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Macworld 2008 リポート Vol. 4

1-Clickで「ダイ・ハード」を入手! 使って分かった「iTunes Movie Rentals」

2008年01月18日 18時40分更新

文● 津田大介(ジャーナリスト)

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驚くほど便利で簡単!


 実際に使ってみた感想としては、「こんなに簡単でいいのか」というもの。映画の場合、1本あたりの容量が大きいので、ノートPCなどで再生することを考えると見終わったあとにHDDから消去されるというのは理にかなっている。

 アップルが凄いのは、こういう便利で使い勝手のいいインフラを構築するだけでなく、ほぼすべての映画会社を説得した上でサービスインするというところにある。現状でもメジャーな映画であれば、旧作から新作まで多くのタイトルをカバーしている。今後このサービスが成功することで、よりカタログの数は充実していくだろう。

 それはつまり、いちいちユーザーがHDDを増設したり、Blu-rayのような高価な機器を揃えなくても、アップルが用意したサーバー上(梅田望夫氏風にいえば「あちら側」)に、自分がいつでもアクセスできるライブラリーがあるようなものだ。

 安価で簡便な手段でそのライブラリを利用できるなら、「いつダウンロードされるか分からないBit Torrentを使うより、2.99ドルを払うよ」というユーザーは確実にいる。海賊版対策は、法による規制だけでなく、適正で使いやすいカタログを市場に提供するという二本立てでやらなければ意味がない。ジョブズはまずiTunes Music Storeを成功させることでそのことを明確に示し、映画業界にもDRMによるレンタルというスキームを示すことによって、ネットの海賊版に悩む映画業界を説得した。

 実際にiTunes Movie Rentalsを使ってみて分かったことだが、24時間以内という枠内で自由に映画を見られるというDRMは、映画業界にとってもユーザーにとっても飲みやすいものである。DVDレンタルよりも手軽なiTunes Movie Rentalsが普及することで、iPod touchの「動画ビューアー」としてのニーズも高まるのではないか。



日本でのサービス開始はまだ先か?


 早くこのサービスが日本でも始まって欲しいと思うが、ビデオ販売すらカタログが全然揃わない状況では道のりは遠そうだ。しかし、こうしたVODサービスは日本のように光ファイバーを中心とした高速ブロードバンドが整っている国でこそ力を発揮するものだ。

 米国は日本ほど高速なブロードバンド環境が整っておらず、今回ホテルのインターネット回線を使ってiTunes Movie Rentalsを利用したが、ダイ・ハードをダウンロードするのに数時間かからなければ見ることができなかった。日本の高速インターネットに、米国のiTunesエコシステム・カタログ・価格が組み合わされば、それこそBlu-rayデッキなんて買う必要はなくなるんじゃないだろうか。

 そんな、すぐ実現できそうな「バラ色の未来」なのに、このようなニュースを見ている限り、どうやらその日はまだまだ先になりそうな気配である。


筆者紹介──津田大介


津田さん

津田大介氏

インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆す るライター/ITジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。音楽配信関連の話題 を扱うウェブサイト“音楽配信メモ”の管理人としても知られる。この8月に小寺信良氏との共著 で『CONTENT'S FUTURE』を上梓。



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