アナログ基板は2パターンを複数回試作して検証
── アナログ周りのノイズ低減が画質のために重要だと前回のインタビューで話していましたが。
堀田 それは今回も同様ですね。
中田 センサーも新規ですし、基板もより合ったものを作ろうということで、K10Dのときよりも難しいところがありました。
── 回路周りで苦労した点はどこですか?
堀田 K10Dでは、AFE(撮像素子のアナログ信号をデジタルに変換するチップ)が22bitの精度だったのですが、K20Dでは14bitの精度に落としました。実はアナログの段階──センサーとAFEとの間には相性があるんです。今回は結果として14bitの内部処理にしましたが、これはいくつかのセットを作って、マッチングのいいものを選んだ結果です。スペック値ではなく、実力で判断しました。階調再現の面では今までと比べても引けをとりません。
畳家 電気的な部分は、純粋に数字で比較されることが多いと思います。K10Dでは「22bit」というペンタックスならではのものを選んでいたので、当初はその点をアピールしたほうがいいのではないかという話もありました。今回は22bitと14bit、両方の回路を基板から起こしましたが、出たデータを見て、14bitのAFEが吐き出す絵のほうが圧倒的にいいという結論でした。
── 14bitと22bit、2種類の基板を作ったということでしょうか。
堀 2種類では済まなかったですね。トライ&エラーの繰り返しで、何回も試作と検証を繰り返しました。
── 他社のセンサーでは、内部でA/D変換してデジタル信号として出力するものもありますが。
畳家 そういう拡張性があるのがCMOSのいいところですね。CCDよりも高い自由度があるので、今後はそういう選択もありうると思います。ただし、そうなると「俺の仕事なくなっちゃうんでは」と、アナログ関係の技術者が冗談交じりに嘆いていましたが(笑)
色ノイズはなくす、輝度ノイズは残す
── 画像処理エンジンの「PRIME」に関しては従来と同様ですか?
畳家 チップ自体は同じものですが、基板や回路はすべて作り直しています。内部処理が14bitになったとしても、画素数は1.5倍に増えていますから、その負荷に対応できる高速なエンジンが必要なんです。
── 今回K20Dをお借りして、テストすることができたのですが、実際に試してみるとISO 800~1600程度までは色の傾向が同じですが、それを超えると「かなり変化が生じてくるな」という印象でした。
堀田 高感度NRはISO 3200を超えた領域(ISO 4000以上)から強制的に入ります。ノイズには大きく分けて、輝度ノイズと色ノイズの2種類がありますが、当社の場合、主に色ノイズを抑える処理を入れています。
他社の製品では、輝度ノイズをつぶした結果、解像感まで下がってしまう機種もありますが、当社はエッジが失われず、高感度でも「解像度を再現できる」点を重視しています。色ノイズは目立つので落としますが、輝度ノイズは多少残っても不自然でないという考え方です。この点は、K20DとK200Dのベクトルをそろえて作りました。
── 3段階のNRがありますが、実際にはあまり効果に違いがないように感じたのですが。
堀田 派手には抑えていないですね。階調表現には色の表現が含まれるので、そこをつぶすと単色が続いた単調な画になってしまう。その点にこだわれるような、細かい設定を用意しました。
(後編に続く)