新たなケーブルの敷設などを行なわず、既存のインフラを用いてデータ通信を行なうことを「No New Wire」などと言ったりするが、こうしたネットワークの実現に電灯線は最適である。なんといっても電灯線とコンセントは家庭内ならず、オフィスでも、工場でも、どこにでも敷設されている、もっとも普及率の高いインフラだからである。もちろん巨大な国土を持つ中国のように電灯線インフラの敷設がまだまだ遅れているところもあるが、日本では電灯線の普及率が100%に近い。しかも、ケーブルの品質も高いため、データ通信の搬送路として使うのに向いている。
こうした「No New Wire」を実現する技術としては、そもそもケーブルを使わない無線LANやHomeRF、既設電話線を用いるHomePNAなどが挙げられるが、遅ればせながら電灯線ネットワークも徐々に注目されるようになってきた。
注目を集めるようになってきたのは、今からおよそ2年前、家庭内ネットワークの自動化を実現するサン・マイクロシステムズの「Jini」やマイクロソフトの「Universal Plug & Play(UPnP)」といった構想において、電灯線ネットワークが展示会などで取り上げられたのがきっかけであろう。米国では電灯線ネットワークをPLC(Power Line Carrier)と呼ぶが、今までの家電制御目的の低速なPLCから数メガビットクラスの高速PLCも実用化の段階を迎えている。