社内評価を高めて、ポジションアップや給与のアップを望みたい。そんな気持ちは会社という組織で働く者であれば当たり前の希望だろう。もちろんそのためには仕事で実績を上げることにほかならないが、このような真っ向勝負だけでは「正当な評価は得られない……」と悩みを抱えるエンジニアは多い。そこで、社員研修や人事制度のコンサルティングを行なっている熊原徹司さんに、若手・中堅エンジニア(前編)と中間管理職(後編)の2つの立場から、社内評価に対する悩みと、その具体的な対策方法を聞いた。
臆せず、上司の“身近な人”にならないと!?
毎日のように、夜遅くまで仕事をしている。コスト・スケジュール的に無理な案件も担当しているし、結果も出しているはずだ。それなのに、なぜだか会社(上司)の自分に対する評価が低いように感じる。
同様のことを考えたことはないだろうか。「やるべきことはやっているのに、自分の評価は低い」というような悩みを抱えているエンジニアは多いだろう。では、正当な評価を得るにはどうすればよいのだろうか。熊原さんは、評価される人はまず上司にしっかり見られている人だと語る。
「自分を商品だと考えればわかりやすい。どんなによい商品でも、マーケティング活動をして、その商品の存在を世に知らしめなければ売れません。ですから、たとえやるべきことをやっていたとしても、自分がどのような仕事をして、どれだけ会社に貢献しているかを、できるだけアピールすることが大切です。もちろん上司側は、特定の部下だけを見るのではなく、全員を公平によく見るように心がけなければなりませんが、上司は忙しいので、すべてに目配りはできないと思った方がいいでしょう」
上司は部下を見ることが仕事だが、部下も自分がやっていることをできるかぎり上司にアピールし、表に出すという作業が必要であるということだ。また、さらにそこで評価する側の“独特の心理傾向”もわかっておくとよいだろう。
「上司というのは、どうしても『近い存在の人』を評価してしまう傾向にあります。たとえば、サッカーの日本代表監督は、代表監督になる前に自分が指揮をとっていたJリーグのチームから、代表選手を選ぶ傾向が高いのです。前々代表監督のジーコジャパン、そして前代表のオシムジャパンもそうでした。これはえこひいきというより、選手のことを監督自身がよく知っているために、安心して使えるからだと思います」
それでも理不尽だ! と感じたら
とはいえ理不尽だと感じてしまう状況で自分の評価が下がっていくことも多々あるだろう。そのような場合に評価を下げないで済む方法はないのだろうか。評価が下がることが危惧される状況下での対処方法とは。下記で具体的な例をあげてみた。
■上司と部下の危機的ケース1■
日常業務に追われ、次のステップへの勉強ができないし、そのため最新の技術にもついていけない。今の仕事の作業量は無理だと上司に申告したい。でも、そんなことを言ったら評価が下がるかもしれない……。
「次のステップにあがる準備ができないという話はよく耳にします。1つの方法としては、日常業務の中で成長できる関連性の高いものから勉強していくということです。ただし、プロジェクトに追われて時間がないということも現実としてあるでしょう」
与えられた仕事が「できない」ということを上司に分かってもらうことは非常に大変なことだ。上司の理解を得るための何かよい方法はないのだろうか。
「まずは、どうすればよいのか、答えが出るまで自問自答してみてください。さまざまな方法を考えて、すべてを列記する。どうしてもできない場合は、その理由も書き加える。それを持って、先輩や上司に相談することです。何かよいアドバイスをもらえるかも知れませし、経験から良案を教えてくれるかもしれません。もし良案がなければ、『できない』ということに対して理解を示してくれることでしょう」
(次ページに続く)
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