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松村太郎の「デジタルとアナログの間」 第8回

松村太郎の「デジタルとアナログの間」

面白さ、デジタル化しています──カヤック柳澤氏

2009年02月21日 15時00分更新

文● 松村太郎

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ウェブに適したサービスの流儀

 さて、カヤックの提供するサービスには、アナログっぽいことをデジタルで表現するというコンセプトがあるだけでなく、ネットのデジタル的な発想が息づいている。この発想を感じられるのが、絵画の測り売りショップ「アートメーター」や、建築家と施工主との出会いの場所を提供する「ハウスコ」といったサービス群だ。

 いずれも「画廊」と「建築事務所」という現実に存在する場をウェブに展開しているものだが、そのベースには「フラットな評価を与える場を創る」という理念がある。

アートメーター

絵画の測り売りショップという画期的なコンセプトでカヤックが運営するアートメーター


柳澤氏 絵画や建築といったジャンルは、誰が選び、またどう言及しているか、どこに所属しているか、といった権威づけによって評価や価格が決定される世界でした。

 しかしどんな情報も横並びで扱うインターネットでは、それに適した流儀があると思います。スペースの提供者による選別ではなく、たくさんの選択肢の中から買う人/採用する人が選ぶスタイルであれば、さまざまなな価値観が押し寄せてきます。どれだけ買ってもらえるか、どれだけ選んでもらえるかが評価のすべてとなるのです。

 人気順に表示するといったシステムを作ることはしますが、運営者である僕たちがあえて評価/選別をしないことで、ネットらしい流儀にのっとってフラットな場を創っていこうと思っています。


 アートメーターでは、絵の大きさによって価格が決まるが、販売した面積に応じて画家のレベルや面積当たりの単価が上がっていく。つまり、外部の情報ではなく、売れたか否かという人気がすべてなのだ。


柳澤氏 誰もが参加できるというコンセプトに拒絶反応を起こす人もいるかもしれませんが、そういう人はネットで勝てない。ネットではトラフィック、リンクがすべてです。

 例えばアートメーターならば、1作品だけ出品して自分のサイトに誘導するといった利用方法を思いつくかどうか。多くの人に知ってもらうためのチャンスを逃さないことはもちろん、積極的に機会を作っていくといったことを感覚的にできる人が、ネットの世界では勝っていくのだろうとわれわれは思いますし、会社運営もその考えに沿っています。


 「ネット革命」「Web 2.0」という言葉が定着していくプロセスの中で、再度デジタルやネットの世界を活用するスタイルを見直すべき時期に来ている。

 ウェブは、これまで以上に、かつ新しい形でオリジナリティーを発揮する場として展開していく可能性を持っている。それは、アナログ的な手触りにこだわりつつウェブの流儀に沿ったサービスを追求する、カヤックのような個性的なスタイルが強い力を持つ世界なのではないだろうか。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET



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