M&Aが目立つIT業界の現状は
IT業界におけるM&Aでは今年2月、マイクロソフトが米ヤフーに仕掛けた446億ドルの買収提案が注目を集めた。最終的にヤフーは米グーグルと広告事業で提携することを決め、マイクロソフトのヤフー買収は実現しなかったが、米国ではネット上での検索や広告、ソフト提供など、いわゆるWeb2.0の情報サービス分野でのM&Aが1つの潮流になっているようだ。
日本のIT業界では、山田氏によれば
(1)アプリケーション(ソフトウエア)
(2)システム構築(SI)
(3)eコマース
の3分野で、「引き続き再編の動きがある」という。
(1)は特定のコンテンツや技術者の取得を狙ったM&Aが起きやすい。(2)のSI業界では、金融機関を中心とした大規模システム投資が一巡する「2010年問題」を背景に、情報システム開発大手のTIS(株)と北陸を地盤とする(株)インテックホールディングスが経営統合を決めるといった動きが出ている。このほか、(株)NTTデータや日本電気(株)、富士通(株)など大手システム会社の間でも顧客の海外進出に合わせて、海外での事業基盤を整備するためのM&Aが進んでいるという。(3)のeコマースでは、楽天(株)が旅行代理事業を買収したり、金融・決済サービスを拡充するためにカード事業を買収したりするなど、サービスラインを増やすM&Aが一般的となっている。
IT業界のM&Aは「SIなど大型企業の合併と、後継者不足や新規事業資金の調達目的で特許を売却するといった、技術があっても資金力がない中小ベンチャーの再編の二極化が進んでいる」と山田氏は語る。
今後の日本のM&Aについては、「日本はバブル崩壊後、再生型のM&Aが増加したが、これが一段落した。今後は地方経済の悪化を背景に、政府が出資した特殊法人である公社や第3セクターなど公共セクターで再編が起こる可能性がある」と指摘する。また、労働集約的な作業が多いわりに経営の効率化が進んでいない「医療施設や病院でもM&Aが活発化する」と予想する。
- ■取材協力
日本総合研究所
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