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「人のやったことはやらない」がポイント!?

飯島博士オメデト! カーボンナノチューブでカヴリ賞

2008年05月30日 17時54分更新

文● 新 淳一/アスキーネタ帳編集部

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敗北から生まれた栄光

 飯島博士がカーボンナノチューブを発見するに至ったエピソード を紹介しているサイトがどこかにないものかと探してみると、NECのサイト名城大学のサイトで発見。あわせて読むと非常におもしろいので、時間のあるときにでもぜひどうぞ。

 かいつまみつつ、情報を補うと……。1985年、スモーリー博士らによってフラーレンと呼ばれる物質(炭素原子がサッカーボール状に結合したもの)が発見され、脚光をあびた。飯島博士は、その存在に気づいていながら見過ごしてしまって悔しい思いをした。1987年には、“The 60-Carbon cluster has been revealed!”(C60フラーレンは見えていた!)という論文を出しているほど。よっぽど悔しかったんでしょうね。

 その後、フラーレンの大量生成法が確立し、数千人の科学者がさかんにフラーレンを生成しつつ研究を行なっていた。そんななか、博士は、その生成過程で陰極側に堆積する物質(俗にスラグ<かなくそ>と呼ばれ、誰もがゴミ扱いしていた代物)に着目。そこからカーボンナノチューブを発見した。誰もが見過ごしていたものから大発見を生んだのは、博士の経験に裏打ちされた眼力。そしておそらくは、かつての悔さからくる執念だった――。ざっと、そんなところである。胸がすくような話でしょ? もちろんこの陰にも、さらに悔しい思いをしている科学者が大勢いるんですけど。

炭素の同素体

炭素の同素体とその次元性。産総研のサイトより

 というわけで、カーボンナノチューブは、いまや期待の新素材として、世界中いたるところで研究開発や製品開発が進められている。だが一方、最近になって発ガン性など、健康被害に関する疑いも取り沙汰されはじめている。なかなか順風満帆にはいかないものです。誰もが安心して新素材の利益を享受できるよう、今後のさらなる研究が待たれます。

 カヴリ賞の授賞式は9月9日、オスロ市のオスロコンサートホールで行なわれる。

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