このページの本文へ

コントラストは10万:1 厚さは2cm!

シャープ、従来を大幅に上回る画質、薄さ、環境性能を誇る液晶テレビを試作

2007年08月22日 18時01分更新

文● 編集部 小西利明

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

シャープ(株)は22日、同社の持つ液晶パネル技術の粋を結集し、“画質”“薄さ”“環境性能”(消費電力)で従来を大幅に上回る次世代の液晶テレビの試作に成功したと発表した。52V型(52インチワイド)クラスで厚さ20~29mm、コントラストは10万:1など、既存の液晶テレビを大きく上回る性能を誇る。製品化の具体的な時期や価格等は未定。

シャープが発表した次世代の液晶テレビ試作機

シャープが発表した次世代の液晶テレビ試作機

52V型の試作テレビの側面

52V型の試作テレビの側面。右の女性と比べても分かるように、テレビ部分は非常に薄く、これだけ見てもテレビには見えないほど

液晶テレビの後継者は次世代の液晶テレビだ!

同日、東京都内にて開かれた記者説明会では、同社代表取締役社長の片山幹雄氏らによる、液晶新技術に関する説明が行なわれた。なお現時点では、技術面での詳細は一切公開されていない

冒頭で挨拶を述べた片山氏は、次世代の薄型テレビ用表示装置として、有機ELディスプレーやSEDなどのいわゆる“自発光型”ディスプレーが取りざたされることの多い現状について触れ、「はたして本当にこれらのディスプレーデバイスが、今の薄型テレビに置き換わるのか?」と疑念を呈し、液晶テレビは技術革新の積み重ねを経て、従来のブラウン管をしのぐ画質(特にコントラストや色再現性など)を有するに至ったとした。それは「自発光型でないが故に、懸命にブレイクスルーを図ってきた」積み重ねにあるという。そして、技術の蓄積を踏まえたさらなる液晶テレビの進化形として、今回発表する新技術を用いた液晶テレビを、「シャープが考えている近未来の液晶テレビの未来の一部をご覧いただきたい」と誇らしげに述べた。

片山幹雄氏

シャープ 代表取締役社長の片山幹雄氏

水嶋繁光氏

同社取締役 ディスプレイ技術開発本部長の水嶋繁光氏

新技術による液晶テレビの特徴については、同社取締役 ディスプレイ技術開発本部長の水嶋繁光(みずしま しげあき)氏が紹介した。まずサイズと重量は、52V型のサイズでありながら、薄さは主要部分で20mm、最厚部でも29mm、重量は約25kgであるという。同社の同サイズ製品では、ハイエンドの“AQUOS T”『LV-52TH1』(関連記事1)が約34.5kg(ディスプレー部のみ)なので、10kg近い軽量化を実現したことになる。また厚さについても、今年7月に発表された“AQUOS G”シリーズ(関連記事2)の52V型が約8.1cmであるから、ほぼ3分の1程度に薄型化されている。この薄さと軽さにより、既存の液晶テレビでは家屋の壁の補強工事などが必要な壁掛け設置も、補強なしで行なえるとしている。

木製の壁に掛けられた壁掛けテレビをイメージした展示

木製の壁に掛けられた壁掛けテレビをイメージした展示。ディスプレー周囲の額縁部も狭く、左右は25mm、上側は20mmしかないという

画質についても、色再現域はNTSC比で150%と、70~90%程度の既存の液晶テレビを大きく上回るレベルを実現している。コントラスト比はなんと最大10万:1。実際の家屋内に近いリビングでのコントラスト(約200ルクス)でも3000:1と、既存製品を大幅に上回っている。液晶テレビの弱点とされる視野角や動画性能についても言及し、視野角は斜め45度からでもコントラスト比5000:1を実現したほか、動画性能についてはMPRT値※1は4ms(現在は優れたパネルでも6~8ms程度)と、大きく改善されている。

※1 MPRT値 Moving Picture Response Timeの略。ディスプレー技術の標準化団体VESAが策定を進めている応答速度とは異なる動画性能指標。

大画面高画質化と相反する、消費電力の低減も実現されている。AQUOS Gシリーズの52V型モデルが年間消費電力273kWh/年なのに対して、新技術による液晶テレビは140kWh/年と、半分程度まで省電力化を図っている。

ただし、残念ながらこれらの性能を実現した鍵となる技術について、詳細は明かされなかった。水嶋氏は質疑応答の中で、「バックライトの技術、偏光板の技術、カラーフィルターの技術、現時点における最高レベルの技術を結集して実現した」と述べ、1種類のコンポーネントの飛躍的革新だけで実現できるものではないとしている。

新技術による薄型・軽量化を示すものとして、説明会では一風変わった“今までにないテレビ”のイメージ展示が披露された。壁掛け型はオーソドックスであるが、前述のとおり補強なしで日本家屋の壁にも設置できるほか、壁掛けテレビの浸透が進んでいる米国市場では一層受け入れられるだろうとしている。

“屏風”をイメージしたデモ機

新技術の液晶テレビによる生活空間をイメージした奇抜な展示が披露された。これは“屏風”をイメージしたデモ機

そのほかにも、障子の窓から見える風景をイメージした“借景”(しゃっけい)、屏風をイメージした“屏風”、枯山水風の小さな内庭をイメージした“坪庭”など、和風の変わったデザインやデコレーションのテレビが披露された。テレビ本体が上下に動き、未使用時はサイドボード内に収納できる“ポップアップ”という変わり種テレビも展示されていた。

障子窓から外の風景を覗いているような“借景”

障子窓から外の風景を覗いているような“借景”

小石を敷き詰めた上に、細いアームに支えられて立つ“坪庭”

小石を敷き詰めた上に、細いアームに支えられて立つ“坪庭”

ディスプレー部が上下に動き、未使用時は収納できる“ポップアップ”

ディスプレー部が上下に動き、未使用時は収納できる“ポップアップ”

外観の奇抜さだけでなく、映像伝送に高速無線技術を使うことでケーブルレスを実現するデモも示されるなど、革新的な液晶テレビの投入によって、テレビのあり方を変えたいという意気込みが感じられた。

気になる製品化の時期だが、具体的には一切言及されていないものの、片山氏は2010年に稼働予定の、同社が堺市に建設する新工場の稼働に間に合わせたいと述べた。これから察するに、新技術がフルに盛り込まれた新しい液晶テレビが市場に登場するのは、2010年以降ということになりそうだ。

カテゴリートップへ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中