SEは語彙に敏感であるべき
SEにとって語彙に敏感であることは仕事に関わってきます。その一例を示しましょう。皆さんは「ブランク」と「スペース」の違いを理解していますか? 2つは違うものですね。16進コードで言えば、ブランクは「X'00'」として扱っているマシーンが多いですし、スペースはコード体系ごとに異なった値が与えられています。例えば、メインフレームで扱う「EBCDICコード(Extended Binary Coded Decimal Interchange Code) 」では「X'40'」のようなものです。ソフトウェア仕様書で、「コードがブランクであれば削除する」と書いて、ここでいうブランクが本来はスペースのことであれば、「このプログラムはバグあり」となります。
この例で示したように、SEにとって語彙は仕事に不可欠な基礎知識だと分かります。これらのスキルを身に付けるということはSEとして基本とも言えるでしょう。もちろんSEに限らず、仕事を進めていく上で基本的な語彙の知識は不可欠ですが、SEにとってはさらに重要なものであることを再認識して下さい。
語彙力には2つの要素があります。使える言葉の数がどの程度あるのかという語彙数の要素と、状況に応じて適切な言葉を使うことのできる力という要素です。状況に応じて使えるスキルを身に付けることはもちろん大切ですが、まずは語彙数を増やすことから心がけてみて下さい。語彙数を増やすには、月並みなようですが読書はやはりお勧めです。工夫として、職業柄の専門書はもちろんですが、普段は自分が読まないような分野のさまざまなタイプの本を読書する生活習慣を持つのはいいでしょう。
因みに今回冒頭で紹介した上司と部下の行き違いで、皆さんは「思う」と「考える」の違いは説明できるでしょうか。「思う」は、自分の考えを主観で表わした表現です。一方、「考える」は客観要素が含まれた考えを表わします。社会人が使うべき表現としてどちらが適切であるかはお分かりでしょう。
さて、ここまでの連載で、SEには論理、文法に続き語彙力も必要だということが分かりました。次回の中級編では文章の構造について説明します。日常生活において読んだり書いたりする文章の構造は「起承転結」という構造を持ちます。しかし技術の文章は「序論・本論・結論」という構造にします。なぜそうするのかの理由を例文とともに解説していきます。
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筆者紹介──福田 修
(株)CSK、日本インフォメーションエンジニアリング(株)を経て、テクノロジー・オブ・アジア(株)設立、代表取締役に。適切な情報技術の動向把握に長け、2000年問題の効果的解決、インドのSI会社との提携、Webアプリケーションへの取り組み、オブジェクト指向設計/開発の導入等を、早い時期から対応し、後発システムベンダへの指導的立場にある。著書に『SEを極める仕事に役立つ文章作成術』(日経BP社発行)がある。
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