仕事が楽しい! 人生が楽しい! 奧山 睦氏が語るSEのためのキャリアデザイン 第5回
第5回 良きキャリアに良き師あり あなたにとっての「メンター」を探そう!
2006年12月19日 00時00分更新
SEとして成長するためには、ある程度の時間を要します。成長とは、単にシステムが設計できるようになるとか、顧客との意思疎通が容易になるなどといったことだけを指すのではありません。私が言う「成長」とは、「職務経験や人生経験を活かして人間的に大人になる」ということです。子供は一足飛びに大人になれないように、SEも短期間で「大人になる」ことはできません。「大人になる」ためには、誰かの支援が必要です。この成長過程を支援してくれる人物のことを「メンター」と言います。今回はメンターについて一緒に考えていきたいと思います。
メンターとは良き助言者、指導者、顧問のこと
「メンター(mentor)」とは、良き助言者、指導者、顧問という意味。ギリシア神話に登場する賢者「メントール」がその語源と言われています。メントールは、ギリシアの名君・オデュッセウス王の友人にして助言者、王の息子テレマコスの師も務めた人物です。メントールの良き指導者ぶりから意味が転じて、部下や後輩を指導・教育し、仕事・ポストを与え引き立てる人物を指すようになりました。その役割は夫や家族とは違う立場で、仕事・人生の上で、より効果的なアドバイスをしてくれる相談者という役割を持ちます。
企業においてメンターという考え方は人事制度の1つとして採り入れられています。たとえば、先輩社員は継続的指導や支援を後輩に行ないます。それらは職務上の直接的なものだけでなく、マナーや人間関係などは日常のコミュニケーションを通しても支援するのです。この継続的な支援のことを「メンタリング」と言います。ここで指導する側を「メンター」と言うのに対して、受ける側を「プロテジェ」と呼びます。
メンタリングは、1980年代に米国のシリコンバレーで、スタンフォード大学を中心としたメンターたちがHP、SUN、シスコなどの数多くのITベンチャーを支援したことにより注目されました。その後、日本でも徐々に導入されていきました。また米国のベンチャーキャピタリストやエンジェル(個人投資家)は、投資をするだけではなく、優秀な人材を投入して、経営をより確実なものにするなど、メンターとしての役割に注力しているところが大きな特徴であると言われています。
メンターをイメージしてみると、将来の「なりたい自分」が見える
メンターの存在が、成功するキャリアの橋渡しになることが少なくありません。では、実際にメンターとはどんな人なのかイメージしてみましょう。
メンターが与えてくれるもの |
- 1.交友関係の中からキーパーソンとなる人を紹介してくれる
- 2.成長につながる仕事のチャンスを与えてくれる
- 3.あなたの才能を理解し、それを伸ばすよう指導してくれる
- 4.成果を生み出すためにはどうしたらよいか、アドバイスをしてくれる
- 5.不要なリスクからあなたを守ってくれる
- 6.あなたが辛いときには、その話に耳を傾け、アドバイスをしてくれる
- 7.仕事の進め方や目指すべきキャリアのよきモデルである
- 8.あなたのキャリアにとって、有益な情報を与えてくれる
さて、このいくつかに当てはまった人が、みなさんのまわりにいましか? 自分にとってのメンターのイメージが少しずつ浮かんで来ると、逆に自分が将来に向けて、何を求めているかがわかってきます。
転職したいと考えている人は、その転職を希望する先で活躍している人をイメージしたのではないでしょうか? 起業を目指す人は先輩起業家として活躍する人が気になり、「こんな人にメンターになって欲しい!」と思うようになるでしょう。このように、メンターをイメージしてみると、将来の「なりたい自分」が見えてくるのです。
すぐそばにいるメンターをキャッチしよう!
自分の身近なところにいる人、特に勤務先の上司がメンターであるSEは幸せですね。しかし、「そんな人はそばにいない」と感じている方もいるかもしれません。その場合は、どうしたらいいでしょうか?
まずは「人に会う、人の集まる場に行く」ことが第一歩です。また、実際に会うための時間が捻出できないのであれば、書物の中に、あるいはインターネットの中に、メンターとなる人物像を求めることもできます。メンターを求めている人の前には、必ず何らかの形でメンターが出現することは間違いありません。
さて、禅の教えに「一華五葉」という言葉があります。
『一つの華が咲くときは、五つの支えがあり、一つの華が散るときも五つの学びがある』
表に表れる結果は、たとえ1つであっても、結果を導くための数々の支援があるということの例えです。その表に見えないものが見えるようになるには、自分自身の努力で感性を養っていくしかありません。
もしかすると、メンターは、あなたのすぐそばにいるのに、気づいていないだけかもしれませんね。
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