このページの本文へ

仕事が楽しい! 人生が楽しい! 奧山 睦氏が語るSEのためのキャリアデザイン 第4回

第4回 キャリアデザインに必須のコミュニケーション・スキル ポイントは「傾聴」技術と「観る」技術

2006年12月05日 00時00分更新

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

仕事が楽しい! 人生が楽しい! 奧山 睦氏が語るSEのためのキャリアデザイン

昨今、特に求められるビジネス・スキルとしてコミュニケーション・スキルがあります。しかし、一口にコミュニケーション……と言われてもかなり曖昧です。では、具体的にコミュニケーション・スキルを身に付けるとはどのように努力すればよいのでしょう。今回は人と人がやりとりする際に基本となる「聴く」こと「観る」ことをポイントに、SEのキャリアデザインに役立つコミュニケーション・スキルに関して一緒に考えていきたいと思います。

「傾聴」は、相手を理解しようとする態度の表れ

 みなさんは人の話を「きく」という言葉からどういう文字を思い浮かべますか? 「聞く」でしょうか。それとも「聴く」、「訊く」でしょうか。

 相手へどのような対応をしているかによって、同じ「きく」でも意味が違ってきます。「聞く」は、ごく一般的に使われますが、話が人から人へ伝わる様子を指します。つまりただ当たり前に聞こえている状態です。一方「聴く」は身を入れて、という限定的なニュアンスを持ちます。つまり気持ちや心の動きまでとらえるイメージです。また「訊く」は尋ねるという意味を持ち、自分が疑問に思っていることに対してなにがしかの回答が欲しい場合に使います。

傾聴は、相手を理解しようとする態度の表れ

 さて、社会人としての「きく」には「聴く」を深めて、いわゆる「傾聴」が必要なのではないでしょうか? 「傾聴」とは、「相手の立場に立って、聴き落としがないように努める」ということです。「傾聴」の気持ちを示すことは、相手を理解しようとする態度の表れとなるのです。たとえば、あなたが上司から新規プロジェクトについて説明を受ける場面があったとします。そのときに「上司から話を聞いたところで、きっと理解できないだろう」という気持ちが働いた場合、その段階ですでにコミュニケーションを取ることができません。上司の話をたとえすべては理解できなくても、100パーセント集中して聴いていれば、相手に信頼感と誠意を伝えることができます。

 気を付けなければいけないことは、「~しながら聞く」という態度です。たとえば目はパソコンの画面を見ながらとか、机の書類を見ながらなどは相手に対して敬意を払って聴く姿勢とはとても言えないのです。

 さて、傾聴に関してこんなエピソードがあります。操業以来、70社以上の企業を買収して急成長したITベンチャーのシスコシステムズ社のチェンバース会長は、買収した企業の従業員であろうが、誰であろうが、500人の人たちとも意思が通じる開かれたコミュニケーションを取るように努めたといいます。相手に自説を説得することを第一義に置くのではなく、相手の言葉に耳を傾けるという態度を身をもって示し、誠実で信頼を得るネットワークづくりに注力したのです。その結果約90%以上の取引をインターネット上で進める環境を構築するに至ったといいます。この基本姿勢が「傾聴(Active Listening)」であり、その企業風土はいまも続いているそうです。

 ちなみに「聴く」という字を分解すると、「耳と目を十分開いて心で」となります。これがいわゆる「傾聴」の基本です。

ゴーゴーサバンナの法則とは?

 「聴く」ことと同じくらい重要なのが、「観る」ことです。「見る」ことは、ただ視覚の中に入ってくる状態です。対して「観る」は、相手が今、どういう状況にあり、何を考えているかという情報を収集しようとする姿勢が含まれます。

 さて、メラビアンの法則というのをご存知でしょうか? 心理学者のメラビアン博士が、実験し発見した法則です。コミュニケーションにおいて、話し手が聞き手に与える影響がどのような要素で形成されるかを測定したところ

  • ・言葉(話す言葉の内容)……7%
  • ・声(声の質・大きさ/話すテンポ)……38%
  • ・見た目(表情/身だしなみ/身振り・手振り)……55%

であることがわかったといいます。このそれぞれのパーセンテージから因んで「ゴーゴーサバンナの法則」とも言われています。コミュニケーションにおいて、人は言葉よりも、パフォーマンスの部分を重要視していることを如実に物語っています。

メラビアンの法則
メラビアンの法則

100通のメールより1回の面談のほうが意思疎通ができることも

 身振り、手振り、顔の表情、身体の動作などを十分に観察し、相手の心の動きを読み取ることは大切です。たとえば本やインターネットによる情報収集は、一見効率的に見えても、限界があります。100通のメールで意思疎通を図るよりも、たった1回の面談のほうが心が通うこともあります。フェイスツーフェイスは情報が豊富であると言われるゆえんなのです。

 我がことに振り返ってみても納得できます。仕事の初期、企画やワークフローを組み立てなければならない段階では、私はメールで伝えるよりも会って話すほうが早いと思い、いつも面談することにしています。その人が言わんとする微妙なニュアンスを表情や態度で読み取ることができ、方向性を決めるのにスムースにいくからです。仕事の初期段階の刷りあわせがうまくいかないと、途中、軌道修正するのがとても難しくなります。だからこれはどうしても必要なプロセスだと私は感じます。デジタルでどんなに仕事の効率がよくなっても、人の心の細部までは読みとれないからです。いわば、「アナログでデジタルを補完する」というところでしょうか。

 「傾聴」と「観る」こと。ぜひともみなさんのキャリア形成のためのヒントになれば、と思います。

奥山 睦氏

著者 奥山 睦
財団法人社会経済生産性本部認定キャリア・コンサルタント、メンタルサポーター。
日本キャリアデザイン学会正会員。
専門的なITスキルとキャリア・カウンセリングを組み合わせて、キャリア系ポータルサイトの企画制作や執筆、講演などを行なう。
キャリア・コンサルタント有志によるキャリア開発専門サイト、「ウーマンズキャリアナビ」運営。


カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ