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共同出資で1/3ルールを回避

モバイルWiMAXの事業化に向けて、KDDI、インテル、JR東日本などが連携

2007年09月18日 21時59分更新

文● 編集部 小西利明

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モバイルWiMAXの事業化に向けて設立されたワイヤレスブロードバンド企画と、同社に出資する6社 モバイルWiMAXの事業化に向けて設立されたワイヤレスブロードバンド企画と、同社に出資する6社

 KDDI(株)およびインテル(株)、東日本旅客鉄道(株)(以下JR東日本)など6社は18日、モバイルWiMAXの事業化を目的とした「ワイヤレスブロードバンド企画株式会社」(以下WBP)に出資を行ない、事業運営にも協力することを発表した。KDDIを除く5社による増資を受けて、WBPへのKDDIによる出資比率は32.26%となり、総務省がモバイルWiMAXの帯域割り当てに関して定めた通称「1/3ルール」(後述)を回避できるため、モバイルWiMAXの事業化への道が開けることになる。

 同日、東京都内で開かれた記者説明会では、KDDI、WBP、インテル、JR東日本のほか、京セラ(株)、(株)大和証券グループ本社、(株)三菱東京UFJ銀行の7社の代表が集まり、WBPの設立と出資に関する説明を行なった。

記者説明会に登壇した7社の代表

 冒頭で挨拶したKDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺 正氏は、同社がWiMAX技術に2003年から着目して以来、技術開発や標準化作業に積極的に取り組んできたことを述べた。これだけ力を入れていたWiMAX事業だけに、KDDIとしては単独で事業化を行ないたかったところであろうが、総務省がモバイルWiMAXの周波数割り当てに際して、既存の3G携帯電話事業者(およびグループ会社)が3分の1以上出資する会社には割り当てないという方針(1/3ルール)を決定したため、これは不可能になっていた。

KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏WBP 代表取締役社長の田中孝司氏
KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏WBP 代表取締役社長の田中孝司氏

 そこで、KDDIが主体となってモバイルWiMAXを事業化する企業を設立し、その企業に対してKDDI以外の企業から出資を集めることで、1/3ルールに抵触しない環境を作り上げて事業化に乗りだそうというのが今回の趣旨である。WBP 代表取締役社長の田中孝司氏による説明では、各社の出資比率は以下のとおり。今月27日に増資を完了し、完了時点での資本金は8億5000万円を予定する。モバイルWiMAXの事業免許取得後は、さらに増資を行なう予定という。

KDDI:32.26%
インテル キャピタル:17.65%
JR東日本:17.65%
京セラ:17.65%
大和証券:9.80%
三菱東京UFJ銀行:5.00%

 田中氏はWBPの事業構想について、事業開始の段階ではモバイルPCへのサービス展開でスタートするとした。その後、国内でのエリア拡大や国際ローミングの推進にともなって、デジタル家電や企業向けサービス、コンシューマー向けデバイスへの領域拡大を進めるとしている。また国際ローミングの実現に関しては、米国の大手通信事業者である米スプリント ネクステル(Sprint Nextel)社とKDDIの関係を基盤に、共同で国際ローミング実現を推進するとしている。

モバイルWiMAXの特徴 WBPの事業構想
WBP田中氏が説明に用いたモバイルWiMAXの特徴。高速移動中でも10Mbps以上の通信が可能など、まさにモバイルブロードバンドの決定版といえるWBPの事業構想。Wi-Fiのように手軽にブロードバンドインターネットを実現したいというユーザーニーズと、デバイス側の発展が重なり事業化に結びつく

 インテルは米インテル社の投資部門であるインテル キャピタルを通じて出資を行なう。インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏は、今回の提携について「(日本が)無線もブロードバンド立国に、世界を代表するような利用形態の構築を実現する最初のステップではないか」と述べ、強い期待を示した。またインテルの役割については、既存の無線LAN(Wi-Fi)技術が、同社のCentrinoモバイル・テクノロジー対応パソコンの普及によって広がったように、Wi-FiとWiMAXのコンビネーションをパソコンに取り込み、簡単に使えるようにすることにあるとの見方を示した。

インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏JR東日本 常務取締役 IT・Suica事業部長の小縣方樹氏
インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏JR東日本 常務取締役 IT・Suica事業部長の小縣方樹氏

 また、JR東日本 常務取締役 IT・Suica事業部長の小縣方樹(おがた まさき)氏は、同社が業務に用いている独自ネットワークを、WiMAXで無線ブロードバンド化することに「鉄道のブロードバンド化に最適なサービス」と期待を示した。顧客へのサービスにモバイルWiMAXを利用するほか、自社の業務ネットワークへの活用も行ないたいとのことだ。

携帯電話との住み分け・融合は?

 説明後に行なわれた質疑応答では、KDDIの携帯電話事業との住み分けや融合についての質問が多く寄せられた。特にKDDIは以前に、モバイルWiMAXと既存の携帯電話サービスが利用している「CDMA2000 1x EV-DO」によるハンドオーバーなどの実験を行なっている。

 しかし今回の発表では、KDDIの携帯電話事業とは別の事業として、住み分けをはかることが強調された。例えばWBPの田中氏は、「3Gとは違う、新たな市場を切り開くもの」と述べ、高速の移動体データ通信は携帯電話事業と異なる事業領域を狙うものとした。またKDDIの小野寺氏も、「auはモバイル、携帯電話。WiMAXはエンベッド。機器やサービスが異なる」と述べ、パソコンなどに向けた高速データ通信と、音声通話主体の携帯電話は住み分けが可能であるとの見方を示した。現実問題として、事業免許の取得もできていない現段階では、場合によっては連携を打ち出し過ぎることが免許取得に悪影響を及ぼす可能性も考えられることから、慎重にならざるを得ない点もあるだろう。

 一方で、基地局の建設などについて田中氏は、WBP自体での展開だけでなく、KDDIやJR東日本のリソースを借りることで、早期のサービス展開を実現したいと述べた。

WBPによるモバイルWiMAX事業の将来ビジョン WBPによるモバイルWiMAX事業の将来ビジョン。当初はモバイルノートやUMPCを主軸とするが、デジタル家電から白物家電、業務用機器などにも広がる

 モバイルWiMAXについては、ソフトバンク(株)とイー・アクセス(株)が共同研究を発表(関連記事)したほか、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモは(株)アッカ・ネットワークスと提携(関連記事)するなど、1/3ルールを回避しての事業化に向けた取り組みが進んでいる。今回のKDDIの取り組みで、大手キャリア3社の体制が固まったことになり、今後は各社による事業免許取得と、サービス展開に向けた取り組みが加速していくことになるだろう。

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