これまで8回にわたって、SEとして働く上で必要となる文章技術について説明してきました。最終回となる今回は、SEに必要な文章技術とは直接的に関係ないことを説明します。とはいえ、今回の内容は文章上達の“ベース”となると著者は考えています。対処療法みたいな技術論ではなく、総論として、文章力を高め続けていくために知っておくべき「言葉が持つ力」について紹介します。
言葉は何のためにあるのか
この連載では「文章技術」について解説してきたわけですが、そもそも「言葉」とは何でしょうか? これを問うとき、まず自分なりに考えてみてください。
皆さんの3メートル前に三毛猫がうずくまってじーっとこちらを見ているとしましょう。この場面を、言葉を使わないで誰かに伝えてみてください。
絵で伝えようとすると筆記用具と紙が必要です。画才も必要になります。身振りで示そうとすると……さて、猫をどのように表現するのでしょうか。そんなことをするよりも伝えたい相手を現場に連れていき、猫を指差した方がよさそうです。
このように考えていくと、言葉とは何かが見えてきませんか? そうです。私たちは、まるで紙に絵を描くように、言葉によって目に見える世界を書き写しています。前述の猫に名前を付けるとしたら、その3色の毛の色から総称的にミケネコと言い、3匹いれば、ミケ1号・ミケ2号・ミケ3号と数えで呼ぶかもしれません。猫が大きい猫なのか小さい猫なのか、白猫か黒猫か、人はまず属性で表現しようとします。
このように、普段私たちは世界を把握しようとして言葉を持っていると言ってもいいでしょう。つまりこのことを「言葉は世界を理解する体系」だと私は考えています。私たちはこれらの言葉を使って、日常生活で誰かに伝えたり誰からか伝えられたりしています。
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