月刊アスキー 2007年9月号特集2は、セカンドライフです。ここでは、セカンドライフ特集で分かった、この世界の勘所のようなものを、お伝えいたします。
今月の月刊アスキー 特集2はセカンドライフです。過熱気味とも思えるセカンドライフですが、現在ビジネスとして参入するか否か? これを見極めるために、皆さんリサーチをしている最中ではないでしょうか?
本特集では、すでにセカンドライフで収益を上げている早期参入企業へのインタビューを行い、セカンドライフビジネスに関するヒントを紹介すると共に、イン・ワールド・レポーター(セカンドライフ世界のレポーター)であるChizzy Dilley氏による参入企業・参入支援企業合計80社超のリストも掲載しました。
こうしたデータや金言集は本誌に譲るとして、このコラムではセカンドライフの世界をいかに早く、正確に捉えるか? その方法について少しお話ししたいと思います。
とはいえその前に、私がこの1カ月、セカンドライフ関連セミナーを数件取材した中で、もっとも気になった質問があるのでそれにお答えしたいと思います。それは、セカンドライフに入るには、どの程度のスペックのPCが必要なのか? と言う点です。
きちんと検証したわけではなく、申し訳ないのですが、私のセカンドライフマシンのスペックは、Pentium 4-3GHzにメモリ1GB、ビデオはGeForce 7600 GS(メモリ256MB)というスペックです。性能が高いどころか、今や一線を退いて久しいCPUでも、服がヒラヒラしたりといった物理的な表現すら問題はなく、快適に動作しています。実はセカンドライフのためにこのマシンを購入したのですが、このスペックだと17インチモニタ込みで12万円程度で収まりました。ちなみにOSはWindows XPで、これも価格を抑えるのに一役買っています。
次に「じゃあ最低どの程度のスペックで動くのか?」という点ですが、私の普段使用している旧IBMのThinkPad X40(CPU Pentium M-1GHz、メモリ768MB、ビデオはチップセット内蔵のIntel 82852/82855)では、さすがに解像度を800×600に落とすほか、グラフィックの表示を最低品質まで落とし、さらにタスクトレイに常駐しているソフトをすべてオフにしないとまともに動きませんでした。
いずれにせよ、現在の、Windows Vista搭載のマシンであれば、ほぼ問題ないのではないか? というのがセカンドライフユーザーの一般的な見解のようです。また逆に、Vistaパソコンであればセカンドライフが快適に動くので、セカンドライフの普及はVistaの普及と同じような曲線を描くのではないか? という人もいます。
回り道をしました。 本題ですが、手っ取り早くセカンドライフを理解する方法、それは、「土日を潰してセカンドライフに集中的に入り浸り、2000L$(リンデンドル)程度の買い物をする」ということです。土日がつぶせない場合は、とにかく一日1時間程度を4、5日、連続してログインしてみてください。私は、これをやっていない人が言う「セカンドライフとは?」という言葉には耳を貸さない方がいいと思います。童貞がセックスを語るようなもので、信用できません。セカンドライフにログインしたはいいものの、日本人しかいない島を数時間ウロウロした程度では、オナニーを覚えたての子供といったところでしょう。耳年増も結構ですが、セカンドライフは参入する企業もコンシューマも、「体験する」メディアです(ゲームとの関連性も指摘されますが、これはまた深いテーマなのでここでは扱いません)。この本質を体得せずして理解はあり得ないのです。
また、私の言う「体験してください」という話には根拠があります。今回インタビューした早期参入企業の方々で、元々3D世界の素養があるゲーマー以外の「セカンドライフからバーチャル世界を経験しました」という人々は、皆さんどこかのタイミングで、最初はなんだかピンと来ないながらも「とにかく理解してやろう」ということで集中的にセカンドライフ漬けになっていたタイミングがあったのです。そこで初めて、セカンドライフのことが分かったのだと言います。
これが、セカンドライフを理解する“ひけつ”です。
ここで、スルドイ方ならばお気づきでしょうが、「集中して体験せよ」という法則は、セカンドライフの参入障壁にもなりえます。一般ユーザーが「セカンドライフはアクセスしたけどつまんないね」ということになりかねない。実際、セカンドライフ参入企業がもっとも気を使っているのはこの部分でしょう。そして、セカンドライフを愛している人々が気にしているのも、この部分だと思います。だから、皆さん初心者には優しいのです。顔が“見え”ているコミュニケーションということも大きいでしょうけれども、ボランティアで初心者へのサポートを行なうユーザーまで現れる始末です。ボランティアの人々は、おそらくセカンドライフのこうした“弱点”に、気付いているのではないかと思います。
そしてこの参入障壁は、障壁ゆえにビジネスチャンスに成り得ます。ですから、参入業者が初心者向けのサービスを充実するのは、初心者の数が多いという理由以上に、正しい選択なのであります。セカンドライフに人を定着させ、パイを増やすというメリットの他に、「自分の生まれた場所」という帰属意識を持ってもらうことも可能でしょう。
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