Android普及に欠かせないもの
とはいえ、三浦氏が固定電話にこだわるのは、機能だけが理由ではない。むしろ、ビジネスフォン市場/固定電話市場というマーケットに可能性を見いだしているからだ。
「ビジネスフォン市場は、日本だけで30~50万台、世界規模だと300~500万台。まだまだ需要はある。全世界を考えれば、2000億円を上回る市場です。5%のマーケットシェアを考えても100億円の市場です。そのくらいのマーケットのサイズであれば、ビジネスができる」。
マーケットの大きさだけではない。想定されるビジネスのありようも、魅力的だ。「目指すのはエンタープライズのシステムです。このAndroid搭載ビジネスフォンは、あくまでもプラットフォーム。この上にSIerがシステムを構築してくれればいい」。
たとえば、日本Android協会の設立時には、約300人ほどの人々が集まっていたが、誰もがまだ、会社の肩書きを出さないでいた。現在はまだ、情報収集の最中ということであろう。ゲーム会社をはじめとしたコンテンツプロバイダにしてみたら、携帯電話市場である程度Androidが浸透してプラットフォームが成立しない限り、参入はできない。
つまりキャリアの対応にかかってきているわけだが、いっぽうのキャリアも、「まだ様子見でしょうね」というのが三浦氏の見解だ。Androidでできることはたくさんあるし、アイデアも面白いものがある。しかしプラットフォームがなければどうしようもない。「可能性はみんな語るが、市場が50億や100億にならないと参入できない。ビジネスWGとしてはそういう動きをしていかないと、夢物語になってしまいます」。
iPhoneであれば1年後には30~40万の市場のマスがある。それならば、たとえばソフトウェアベンダーもディストリビューションできる。対してAndroidは、「具体的にはこれから。エンタープライズの企業が担いでいく動きが出ないと、エンジニアのお遊びになってしまう」。
そこで三浦氏が推進するのが、「CallSmart/Androidプロジェクト」である。これは、次世代ビジネスフォン向けの共通プラットフォームを、Androidをベースにして提供しようというものだ。すべての成果はオープンソースとして公開されるという。
また、単にAndroidとビジネスフォンを結びつけるだけでなく、企業内情報システムとの連携を実現し、電話機の情報端末としての機能を実現していく。これにより、ビジネスフォン向けのアプリケーション市場を作り上げようという試みだ。携帯電話市場ももちろんだが、遙かに参入障壁の低いビジネスフォン分野であれば、マーケット創出のチャンスがあるという三浦氏の考えが、具体化された動きである。
Androidはどうなるのか? 誰もが口にする疑問に、アイ・ピー・ビジョンは行動を伴って答えを出そうとしている。