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モバイルWiMAXの実現に前進――ワイヤレスブロードバンド企画、UQコミュニケーションズに社名変更

2008年03月03日 18時07分更新

文● 編集部 小西利明

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 モバイルWiMAXの事業化を目的としたワイヤレスブロードバンド企画(株)(以下WBP)は3日、東京都内にて記者会見を行ない、2月28日にKDDI(株)などから161億5000万円の増資を受けたほか、同月1日に「UQコミュニケーションズ株式会社」(以下UQ)に社名変更を行なったことを発表した。これにより同社は、2009年のモバイルWiMAXサービス事業化に向けて、本格的に動き出すことになる。

UQコミュニケーションズのロゴマーク

UQコミュニケーションズのロゴマーク

 WBPおよびUQはKDDIを筆頭に、インテル(株)や東日本旅客鉄道(株)(JR東日本)、京セラ(株)、(株)大和証券グループ本社、(株)三菱東京UFJ銀行などの出資により設立された、モバイルWiMAX技術を用いた通信事業会社である。2007年12月21日に総務省から、2.5GHz帯を使用したモバイルWiMAXの事業免許をWBPが取得。これを受けて、実際の事業化を目指した準備が行なわれていた。

UQ 代表取締役社長の田中幸司氏

UQ 代表取締役社長の田中幸司氏

 同日に行なわれた記者会見では、UQ 代表取締役社長の田中幸司氏により、新社名や増資、今後のスケジュールについての説明が行なわれた。田中氏はまずUQの社名について、“普遍的かつ高品質(Universal Quality)”なデータ通信インフラを実現するという意味を込めたという。また、Qには“大容量(Quantities)”や“高速(Quickness)”、Uには“ユビキタス(Ubiquitous)”などの意味も込められている。

UQコミュニケーションズの社名の由来

UQコミュニケーションズの社名の由来

 2月28日に行なわれた増資では、株主7社の出資割合は変えずに、総額で170億円の資本金(および資本準備金)となるよう増資が行なわれた。内訳は以下のとおり。

株主 増資額 出資総額 出資比率
KDDI 52億980万円 54億840万円 32.26%
インテル キャピタル 28億5000万円 30億円 17.65%
JR東日本 28億5000万円 30億円 17.65%
京セラ 28億5000万円 30億円 17.65%
大和証券グループ 15億8270万円 16億6600万円 9.80%
三菱東京UFJ銀行 8億750万円 8億5000万円 5.00%

 また今回の増資と社名変更に合わせて、4月1日付けで社員を100名に拡充。さらに同社本社も同日、東京都港区の品川イーストワンタワーに移転すると発表された。


基地局建設と各種試験も着々と


 田中氏の会見では、サービス開始に向けた準備状況についても説明された。

 まず、基地局やサービスネットワークを構築する機材についてはすでに選出済みで、富士通(株)や韓国サムソン電子社の屋外基地局機材が選定されているという。また、期待されるJR東日本との連携についても、都内主要駅にて駅構内での電波伝送実験を実施中など、サービス展開に向けた準備が進められている。

屋外基地局設備

屋外基地局設備に選定された富士通とサムソンの機器

ネットワークを構築する機材

ネットワークを構築する機材には、日立製作所(株)や伊藤忠テクノソリューションズ(株)の機材が選定されている

JR東日本と行なった駅構内での伝送実験の様子

JR東日本と行なった駅構内での伝送実験の様子

 また、UQ社のネットワークを利用する他社によるサービス展開(MVNO)についても、今月21日に東京で、MVNOを検討する企業に向けた説明会を行なう予定である。7日から同社ホームページにて、説明会参加の受付が開始される予定。

 基地局の建設は2008年6月から開始の予定で、年度内に1000局程度が建設される。同社の2008年度第4四半期に当たる2009年2月には試験サービスを開始。2009年度夏には待望の商用サービスが開始の予定となっている。基地局開設のスピードも徐々にペースアップし、2009年度にはさらに3000局程度の開設が見込まれている。

基地局開設スケジュール

基地局開設スケジュール。ほぼ1年後に試験サービスが始まり、来夏には商用サービスが開始される予定

エリア展開のスケジュール

エリア展開のスケジュール。都市部では地下や大型ビル内への展開も必要であり、きめ細やかな基地局展開にはKDDIやJR東日本との連携も期待したい

 試験サービスは東京23区と横浜市などで開始し、商用サービス開始の頃には東京、名古屋、大阪に拡大される。2009年度末には政令指定都市に、2010年度末には全国主要都市をカバーする規模に拡大するというスケジュールが公表されている。

 これら基地局の拡大に際しては、トータルの設備投資で1500億円程度の資金が必要とのことで、金融機関からの借り入れ金だけでなく、今後の追加増資等も検討されている。細かい基地局開設プランや、KDDIの携帯電話サービスとの住み分けや連携については語られる段階ではないが、田中氏は「WiMAXは新たなデータ通信ネットワーク。音声は別。オープンで多用な端末を提供する」とPCでのデータ通信用途を強調。音声通話が主軸の携帯電話とは住み分け可能という従来からの主張を繰り返した。

 また事業免許取得を争ったライバル企業に対するMVNO提供についても、「信じてもらえなくて困惑しているが、当社としてはオープン、フェアネスで」と述べ、競合に対しても公正なサービス提供を行なうと強調した。

 1年後の試験サービス開始に向けて、いよいよ走り出したモバイルWiMAX事業だけに、今後の展開に期待が持たれる。

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