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普及期に入るLEDバックライト液晶――FPD International 2007レポート

2007年10月25日 21時44分更新

文● 編集部 小西利明

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FPDI2007でのディスプレーパネルの主役のひとつが、LEDバックライト搭載の液晶パネル

「FPD International 2007」でのディスプレーパネルの主役のひとつが、LEDバックライト搭載の液晶パネル。各社が高画質・低消費電力の大型パネルを展示していた(写真は台湾CMO社の展示)。家庭用テレビの主役に躍り出るのも、そう遠くはない?

 フラットパネルディスプレーに関連する技術や製品の総合展示会「FPD International 2007」(以下FPDI2007)が、横浜市のパシフィコ横浜で24日から開催されている。会期は26日まで。FPDの分野では、LEDバックライトを利用した液晶ディスプレーが多数出展されていた。一方、ソニーの「有機ELテレビ」で注目を集める有機ELディスプレーは、携帯電話機など小型ハンドヘルドデバイス向けが主流で、PCや家庭におけるディスプレーへの応用はまだ先になりそうだ。

トレンド1 LEDバックライトによる省電力化

 従来からある液晶ディスプレーでは、冷陰極管(CCFL)をバックライトに用いていたが、CCFLに代わる液晶ディスプレー用光源として、高輝度LEDを用いた液晶ディスプレーが広がりを見せている。LEDバックライトを液晶ディスプレーに用いると、既存の液晶ディスプレーと比べて色再現性に優れるというメリットがあるが、今回のFPDI2007では消費電力の低減LEDバックライト液晶ディスプレーの特徴として打ち出した展示が目立った。

LEDバックライト液晶パネルと既存の液晶パネルとの消費電力比較

韓国LG Philips社ブースでの、動的バックライト制御技術によるLEDバックライト液晶パネル(下)と既存の液晶パネルとの消費電力比較。写真は明るい映像のシーンなので、差は30W弱と少ないが、暗い場面では100W近い差がつくこともある

 各社とも仕組みはおおむね共通で、表示される映像を解析し、LEDバックライトの光量を「明るい部分は明るく、暗い部分は暗く」なるよう細かく制御することで、バックライト全体で消費する電力を削減できるという仕組みだ。会場での展示では、40インチを超える大型の液晶パネルと組み合わせて、既存のCCFL液晶ディスプレーとの消費電力を比較する展示がいくつも行なわれていた。

 映像に合わせた動的なLEDバックライトの制御は、米ドルビー・ラボラトリーズの「ドルビービジョン」(関連記事1)のように、画質向上に利用するアプローチもある。色と画質の利点に加えて消費電力面でも有利という特徴が広く理解されるようになれば、今後のLEDバックライト液晶ディスプレーの普及にも弾みが付きそうだ。

東芝松下ディスプレイテクノロジーでは、同社のLEDバックライト液晶を採用したノートパソコンが多数出展

東芝松下ディスプレイテクノロジー(株)のブースでは、同社のLEDバックライト液晶ディスプレーを採用したノートパソコンが多数出展され、採用実績をアピールしていた。意外な製品も展示されていたり

トレンド2 液晶パネルの薄型化戦争勃発!?

シャープブースに展示されていた「次世代液晶テレビ」のデモ機

シャープブースに展示されていた「次世代液晶テレビ」のデモ機。すべての技術が製品に載るはまだ先だが、液晶パネルの薄型化という流れに先鞭を付けた形に

 FPDI2007で見えた液晶パネルのもうひとつのトレンドは「パネルの薄型化」である。今年8月にシャープ(株)が発表した「次世代の液晶テレビ」(関連記事2)を皮切りに、23日には(株)日立製作所も厚さ35mmの液晶テレビを発表(関連記事3)するなど、液晶パネルの薄型化が大きなトレンドになりつつある。FPDI2007では、独自に液晶パネルを開発する国内メーカーだけでなく、韓国・台湾勢も薄型化をアピールした展示を行なっていた。

LGPの42インチ薄型液晶パネル。厚さはわずか19.8mm

 韓国LG Philips社(LGP)では、42インチワイドサイズでディスプレーモジュール部の厚さが19.8mmのフルHD液晶テレビを出展した。パネルはSuper IPS方式の液晶パネルを使用している。また、韓国サムスン電子社はLEDバックライト型の液晶テレビで、モジュール部が厚さ10mmという40インチワイドサイズの液晶テレビを出展した。

サムスンの40インチLEDバックライト液晶パネル。厚さはわずか10mm!

サムスンの40インチLEDバックライト液晶パネル。厚さはわずか10mm!

シャープが披露した厚さ1mmを切る液晶モジュール

シャープが披露した厚さ1mmを切る液晶モジュール。2.2インチサイズで携帯電話機を対象としている

 シャープブースでは先述の次世代液晶テレビの展示が行なわれたほか、携帯機器用の小型ディスプレーではあるが、厚さ0.68mmという世界最薄の2.2インチ モバイルASV液晶モジュールを出展し、注目を集めていた。

トレンド3 2~3インチクラスで広がりを見せる有機ELディスプレー

 ソニー(株)が11インチサイズの有機ELテレビ「XEL-1」(関連記事4)を発表して以来、消費者からの注目も一層高まった感のある有機ELディスプレー(OLED)。FPDI2007でも、いくつもの企業が有機ELディスプレーやそれを使った機器のサンプルを展示していたが、そのほとんどは2~3インチサイズで、携帯電話機や携帯AVプレーヤーを用途としたものであった。

携帯機器向けの有機ELディスプレーは、非常に多くのメーカーが出展していた

携帯機器向けの有機ELディスプレーは、非常に多くのメーカーが出展していた。写真はサムスンの2.2インチQVGAサイズのディスプレー

サムスンが「世界最薄」をうたう有機ELディスプレーを出展

サムスンが「世界最薄」をうたう有機ELディスプレーを出展。厚さはわずか0.05mmで、35mm写真フィルムの半分以下としている

セイコーエプソンブースに展示されていた、8インチ・ワイドVGAサイズの有機ELディスプレーデモ機

セイコーエプソン(株)ブースに展示されていた、8インチ・ワイドVGAサイズの有機ELディスプレーデモ機。卓上テレビ並みのサイズだが、色再現性は市販の卓上テレビとは比較にならないほど優れている

 例外的なのは台湾奇美電子社(CMO)の子会社Chi Mei EL社(CMEL)が展示していたもので、25インチ・ワイドXGAサイズの大型パネルを展示し、液晶パネルとの消費電力差を比較していた。CMELでは、2009年前半にノートパソコン・PCディスプレーサイズの19インチパネルを、2009年後半には32インチサイズのパネルを生産する予定である。

CMELが出展していた25インチ・ワイドXGAサイズの有機ELディスプレー(左)

CMELが出展していた25インチ・ワイドXGAサイズの有機ELディスプレー(左)。消費電力の低さをアピールする展示だが、画質もなかなかのもの

サムスンでは14インチサイズのテレビ型を展示

サムスンでは14インチサイズのテレビ型を展示。ノートパソコンへの採用も期待できそうだ

 製造コスト面も考えると、現在の液晶・プラズマテレビが主戦場とする30~50インチサイズのテレビに有機ELディスプレーが進出するのは、しばらく時間がかかりそうだ。

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