日本は世界に対して新たなクラウドの使い方を提示できる
――Force.comの新機能として、UIのカスタマイズ機能「Visualforce」の正式版がリリースされた(関連記事)。開発者に対してどのような使い方を期待しているか。
グロス氏 重要なのは、Visualforceによってあらゆるデバイスで動作するアプリケーションを開発し、使えるようになるということだ。
特に注目してほしいのは、モバイルの分野。日本はモバイルに関して、米国よりも先行している部分が多い。日本の開発者は、世界に対して新たなForce.comの使い方を提示できるはずだ。たとえば、ウィルコムはモバイル向けのアプリケーションを開発しているが、Visualforceを使うことで従来に比べて大幅なUIの改善を実現している。
今後、通信速度がさらに向上すれば、デスクトップのコンピュータでやっていたことがモバイルで済むようになる。クラウド・コンピューティングの恩恵がモバイルでも得られるようになるだろう。Visualforceは、クラウドが今後どの分野で能力を発揮できるかを示している。
――Visualforceのほかにも、昨年から開発者向けのさまざまな機能が追加されている。開発者の視点で見た場合に、Force.comに欠けているものがあるとしたら何か。
グロス氏 我々は常にForce.comを改良していきたいと考えている。仮に欠けているものがあるとしたら、開発者の方からフィードバックをもらい、それに迅速に応えていきたい。
良い事例を1つ紹介しよう。最近、「Force.com Toolkit for Google Data APIs」という開発キットをリリースした。Force.com上でGoogle Appsへの接続を可能にし、表計算やワープロといった機能との連携を図りやすくしたものだ。これは開発者の方々に大変喜ばれた。このように、足りない機能は追加しながら、開発者が求めるよりよいものに育てていきたい。
――もう少し具体的なニーズについてお尋ねしたい。たとえばセキュリティに関してはどうか。日本では、クラウド上で企業のアプリケーションを構築することに対して、セキュリティ面での不安も聞こえる。
グロス氏 企業にとっても開発者にとっても、セキュリティを気にするのは当然だ。だからこそ、我々はかなりの投資をしてきたし、事実、過去9年間、セキュリティを確保できていたと考えている。今後も安心して利用できることをユーザーに訴えていく一方で、開発者に対してはセキュリティを確保するための具体的な方法も伝えていきたい。
セキュリティの問題はとても複雑で、ここで一言で説明するのは難しいが、Force.comとJavaや.NETとの違いを比較してもらうとよいだろう。コードの書き方によって開発者が本来期待していなかった状況を引き起こすことは現実にはあるが、我々はそれを封じ込めること(confine)で開発者を守ろうとしている。大切なことは、セキュリティの問題を引き起こす機会が、ほかのプラットフォームに比べて最初から非常に少ないということだ。
――最後に、ビジネス・アプリケーションを手がける日本の開発者にForce.comをどのように使ってもらいたいか。
グロス氏 やはり、データベースを使ったビジネス・アプリケーションを、CRMや人事管理、財務管理といった分野で開発してもらいたい。クラウド・コンピューティング、PaaSの開発モデルに参加することでビジネスとして成功する確率は大幅に高まるし、何より自身が楽しみながらアプリケーションを開発できるはずだ。
最後に開発者の方に1つだけアドバイスをしたい。それは今後、技術がどういった方向に向かっていくのか、注視しておくべきだということだ。開発者であれば、自分のスキルアップに常に関心を払っていることと思う。Force.comを含むクラウド・コンピューティングの動向に対しても、ぜひ注目してもらいたい。