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エンジニアのための文章上達塾 第6回

第6回

頭のいい文章を書く方法

2008年05月02日 18時30分更新

文● 福田 修

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エンジニアのための文章上達塾

前回は、技術文章の構成をどのように設計するかについて説明しました。文章構成のスキルは簡単には身につかないものでもありますが、時間をかけて繰り返し練習を積めば、必ず技術の向上が望めます。さて、今回は文章技術としては最後となる上級編です。この上級編では文章の「目的」について説明します。「文章の目的」がなぜ上級編なのか疑問に思う人もいるでしょう。いかにも簡単そうで初級編で扱うべきではないかと。そこが落とし穴なのです。いままで私が技術文章の指導をしている中で「(ソフトウェア文章の1つを挙げ)この文章の目的は何ですか?」と質問して正解した人はいないのです。

「目的」は曖昧になりがち

 皆さんは仕事や会議の場でメモを取っていますか。メモを取ることは仕事をするための基本です。ではメモを取る目的は何でしょう? 「忘れないため、あるいは聞き漏らさないため」という答えがすぐに返ってきそうですが、本当にそうでしょうか。では、忘れたら何がいけないのか。聞き漏らしたら何が問題なのでしょう。前述の回答は、この疑問に答えてはいないですよね。このように考えると、先の答えはメモを取る目的ではないことが分かります。

 当然、状況によってメモを取る目的は異なることがあるでしょう。例えば、上司からの指示をメモする場合には、上司の指示を確実に実行することが目的になります。さらにメモを取る目的としては、次のものもあるでしょう。

・会議や研修などの後で、内容を整理し理解を深めるためメモを取る
・アイデアを出すための手段としてメモを取る
・自分が行なった作業の記録としてメモを取る

 いかがでしたか。たかだかメモを取る程度のことですが、このようにいろいろな目的があるわけです。そして、このような目的についてはすぐに答えられなければいけません。

 “頭のいいSE”というのは、「目的を明確に定義できる力」を備えているものです。そして、目的を明確に定義できる力は技術文章作成には重要となります。目的のないところに目標なく、目標がないところに価値ある行動はないのです。

「目的」を違えば、判断を誤る

 「目的」について考える場合に、混同しやすいポイントを例に挙げてもう少し紹介しておきます。

 ある人が、ジョギングをしようと決心しました。その目的は何でしょう? 例えば「健康維持のため」かもしれません。しかし「体力向上のため」とすれば、「それは二義的な目的だ」と言われてしまうでしょう。何のために体力を向上させるのか、その目的が分からないからです。この場合、「青梅マラソンに参加するため」なら目的ははっきりしていますね。

 「何のために?」という疑問が出る間は、目的の定義が一義的ではない証拠になります。目的は一義的であり、目的を共有する必要のある当事者全員が納得できるものでなければいけません。言い方を変えれば、目的とは「それをやって何が嬉しいのか?」という質問の明確な回答になるべきものなのです。

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