株式会社富士通ラーニングメディア
研修事業部シニアインストラクタ
プロジェクトマネージャ
土谷政則さん
プロジェクトを成功に導くには、プロジェクト推進に関する正しい知識と、そして的確な判断と行動が必要不可欠。それを行なうのがプロジェクトマネージャーで、プロジェクト成功の鍵を握る重要な職種だ。しかし、このプロジェクトマネジメントが的確に実施されていないため、プロジェクトが成功に至らないケースも多い。そこで、ありがちなプロジェクトの失敗例に迫りながら、国際資格「PMP(Project Management Professional)」のバイブルとも呼ばれる「PMBOKガイド」をプロジェクト成功のためにどのように役立てるかを、全10回に渡り解説する。
スコープの曖昧さは“大きなツケ”に
失敗プロジェクトの多くは、その理由としてスコープが明確でなかったことが挙げられます。スコープとは、開発するシステムの機能や成果物であり、そのシステムを開発するために必要な作業の範囲のことを言いますが、それらが曖昧であると、工程の後半になって追加の機能や変更が発生してしまい、手戻りの作業が発生することがあります。 後から追加や変更があるということは、その対応が工程の後ろであるほどコストはかかるものです。打つ手(対策)の選択がなくなる場合もあるのです。
また、スコープにおいて“成果物は何を持って完成したとするのか”をあらじめ決めておくということも大切です。完成した成果物の受け入れ基準が決められているか、あるいは作業の完了基準が定められているかということです。この完成の基準や完了の基準がないと、作業をやり続けたり、あるいは期日がきたからいきなり終わります、ということになりかねません。
つまり、これらのように“スコープの曖昧さ”をいかに早く排除するか、がプロジェクトを成功させるコツと言えるのです。まず、ゴールを決める。そのプロセスを明確にする。曖昧さをできるだけ早く排除する。排除できないものは、文書として残しリスクとして関係者で共有しておくことが肝要となるのです。
WBS作成の効果とは
それでは、曖昧さを排除するために具体的にはどうすべきなのか。 PMBOKガイドに登場する「スコープ・マネジメント(注1)」のWBS(Work Breakdown Structure)の作成があります。WBSとは、プロジェクトの成果物(最終成果物)をより細かい要素(成果物)に分解したもので、どのような成果物を作る必要があるか、そのためにはどのような作業をすべきかをより具体的に記述していくものです(図1参照)。WBSを作ることで最終成果物と作業内容がより明確になるのと同時に、プロジェクトメンバーやお客様との役割分担が明確になります。
注1:スコープ・マネジメント
国際資格「PMP(Project Management Professional)」のバイブルとも呼ばれるPMBOKガイドに書かれた9つの知識エリアの中の1つ。プロジェクトの最終成果物や作業範囲などを明確にするマネジメント。
■関連スキルアップコース(富士通ラーニングメディア)
・システム開発におけるWBS作成と見積り
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