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「ニコニコ大会議2008冬」に行ってきた(その3)

コメントありきで作った──「ニコニコ大会議」を演出家が語る

2008年12月15日 11時00分更新

文● 広田稔/トレンド編集部

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7000万円で作られた「PRIDE」仕込みの演出

JCBホール

会場となったJCBホールの使用料も数百万円かかる

 山形氏は総合格闘技イベント「PRIDE」など、数々の興行の演出を手掛けてきた人物だ。その山形氏はニコニコ大会議について、「予算の関係でできなかったということはあまりなかった」と語る。

 それもそのはず。ニコニコ大会議には、会場費や設営費などすべてを含めて7000万円という莫大な金額が投じられている。興行にあまり詳しくないわれわれにとって、7000万円が高いのか安いのかピンと来ない話だが、実は音楽のライブなら武道館で軽く2日間開催できるほどの大きな予算だ。

 「音楽イベントでは、きちんとした看板アーティストがやっているツアーだったらそれなりに舞台装置や演出にお金をかけています。しかし、メーカー主催のライブやフェスティバルなどは、お金をかけるのはガワ(舞台装置)ぐらいで、ニコニコ大会議ほど凝ったことはしない。アーティストが主役ですから」(山形氏)

 しかも、アーティストのツアーならムービーや舞台装置を何度も使い回せるが、ニコニコ大会議は1回きりで使い捨てることになる。にも関わらず、どの演出もまったく手は抜いていない。

 オープニングムービーは、PRIDEの選手紹介ムービーを手掛けたことで有名な、映像作家の佐藤大輔氏にお願いした。佐藤氏の持ち味である「煽りV」(煽りVTR)と呼ばれる、見る者を引き込むテンポのいい作品に仕上がっている。そのムービーのBGMである「ニコニコ動画のテーマ 第一楽章 創造」は、これまたPRIDEのテーマ曲を作った高梨康治氏が担当する。

「あのオープニング映像は『CMクオリティー』なんですよ。同じ映像作品を作るにしても、テレビ番組とCMでは作り方もかけるお金も段違い。コーヒーで例えるなら、ファーストフードと専門店くらいにかけている金額がまったく違う。オープニングだけでなく、途中に出てくるスプレー缶で書いたような『The First Business Conference』という文字だって、今回のために作り起こしました。そういう意味ではすごく贅沢をしている」(山形氏)

メインの舞台には、2画面を同時に映し出せる横長のスクリーンを設置し、そのスクリーンを写真のLED電飾で囲んだ。これらに映し出されるムービーや文字なども、今回のためだけにわざわざ作り起こしたものだ

 加えて、「車一台買える」金額で作ったひろゆき氏の銅像だ。しかもわざわざ東京から沖縄にまで空輸して、「ひろゆき記念〜ニコニコ大会議2008冬 前夜祭〜」と名付けられたFC琉球の試合で銅像の除幕式を実施した。

 ニコニコ動画の「ノリでやってみた」的な雰囲気を再現するために、人によってはバカにも思えることを、莫大な金をかけて取り組む。確かに「お金をかければ誰でもできることでしょ」という反論も分からなくはないが、それを本当にやるとなると、ほかの会社ではまず企画書止まりだろう。よくも悪くも、やっぱり普通ではない。

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