IT業界に働くエンジニアは、その過酷な勤務状況からワーカホリックなイメージが強い。しかし仕事がいくらできても、スキルが高くても、その生活に“人間らしさ”が失われてしまっては良い生活とは言えないかもしれない。本記事では、仕事を頑張りながらも、プライベートの趣味も充実さている人物とその「楽しい」趣味を紹介し、彼らの仕事とプライベートのバランス感覚に迫る。
キックボクシングとエンジニア。文武両道のバランス感覚
鈴木直樹さん(41)
コンテンツクリエーターとして、Web系flash製作を中心に、最近では携帯電話の着せ替えツールや、街頭の大型ディスプレイや店頭モニターで流す映像を制作する仕事を手がけている鈴木さん。常に新しい刺激とハードな日々を耐え抜くには体力と精神力が要求される。精神と肉体の集中力の源は何だろう。
「IT、特に自分が関わっている分野は変化と進歩が早く、それに伴い仕事もスピードが要求されます。だから集中力と、それを維持する体力は必要不可欠です。今思えば、短時間の集中力が求められ、さらに対戦相手の素早い動きに対応するキックボクシングをやってきたのは非常に役に立っていますね」
納期が近づくと昼夜問わず仕事が続くときがあるという。それではキックボクシングどころか、体力維持のための運動すらできないのでは?
「確かに時間的には不規則極まりないですね。基本的に自宅が事務所兼用なので、自宅で1日中仕事をしています。でも、その他は比較的規則正しく生活しています。仕事が夕方に終れば、週2~3回程度ジムに行こともありますよ。頭は疲れていますが、体はあまり疲れていないので、いい気分転換になります」
ブルース・リーが大好きだった! ヌンチャクを作った子供時代
「静」のイメージがあるITの仕事と、「動」や「激」であるともいえるキックボクシング。この趣味を始めたきっかけは?
「子どものときブルース・リーの映画を見たのがきっかけです。ヌンチャクを作って遊んだりしてました(笑)。その後、本格的に練習して、大学生のときにプロデビューを果たしたのです。でもキックボクシングでは生計を立てるつもりはなかったので、同時にコンピューター関連の会社に入社しました。それで今があるのですが、キックボクシングを続けているのは、自分の経験を後輩に伝えていきたいという気持ちがあるからです」
世界を相手に選手を育成する夢
現在もトレーニングを欠かさずしているという鈴木さん。選手としてではなくセコンドとしてキックボクシングを楽しんでいるという。その喜びとは何だろうか。
「自分はタイトルは取れませんでしたが、幾度かの海外遠征やタイトルマッチを通じて、世界チャンピオンなど一流の選手と戦う機会に恵まれました。この経験が、これから世界を目指す選手を育てたいという理由となっています。自分が世界を相手に経験したことを元に選手を指導していき、それを選手が納得して練習してくれ、その成果、勝つととても嬉しいですね。自分も役に立っているんだと実感します。自分も選手として悩んだり、行き詰まったりしました。でもそれは選手しかわからない大きな壁なんです。それを『自分がわかってあげて、アドバイスするというのが使命』なんて思うこともありますね」
ITとキックボクシング どちらも、同じスタイルでよい戦いをするために
正反対のようだけれども、もしかするとキックボクシングはITの仕事にいい影響を与えているのでは?
「ITの仕事で何を目指し、どういうものを作るのかということと、選手が試合に向けてコンディションを上げていくのは同じことなんです。ITの場合はクライアントと密にコミュニケーションを取り、要求通りのものを作らないといけないし、選手の場合は減量やウエイトなどを管理しつつ、試合というゴールに向けてトレーニングをしていかなければならない。だから僕はキックボクシングでも仕事と同じように、セコンドとして選手とウエイト管理やトレーニングメニューの検討などの進捗会議をします。ITの仕事もキックボクシングも自分にとっては同じやり方で進んでいるというわけです。どちらも戦いですからね。だからどちらも勝つための準備と、よい戦いをすることが大切なんですね」
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