ほかの製品にはない圧倒的な魅力がほしい
── Rollyについて、率直にどう感じられましたか?
津田 まず、新しいiPodと比較するのは見当違いでしょうね。Rollyは製品の発表前にティザー広告を展開していて、そのときには、一部のメディアやブログで「iPodキラー登場か?」という位置づけで報道してされていました。
しかし、いざフタを開けてみると、製作には元AIBOチームの人が参加した、AIBOの「遺伝子」をオーディオ機器と組み合わせた製品だったという。製品としての評価はさておき、iPodとはまったくベクトルの違う製品ですよね。
── 新ジャンルの音楽プレーヤーとして、成功しそうですかね?
津田 将来、開花しそうな面白い「種」はいっぱい入っていると思います。でも、現時点ではコンセプトが煮詰めきれていない感じで、しかも実売3万9800円という価格なのはちょっと……。
── と言われますと?
津田 初代AIBOは、ロボットの面白さや、人口知能の未来を感じさせてくれる製品でした。だから、25万という高い価格帯でも、ロボットファンや、ソニーファンはその魅力にお金を払ってくれて、インターネット予約だけにも関わらず即完売となったんでしょう。
でも、現状のRollyが初代AIBOのような、ほかの製品にはない圧倒的な魅力を持っているでしょうかというと、それにはちょっと疑問符を付けざるを得ない。
Rollyは、どちらかというとロボットよりは、音楽プレーヤーの延長上に位置づけられています。そうなるとユーザーは、「音楽プレーヤーとして高いか安いか」という判断基準になってしまいますよね。
個人的には、もう少し音質が良ければな……という思いはあります。「この小ささなのに、低域まできっちり出ている」とか、店頭でRollyを見て、一発ではっとユーザーを驚かせるような部分があれば、3万9800円という価格への評価も変わったのではないでしょうか。
新コンセプトの商品を展開する能力はある
── Rollyは失敗だったということでしょうか?
津田 そう結論づけてしまうのは、早計かと思います。狙っているコンセプトの方向が正しいかどうかは別の議論としてはありますが、少なくともソニーには、新しいコンセプトの商品を展開する能力があるということは再確認できました。ただ、同時に現時点では、圧倒的にマーケティングが足りないとも思いますが。
Rollyを見てみると、今のままでは厳しい部分も多いとは思います。しかし、ポータブルスピーカーで音楽を楽しむという、ある種ラジカセの未来像のようなものが感じられます。売れなくてもすぐにお蔵入りにするのではなく、もうすこしエンターテインメント性を高くしたり、実用的な機能を追加して、進化させていってほしいなと。
── ちなみに津田さんは、今のRollyはいくらが適正価格だと思いますか?
津田 僕自身はシビアに見たら9800円が限界ですね。1万9800円ならもしかしたら悩んだ上に買うかもしれない。そのくらいの感じです。
Rollyの発表を聞いた周囲の人に同じ質問をしてみたら、やはり高くて1万9800円。1万切らないと厳しいんじゃという回答が僕の周りでは多数派でしたね。むしろ、もっと高付加価値の商品にして12万円とか15万円とか、そういう方向で打ち出した方がよかったかもしれないとも思います。
今の価格やコンセプトでは、正直コンシューマ向け商品なのか、アーリーアダプター向けの商品なのか分かりにくいのではないでしょうか。
(次ページに続く)
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