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オープンリールを「楽器」として再発見──和田永氏

2009年03月15日 13時00分更新

文● 松村太郎

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ゲスト●アーティスト 和田永氏

和田氏

1987年東京都生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科在籍中。Sony Music Publishingに所属するミュージシャンでもある。バンド「蒸気青月楽団」主催。壊れた音響機器や生楽器、コンピューターなどを駆使して、音楽/音響作品を制作している。自身のブログはこちら


メディア芸術の注目作品

 テクノロジーやメディアの進化とともに変化を続ける最先端の作品が一堂に会した、第12回文化庁メディア芸術祭。例年通り、その受賞作の展覧会と同時に「学生CGコンテスト」の受賞作品展も開催された。

 その会場内でひときわ大きな人だかりを作っている作品が「Open Reel Ensemble」。もはや懐かしい存在と化したオープンリール式のテープレコーダー4台で構成された作品だ。誰も手を触れていないのに勝手にリールが動いたり止まったりしながら、DJのスクラッチのようにリズミカルな音を奏でている。少し離れた場所に立つ和田氏の手の中には、この作品を操るiPhoneがある。

Open Reel Ensemble
Open Reel Ensemble。和田 永、佐藤公俊、朝倉卓也、山下 連、岡野沙有(多摩美術大学美術学部情報デザイン学科3年)による作品だ
Open Reel Ensemble Open Reel Ensembleを操作する和田氏のiPhone

 オープンリールとは、音声や映像、コンピューターのデータなどを磁気記録するためのテープだ。いわゆるカセットテープの親玉のような存在で、テープや巻き取るリールが露出しており、録音機器にセットして使用する。MDやCD、ICレコーダーなどの記録媒体が次々と登場しているほか、現在ではハードディスクへデータを保存できるため、オープンリールを利用するシチュエーションも少なくなっている。

 和田氏の率いるチームは、録音/再生機能を備えるオープンリール式のレコーダーを制御できる基板を開発。4台それぞれがUSB経由でMacにつながっている。このMacはWi-Fiなどのネットワークに接続されており、同期させたり、iPhoneでの操作もできる。

 また、オープンリールを手でじかに触ってレコード盤のようにスクラッチしたり、声を録音してすぐに再生したり、はたまた離れた場所に設置した複数のOpen Reel Ensembleを同時に制御してそれぞれの場所の音をサンプリングしながらコラボレーションさせる──といったことも可能だ。前時代的なオープンリールという機器を、MacやWi-Fiネットワーク、iPhoneと組み合わせて従来とは異なる使い方を提案することによって、新たな魅力を発し始めている点が非常に興味深い。

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