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「紅」がドラマCDで再登場! 松尾監督にその真意を聞く【後編】

2008年11月23日 20時00分更新

文● コンテンツ計画 清水

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───前作のCMもすごく特徴的なミュージカルCMで最初観たときは驚いたのですが。

【松尾監督】 あれも最初広報の人が恐る恐る僕のところに、「こんなこと考えてたりするんですけど」って言ってきたんだけど、どなられると思ったらしい。1人だけ当時反対していた人がいたのですけど、「いやいいよやるよ」と。
 たとえば、自分がよっぽど好きだったタイトル以外のDVDのCMで、どのぐらい覚えてるかっていう話もあるんです。時々おもしろいCMってあるけど、どのぐらい記憶に残ってくれるのか、あるいはいままでそのタイトルに興味がなかった人がCMだけでも見てくれるのかとか、そういうのがちょっとほしかったっていうのがありますね。

 だいたい覚えてないでしょ? 映画の予告だって本編観たらもう覚えてないし。別物として覚えてくれながらも、でもあれって「紅」のCMだったって覚えてくれる。僕はそのほうが得だと思う。そういう意味では「紅」は製作委員会のメンバーにすごく恵まれた。すごくチームワークもいいと思ったし、委員会のメンバーはいろいろなメーカーから集まった人達なわけで、それぞれ自分達の利害がある中で、うまくやってくれたおかげだと思います。1社でもダメだって言ったら実現しないことなので。
 ただ、唯一僕が腹が立ったのは、最後の2話だけ空気を読んで普通のCMにしましたって言われたことかな(笑) 「僕が出てるのが空気を読んでないのか!」と、「どういうことだよ!」と(笑) 「えぇすいませんでしたね、お手間取らせましたね」って(笑)

───「紅」だけでなく監督の作品はキャラクターが歌うシーンが多いと思うのですが、意図的に入れているのですか?

【松尾監督】 いや全然。前作のときもプロデューサーから「歌を歌わせるのはどう?」と言われたときに、僕は反対したぐらいです。そもそも僕はミュージカルって大っ嫌いで。でも時々観るんですね。テレビで放送してると、僕なんかは何がおもしろいのかさっぱりわかりません。ミュージカルってものをそもそも好きではないから、逆に茶化してやりたいっていう気持ちもあるんです。観ていて笑えたりするから、意外と熱心に観てたということがあって、これは何か一つ形にできるんじゃないかなと思った。
 プレスコで監督をやることが、今後そんなにできないかもしれないと十分承知しているから、それがたやすくではないけれど、アプローチしやすい形として、今できるならやっておこうかなと思ったのもあったんです。
 だから、僕の趣味かと言われると悪趣味のほうの趣味ですね。決して好きではない。なのでミュージカルの話の最後のほうでは、棒読みで、すごく大仰にやってくれと言いました。そうしたらみんながものすごくミュージカルを想像できる演技をやったんで、これいくらなんでもやばいと思って。これ、ミュージカルが好きな人に刺されると思って。ヘタなほうにしてくれないかとお願いしたけどね。

 舞台というのは僕の中では悔しい存在というか、映画ももちろんそうだし、実写ももちろんそうなんだけど、舞台がいちばん人を楽しませるものとして、あのライブ感みたいなものがあり、もっと広がってもいいんじゃないかと思うぐらい優れたものがたくさんあるんですね。でもごく一部のマニアのものになってるし、表に出てくるもの、エンターテインメント性の高いものじゃないと表に出てこれないっていうような、舞台の変なしがらみみたいなものがあって、それがすごくもったいないなっていうのもあるんです。
 ああいう優れたものを自分の中に取り込みたいっていう気持ちもたくさんあったから、セリフのやり取りとかも含めて、舞台の要素、エッセンス、セリフのかけあいの部分とかは舞台をかなり意識してました。だから、ミュージカルは嫌いだけど舞台は大好きなんです。その延長でミュージカルもできたんだろうっていう感じですね、まじめに答えると。

 でも6話は反省だらけです。結局1話、2話、3話っていうのは僕の中で、それまで培ってきたものの、ある程度ダメ出しをした後にもう一歩踏み込んでやったものなので、僕の中では安全パイではないけれども、ある程度のことはできたんじゃないのかなって思ったり、僕の中で確かな感触も得られた。反省もあるけど、それは次こういうふうな直し方もできるだろうっていう気持ちがあるんです。
 ところが6話に関しては、僕の中では失敗ばっかりで、しかもその失敗に対して、次どうすればうまくできるんだろうっていう答がなかなか出てこないくらい困難なんです。だからとっても難産だったし、もう一度って言われると倍ぐらい時間がほしいって思う、そのぐらい反省だらけです。やっぱりほとんど初めての体験だったから。

(次ページへ続く)

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