言葉の力の弱さは、心にも影響する
さて、言葉は世界を把握するためにあると説明しましたが、この言葉によって私たちは多いに助けられることがあります。それは、人の「心の病」への効果です。
最近では心の病にかかる若者や技術者が多いと聞きます。その理由の1つは「言葉の力の弱さ」というのが私の考えです。
心で起きている出来事を言葉に変換できずに(言葉の力が弱いために)、ストレスを溜めてしまうことは、誰しもある経験でしょう。しかし逆に言えば、自分の心の声や起きている出来事を上手く言葉に変換できれば、自分の中にマイナスなことも溜めずに外へ出すことができるので、心のバランスを保てるはずです。
また、第4回連載で語彙力の大切さについて解説しましたが、言葉への変換は、当然語彙数が多ければスムーズに行なうことができます。心の声や出来事の1つ1つに言葉を与えて表現し、文章に書くなり人に話すなりできれば随分とラクになるものです。まずは、拙くてもいいから言葉にすることが必要ですね。
これに似たことを作家の椎名麟三氏は「自己救済のためには文学が必要だった」と述懐しています。また同じく作家の開高健氏は、「小説は文学はつづめていって一言で要約すると、助けてくれという悲鳴であることが多いです」と述べています。
心が健康でなければ、技術どころではありません。心のためにも、言葉の力を持つべきでしょう。
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