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殺したいくらい愛したい! 最新最後のヤンデレ特集!

Love or Die! 彼女はヤンデレ? それとも病んでる? 前編

2008年09月04日 20時00分更新

文● かーず

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ヤンデレを医学的に分析! 精神科医 吉田 眞氏にインタビュー

──さっそくですが精神科医から見て、「ヤンデレ」という状態はなぜ起きると思いますか?

吉田

吉田 眞。精神科医。都内病院の精神科勤務を経て、現在は刑務所や少年院で診療を行なっている。また、テレビのコメンテーターとしても活躍中

吉田 眞氏(以下、吉田) ヤンデレは、2つの本能的欲動のアンバランスによって生じる異常な恋愛志向ではないでしょうか。恋愛の基盤である「性的衝動・エネルギー=リビドー」は、その人の行動全ての原動力になっており、人によってはこのエネルギーが芸術や仕事などに向かうことがあります。もう一方で「恋人を獲得しよう」という欲求は、性欲とは異なる場所から出るエネルギーで、恐らくは狩りや巣作りを行なおうとする「生存本能」によって生み出されていると考えられます。

 性本能由来の持続的なエネルギーは、恋愛が成就しなかった場合、他のターゲットに移ったり、趣味や仕事といった恋愛以外の行動で昇華させたりすることが可能です。しかし、「生存本能」が達成できない場合、その反応はよりダイレクトな感情(怒りや不安、絶望感などのネガティブな感情)として現れます。生き物としての危機感が出て、自分という存在の価値が脅かされるのはないかと思ってしまうのです。

 以上のことから、「ヤンデレ」とは達成しない恋愛に多大な性的エネルギーを注ぎ、負の感情を高め最終的にそれを放出(解放)させるという、そうしたネガティブな恋愛のパターン(生き様)だと言えます。

──ヤンデレに陥りやすい人ってどんなタイプの人でしょうか? 思い込みが激しい、嫉妬深い、独占欲が強いなどの要因があるのですか?

【吉田】 まず、性的エネルギーの強い人が、ヤンデレ予備軍になります。次に、恋人を獲得しようとする意思の強さ=諦めの悪さ=挫折経験の乏しさ=社会経験・対人関係が未熟な人が、曖昧な付き合いから恋愛をスタートさせると、ヤンデレになる確率は高まります。嫉妬や思い込みは、全て「恋愛不成立」に際しての自分への言い訳や、ストレスへの反応として解釈することができます。


 逆に絶対にヤンデレにならないのは、性的に奔放で自由に生きている人ですね。恋愛が上手く行かないと判断したら、サッと引いて次の恋に向かうので、思い詰めることがない。交友範囲の広い、いわゆるモテ男・モテ女タイプはヤンデレにはなりにくい。ただし、こういう人に振り回される内気な恋人が、少しずつヤンデレとなってゆくことはあるでしょう。

 所有欲や独占欲についてですが、欲しいものが手に入れられないときの絶望感や挫折感というのは誰しもが小さい頃から経験することです。普通なら、しばらく落ち込んだら次に行こうと、理性的にプロセスを歩めるのですが、そういった人生経験の少ない人は、ひとつのことにこだわりがちになってしまうし、周りからのサポートがない閉鎖的な環境にいる人は、自分の中だけで考えてしまいがちです。それで性的エネルギーが高いと、気持ちを切り替えるのが難しくなりますよね。そして、「手に入れたい」という欲求だけがどんどん高まってしまい、最終的にヤンデレになってしまうのではないでしょうか。

──では、ヤンデレが起こした事件って実際に阿部定以外にもありますか? 死人が出るほどではないにしろ、恋愛のもつれなどで大事件に発展したことがあったら教えてください。

【吉田】 ヤンデレを「恋愛トラブルに基づいた破滅的な行動を起こす人」と定義するなら、ストーカー行為や無理心中などもヤンデレの範疇だと言えるでしょう。有名人で言えば元交際相手に刺されたプロレスラーもヤンデレ被害者ですね。

 ちなみに、平成19年の女性の犯罪者は8万人、このうち成人女性の傷害事件犯は約1200人(暴行を含めるとさらに増加)で、小児虐待・暴行が男女合わせて300人程度です。これらを差し引いた900人の中に、痴情のもつれによる傷害事件が含まれていることになります。女性が男性のように「酔ってケンカして傷害事件」というプロセスを起こさないことを考えると、かなりの割合で毎年ヤンデレ傷害事件が起きているんじゃないですかね。

 その一方でヤンデレ女性(ストーカー等)とのトラブルの末の殺人・傷害事件なども多々あります。男性が逮捕されるケースを含めれば、ヤンデレ事件は更に膨大な数に上るはずです。

──吉田さんは数多くの患者を診てきていると思いますが、精神科に来る患者さんで、恋愛が元で心を病んでしまっている人は多いですか?

【吉田】 精神科の治療を受ける女性の多くは、不安を主体とした感情の障害であり、カウンセリングをしていると、むしろ恋愛から距離を置いている人のほうが多いですね。病気から大きな事件に発展したことはなくて、むしろ大きな事件にしたくないから診察に来ている人が大半です。もし、そこでクスリを飲まなかったり、カウンセリングを受けられなかったら自殺していたとか、ワケわかんなくなって刺しちゃいそうだったとか、病む一歩手前という感じです。恋愛がらみの人は少数ですね。

 その少数派である「恋愛を期に精神的・社会的・破壊的トラブルに陥る患者」は、大概が家庭環境、生い立ちなどに問題がある場合が多く、恋愛だけでなく、仕事や進学、友人関係の揉めごとでも、病んだ症状(依存、不安、抑うつなど)が出ることがあります。

 こういった、不安定な自我によって不適応を起こす患者たちは、「境界例」とか「境界型人格障害」と診断されて、性格の形成過程に問題があるとされていますが、ヤンデレは言うなれば、恋愛に特化した「境界例」と言えるでしょう。彼女ら境界例は、「自己の正当化→他者への責任転嫁」が強くて、理性が緩んだ時に自傷や暴力などの破壊行為に至る傾向があります。

(次のページへ続く)

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