで、ノイズ削減効果も大きくなり、伝送効率を上げることができるわけである(図5)。
図5 スペクトラム拡散方式の動作原理
実際、2.4GHz帯域の2400~2497MHzまでを用いる無線LAN(IEE802.11)では11Mbpsという速度を実現しているのはご存じのとおりだ(ただし実測値は4Mbps程度)。
法制度の問題
しかし、日本では電灯線でこうした広帯域な周波数帯を用いることが電波法により制限されている。そのため、技術的には高速化できても、法制度的に高速化できないという状況にある。国内での電灯線通信に関しては、電波法第4条、第44条、第46条などで規定されており、利用周波数帯域は10~450kHzと限定されている。これ以上を用いると、AMラジオの利用する周波数帯域に干渉するというのが理由である。
もちろん、こういった周波数規定は欧米でも行なわれており、日本だけが厳しく決められているわけではない。しかし、ヨーロッパのCENELECや米国のFCCなどの規定では、例外条項が数多く設けられているため、たとえば電力会社が電灯線通信を行なう場合などは数MHz帯域を利用することができる。一方、日本では例外条項がいっさい存在しない。時代に適合しない法制度ほど醜いものはない。通信事情の変 化に合わせた柔軟な法整備が要求されていると言えるだろう。