交通渋滞がもたらす東京の効率性
2006年10月30日から2週間、東京に出張した。11月3日(文化の日)が祭日だったため仕事のできる日は正味9日間しかなかったが、この間にMITメディア・ラボのスポンサーでおられる東京周辺の企業18社を訪問して回った。ハードなスケジュールだったものの、東京という都市の効率性を改めて認識できた。
私の滞在した京王プラザホテルは、JR新宿駅のほかに、都営大江戸線都庁前駅から徒歩数分のところにある。そこから都内に張り巡らされた地下鉄と電車のネットワーク、そしてジョルダン(株)の「乗換案内」といった乗り換え検索サービスの正確な所要時間予測、さらには切符を買わずに交通機関を利用できる「パスネット」や「Suica」のおかげで、極めて効率的かつスピーディーに都市の中を移動できた。車社会の米国では考えられない移動効率である。
前回紹介したベネチア・ビエンナーレ国際建築展には、世界の巨大都市を比較分析した展示があった(参考記事)。そこでは公共の交通機関を人々が最大限利用するという点で、東京がエネルギーの視点から見てすこぶる効率のよい模範都市だと評されていた。その裏には、慢性的な交通渋滞のため目的地にいつ到着するのか予測できないという、自動車での移動に対する不信感がある。東京都内の半分マヒした道路事情は、「時は金なり」のビジネスの世界で信頼を根本的に失いつつある。その結果、人々は地下鉄などの公共交通機関に流れ、皮肉にも東京を「輸送」の点でエネルギー効率が極めて高い優良都市にしてくれているのだ。
(次ページに続く)
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