マイクロソフト(株)は17日、同社にて記者説明会を行ない、同社が運営するオンライン検索サービス「Live Search」の最新機能や日本語検索に関する概況を説明した。
今回の説明会は報道関係者向けの勉強会という形をとっており、米国のLive Searchで導入された最新機能や、日本語検索における検索精度改善についての説明が行なわれた。冒頭、同社オンラインサービス事業部 プロダクトマネージメントグループの浅川秀治氏により、Live Searchのサービス戦略の概略について述べた。
浅川氏によると、調査会社による米国でのLive Searchのユーザー数は約6900万人でシェア11%、米ヤフー(Yahoo!)の1億400万人、米グーグル(Google)の1億4200万人と比べると、まだまだシェアは低い。日本ではヤフーが56%のシェアを誇っており、Live Searchは5%に過ぎないという。
シェアの面では順調とは言い難いLive Searchだが、検索エンジンの核である品質、つまり検索精度の改善に注力しつつ、検索に加えてさまざまな付加情報を盛り込んでいくことにより、ユーザー体験の向上を目指すという。品質改善の取り組みのひとつが、9月下旬に実施された検索インデックスのサイズを従来の4倍に強化したもので、これによりキーワードに対する検索結果が10件以下というケースが半分以下に減ったという。
米国のLive Searchで導入された、4つの分野別検索機能も披露された。「エンターテイメント」「健康情報」「商品検索」「地域情報・地図検索」の4種類である。
エンターテイメントは歌手やタレントといった有名人を軸にした検索機能だ。核となっているのが「セレブリティ アンサー」と呼ばれる機能で、例えば歌手の名前で検索すると、その人物の写真数点と関連情報(画像、動画、出演する映画や音楽アルバムなど)へ簡単にアクセスできる。音楽CDならレビューが星マークの数で表示されたり、映画であれば動画サムネイルでプレビューを見ることもできる。「xRank」というランキングでは、有名人の検索ランキングが表示される。単なる人物名検索の枠を超えた楽しさを提供していると言えよう。
健康情報検索では、他人に知られたくないセンシティブな情報を扱うという特性から、プライバシー保護に配慮した設計が行なわれている。たとえば通信プロトコルに暗号化されたhttpsを使用するほか、検索履歴も90日で削除されるという。また、病名などで検索したトピックを、個人ごとにタグを付けて保存する「スクラップブック」機能も備えている。なお、スクラップブックを利用するにはWindows Live IDが必要となる。
商品情報検索では、商品のサイトや販売サイトへのリンクだけでなく、価格帯や消費者によるレビューなども表示できる。たとえば「Digital camera」で検索すると、数点の商品が画像と星マークの評価で表示される。それぞれの商品をクリックすると、より詳細な商品情報やレビュー(米Amazon.comのレビューなどから取得)が閲覧できるという仕組みだ。日本の価格.comのような機能を、Live Searchの検索機能にシームレスに取り込んだようなものと考えれば分かりやすい。
最後の地域情報・地図検索は、地図検索機能Live Search Mapsを改良したもので、対象地域の情報をカテゴリー(住居や食事、銀行など)から一覧できる。サンプルで示された米国シアトルの場合、一覧からレストランを選ぶと店の住所や営業日といった情報に加えて、外観写真やメニュー、さらにはレビューなども閲覧できる。ルート検索機能も組み合わされている。
それぞれひとつひとつは、既存の検索サイトや情報サービスで提供されているようなものが多い。しかし、それらが汎用検索サイトの検索機能に組み合わされたうえで、関連した情報、特にユーザーレビューなどとも組み合わされることで、ごく当たり前の検索という操作から、今までにないユーザー体験が得られるというのは実感できた。残念ながらいずれの機能も日本での導入時期は未定となっているが、今後の導入に期待したい。
日本での検索精度はGoogle以上!?
これら4機能の説明に先立って、マイクロソフトディベロップメント(株)にて検索精度の向上を担当するプログラムマネージャーの中島浩之氏により、Live Searchの検索精度向上の取り組みと日本独自の活動についての説明が行なわれた。
中島氏の説明によると、Live Searchでは検索精度を上げるための仕組み「RankNet」では、当初データからの学習パターンが、米国英語のみだったという。それもあって日本語検索時の精度は「去年の秋までは酷かった」というレベルだったという。
現在ではこれを改め、言語ごとのチューニングを行なっているという。例えば日本語処理では、単語単位の分割のミスを33%減らして精度を上げ、「一単語での検索なら、ライバルより良いのではないか」という段階まで向上したという。また、検索精度計測の手法についても紹介され、多彩な審査員を用意して人手による計測を行なうことで偏りのない判定を行なったり、表示順によるユーザーの評価の違いなども分析して、ユーザーが感じる検索精度の向上に利用しているという。
中島氏はライバルとの検索精度比較調査も披露した。後発のLive Searchの精度は、日米ともに当初GoogleやYahoo!に比べて劣っていたが、現在米国ではほぼ3社横並びになっているという。日本においては、「日本ではヤフーが1番だと思う」(中島氏)というように、現在でもヤフーがトップであるものの、9月のアップデートを機にLive Searchの精度は大きく上昇し、10月現在ではGoogleを抜いているとの結果が示された。
また、日本語での検索精度は、Live Searchが提供されている他の地域・言語よりも高いものを実現しているという。今後のサービス拡充だけでなく、検索精度のさらなる向上についても期待したい。