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“CS3”のモバイル事情をビル・ペリー氏に聞く

モバイルコンテンツづくりの最前線に革命をもたらす“Adobe Device Central”の魅力とは?

2007年06月22日 16時13分更新

文● ヤシマノブユキ

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アドビ システムズ(株)は5月8日に、クリエイティブ関連のスイート(統合)製品“Adobe Creative Suite 3”(アドビ クリエイティブ スイート スリー)ファミリーを発表した。“Photoshop”(フォトショップ)や“Illustrator”(イラストレーター)などを中心に12のソフトが同時にアップグレードされている。その中でも新たに提供される『Adobe Device Central CS3』(デバイス セントラル)について、同社のモバイル部門で全世界のコンテンツプロバイダーや開発者らをサポートする中心人物、ビル・ペリー(Bill Perry)氏に話を聞いた。

CS3の各製品と連携して動作を検証できるDevice Central

ヤシマ(以下、編集部)  まず、CS3製品の多くに含まれる『Adobe Device Central CS3』(以下、Device Central)とはどんなものか、お聞かせください。

ビル氏

米アドビシステムズ社 モバイル&デバイス部門 デベロッパーリレーションズ 担当マネジャーのビル・ペリー氏

ペリー氏  我々の製品を日常的に使用しているクリエイターにリサーチしたところ、彼らは制作したコンテンツを携帯電話機でも動かしたいと望んでいることが分かりました。Device Centralは“Flash CS3 Professional”や“Photoshop CS3”などとスムーズに連携し、モバイルコンテンツの制作を容易にする、とてもエキサイティングなツールです。

具体的には、Device Centralを利用することで、プロ、アマチュアを問わず、制作したコンテンツが個々の携帯電話端末で正しく動作するのかを、具体的に検証しながら最適な形に仕上げていけます。コンテンツづくりの障壁を低くしたと言っていいでしょう。なお、Device Centralは単体では提供せず、主なCS3製品(12種類)の一部として提供していきます。


実機上でどう動くかをパソコン上で再現できる

編集部  Device Centralを使うと、ズバリどんな問題がどう改善されるのでしょう?

ペリー氏  コンテンツの制作現場では、検証作業のほとんどを実機に移してから実施しているというのが現状です。トライ&エラーの連続で相当の労力が費やされている。

しかし、携帯電話端末固有の詳細情報を記録した“デバイスプロファイル”と実機のエミュレーション機能を備えたDevice Centralを使うことで、検証作業のおよそ70%をパソコン上で行なえるようになりました。実機に極めて近い環境でテストできるので、実機での検証は不要になったと言っても過言ではないでしょう。とはいえ、最終的な詰めの部分はもちろん実機で行なう必要がありますが。

メイン

Device Centralのメイン画面

編集部  では、この実機での検証が省けることで開発期間やコストはどこまで抑えられるのでしょう?

ペリー氏  それは、簡単な壁紙を作るのか、XMLや画像を取り入れた難易度の高いアプリを作ろうとしているのか、コンテンツの複雑さや対象とする端末の種類にもよるので一概には言えません。しかし、今年末までには複数の成功事例を紹介する計画があるので、そちらを参考にしてください。

編集部  それでは対応する端末についてもお聞きします。CS3の国内発売当初、対応する携帯電話端末の数はどれくらいでしょう?

ペリー氏  国内海外を合わせて265機種ほどからスタートします。国内と海外の内訳は非公開ですが、デバイスプロファイルの更新時に端末の追加も随時実施していきます。このデバイスプロファイルの更新時期は、四半期ごと(3ヵ月に一度)ずつ行なっていきます。すべてのCS3ユーザーに対して、無償で提供していきたいと考えています。ダウンロードは自動ではなく手動になりますが、Device Centralのメニューから簡単に実施できるようになっています。


実機での性能検証だけでなく
アンテナ状況などによるアプリの変化なども検証できる

編集部  次にDevice Central自体について、どんな点がクリエイターにとって使いやすいのでしょうか?

ペリー氏  Device Central単体でいえばまず、端末固有の情報が詳細に調べられる点が挙げられます。キャリアーやメーカーといった視点でデバイスプロファイルを絞り込めるのはもちろん、複数の条件に合う端末だけを抽出し、その結果をグループ化して保存しておけば、プロジェクトごとの検証をよりスピーディーに行なうことができます。

デバイスプロファイル

デバイスプロファイル内の情報は、ディスプレーサイズから表示解像度、搭載されているOSなど多岐に渡る

情報

キャリアー、端末メーカーごとにリスト化できる。ここから絞り込みも可能

また、“Flash CS3 Professional”で制作したFlashコンテンツについては、デバイスエミュレーションに対応しているので、実際にキーやボタンを押したときにどんな反応をするかをパソコンの画面上で確認できます。そのほか、液晶ディスプレーへの光の映り込みや、電波の強弱電池残量日時の変更端末の性能に基づくパフォーマンステストなど、これまで再現が難しく、手間がかかっていたテスト環境をワンクリックで構築できるようになっています。

比較

Flashの作成時に各端末のインターフェースや表示解像度などを横並びで参照できる

映りこみ

室内での光の映りこみ時に最適なバックライトの調整なども可能

CS3ファミリーとの連携では、“Flash CS3 Professional”や“Photoshop CS3”などからDevice Centralへの受け渡しがワンクリックもしくはメニューを選択するだけと簡単です。私の知りうる限り、こうした機能を実装したのはおそらく、Device Centralが世界で初めてだと思います。

Device Central

Photoshop CS3やFlash CS3にDevice Centralへの連携ボタンが用意されている

編集部  ところで話は変わりますが、今年2月に“3GSM World Congress”で発表された“次期Flash Lite”の開発進捗状況はいかがでしょうか?

ペリー氏  予定通りに進んでいます。ただ、今年2月に発表したとおり“Flashビデオ(FLV)形式の動画が再生できる”ということと、“携帯電話機などの対応製品が今年末までに市場投入される”ということ以外は現時点ではコメントできません。でも、愛すべきインターフェースになるのは間違いないので正式リリースを楽しみにしていてほしいですね。

編集部 最後に、日本のケータイコンテンツクリエイターにメッセージをお願いいたします。

ペリー氏  CS3の日本語版は今月下旬より提供開始します。プロのクリエイターやヘビーユーザーの方はもちろん、これからモバイルの世界にチャレンジしてみようという方々にも気軽に触れてもらえる製品であると確信しています。Device Centralを実際に体験していただき、ぜひコンテンツ作りを楽しんでください!

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