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松村太郎の「デジタルとアナログの間」 第3回

松村太郎の「デジタルとアナログの間」

アナログシンセは同志──「モーグIII-C」と松武氏

2008年11月25日 18時00分更新

文● 松村太郎

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道具とのつきあい

 シンセサイザーの発展を支える活動にも、松武氏は尽力している。日本シンセサイザープログラマー協会で会長を務めるほか、アナログシンセサイザー制作キットを付録に付けた「大人の科学マガジン別冊 シンセサイザークロニクル」(Amazon.co.jp)といったようなユニークな企画も手がけている。

 アナログシンセサイザーの音やワークフローにこだわる松武氏だが、デジタルにノータッチなわけではない。例えば、携帯電話の多くの端末に搭載されている音源チップや山手線の発車音など、日常生活で耳にする音作りの多くにも携わっている。つまり私たちは携帯電話にメールが届くたび、電車に乗るたびに松武氏の職人的な音作りのDNAに触れているのだ。

 また、根っからのMacユーザーである松武氏は、「タンス」をMacから制御して使ったこともあるほどで、Apple IIの時代からびっくりするほどMacに投資をしたと振り返る。最近でもiLifeの「GarageBand」でちょっとしたイメージを音楽にするなどの際に、活用しているという。


松武氏 アナログでもデジタルでも変わらないのは、身の回りにある道具であるという点。それが何であるか理解しないと、何も動かない。一方で、使う人の個性を道具に吹き込むこともまた可能ではないかと考えている。そのためには、道具の個性を理解して対等に向き合うことが大切だ


 最近では少なくなったけれど、長年使い続けたクセで左手はいまでも常に「コマンド」+「S」キーを押してこまめに保存しているという松武氏は、笑いながら、これもまた個性──昔のMacのフリーズしやすさを理解したうえでの振るまいだと語る。


松武氏 感動する音は、自分が理解した環境で100%のパフォーマンスをすること、道具との一心同体から生み出される。いいパフォーマンスができれば、発想も豊かになり次の感動する音を作る原動力になる。そのためにはテクノロジーとの相互理解が大切だ。


 デジタル全盛の時代、道具とのインタラクション、コミュニケーション、相互理解、これらをどうしていくか。松武氏とアナログシンセサイザーの「同志感」にそのヒントが隠されているように思える。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET



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