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編集者コラム 第3回

セカンドライフで、手っ取り早く情報収集をするには

2007年05月25日 00時00分更新

文● 吉川大郎(月刊アスキー編集部)

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では、集中体験を行なうと、どのような出来事がおこるのでしょうか? これはそれぞれの人によって違うと思います。“体験”だから当然なのですが。本当は今すぐログインしていただきたいのですが、そうもいかない方のために、少し私が経験した「体験」をひとつ、ご紹介致します。

セカンドライフには地図を表示する機能があります。地図を見ていると人が集まっているエリアが分かるので、「何で集まっているんだろう」と思って“飛んで”行くわけですが、その時私が飛んでいった先は荘厳な音楽堂のような場所でした。20mほどのステージ右端にはグランドピアノが置いてあり、1人のアバターがコンサートを開いていたのです。観客は思い思いの席に座り、ジッと彼の音楽を聞き入っていました。仕掛けは簡単で、セカンドライフにはストリーミングの音声を特定の場所(この場合コンサートホール内)に流せる機能があるので、それでピアノコンサートのMP3を流しているワケでした。

バッカバカしーい!

コンサートのおママゴトかよ! 確かにそのとおりかもしれません。バーチャル世界に入って、なーんもせずに“くつろいで”いるわけです。しかも演奏はナマではなくて、単にMP3であります。「iPodで勝手に聴いてろ!」てなもんです。ところが、会場には30人ほどの聴衆がいて、みんなジッと聴いている。

これ、何なんでしょう?

これが、まさしく“体験”です。「旅の途中で」「おや? と思った場所に」「降り立ち」「静かなコンサートを発見した」という体験が、私を席に座らせ、音楽に聴き入らせたわけです。周囲のアバターの存在も大きい。それぞれのアバターはリアルの人間そのものですから、誰もステージに上がって邪魔をしようと言う人間もいません。そこには紛れもなく、社会的体験があったわけです。そこに流れる音楽はMP3のストリーミングではありますが、観衆がチャットで送る賛辞の声、曲の合間に入るMC、どれもそのときの私にとっては“本物”でした。

さらにこのコンサートは、ミュージシャンのプロモーションの場にもなっていました。

実は、グランドピアノを弾いていたミュージシャンアバターは実在するプロのミュージシャンLouis Volare氏であり、彼のライブが流れていたわけです。そして、壁には彼のアルバムが購入できるWebページへのリンクが貼ってあり、さらにチャリティーへの募金箱も設置されていたのです(リンデンドルで払える)。

もっと驚くべきは、観客席には彼のマネージャーと思われる人もいたということです。マネージャーさんは、聴き入っている私に対して「彼のファンクラブグループに入りませんか?」というメッセージを送ってきました。セカンドライフでは、いくつもの「グループ」に入ることができます。グループに入ると、グループ共通のアナウンスが流れてきたり、グループしか入れない場所に入れたりするのです。私はOKをして、彼のグループに入りました。

数日後、グループメンバー宛にメッセージが届きました。次は、別の場所でコンサートを開くというのです。その場所は、ハリウッド映画に出てきそうな、小さな西部劇風のバーでした。我々はまた、そこで彼のコンサートを堪能したわけです。

……数回繰り返したら飽きましたけどネ(とはいえ、彼の曲は素晴らしいので、また聴きに行きたいと思います)。

こうしたことは、セカンドライフの“住人”ならば誰でも体験しているハズです。もしかしたらそれは、日本人同士のコミュニケーションだったかもしれないし、たった一人でどこかを巡ったことかもしれません。ただ、共通して言えるのは、おそらくこれらの出来事が「思い出」になっているのではないかということです。

セカンドライフの魅力はいくつかあると思いますが、とにかくこうした体験こそが本質かと思います。ビジネスを行なう際に、体験という一点が、分かっているかいないか? この差は大きいでしょう。

そして私のおすすめする「集中体験」は、セカンドライフだけではなく、メタバース(3Dのバーチャル世界)すべてへの評価基準を自分の中に作り得る作業になります。たとえば、日本でもmeet-meを代表とする3Dバーチャル世界が立ち上がろうとしていますが、これらをどのように評価するか? ビジネス参入はアリか、ナシか? これらの問いに、ぶれない答えを出せる基礎になるのではないでしょうか。

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