方向性の違いが、成長を左右した
では、参加したパネリストたちは今のWeb 2.0といわれる状況に対してどのように応えたか? 2002年に立ち上がった“Flicker.com"(フリッカードットコム)には、現在までに約3億5千万枚の写真がアップロードされているという。Flickerは、2005年に米ヤフーに買収されている。
「創設時にはこれほどの展開があるとは想像もしていなかった。当時は、テクノロジーの転換期であり、シリコンバレーの資金力もなくなってきたころだった。そのまま(ネットビジネスが)低迷してしまうのかどうか、先がまったく見えない状態だった。(Flickrと)従来のドットコムとの違いは、方向性にあると思っている。以前はトップダウンであり一方通行だったものが双方向に変化した」。(フェイク氏)
フェイク氏は別のセッションで「今のWeb 2.0と呼ばれる状況は、かつてインターネットが流行しだしたころのワクワク感にも似ている」と話していた。
150年の歴史を持つロイターは、SecondLife内に支局を持った最初のメディアである。グローサー氏自身もSecondLife内に自分のアバターを持っている。
「まずはニュースが起こる場所すべてに常に向かうことになる。“News Corp”のような上場企業が“MySpace”に資金を投じたように、そのコミュニティの中だけではなくビジネスや消費者といった社会全体のレベルで転換期が訪れるのではないか」。(グローサー氏)
セカンドライフのケイパー氏は、「セカンドライフはゲームではなく、生活のあり方。車椅子の人々が現実の社会でできないことをやれる場でもあり、チャリティ活動や政治活動など実世界と同じことをバーチャルの中で繰り広げられている」と話す。
22歳で資産価値が10億とも20億とも言われているズッカーバーグ氏は、「みんながコネクションを持ちたいと思うこと。世界で起きていることを知りたいと思う気持ちが、(SNSサイトの)成功の鍵を握っている」と語る。
Facebookは、当初、大学発行のメールアドレスを持つ人に限定したSNSとして人気を得たが、昨年からは、企業や組織にも間口を広げ、現在は誰でも地域のネットワークから登録できることになっている。現在の登録者数は1500万人だ。
SNSサービスがビジネスに転換するとき
現在起こっているバーチャルゲームの革命で携帯がどう役割を果たすのかについて尋ねられたアフジャ氏は、「世界中がコミュニケーションをとれるようにすることがまず役目としてある。ある意味、これまで存在していたコミュニティを作り直していかなければならないということだが、今は、それが即刻できる時代にある。興味深いのは、携帯利用者の数がインターネットの利用者よりも上回っていることだ」と話した。
これをうけてケイパー氏は「ケータイでできることに制限はなくなってきている。SecondLifeのあり方も変化する可能性がある」とした。
つまり彼らが注目しているのは、ネットゲームやSNSがリアルなビジネスに変革していく姿なのである。
グローサー氏は「私が興味を持っているのは、これから10年後にトレーダーたちが何をしているかということだ。彼らがアバターで取引をしている可能性は十分ある。(企業は)そういった状況を見据えて、テストを試みていくべきである」とも話している。
筆者紹介-遠竹智寿子
外資系コンピュータメーカーのマーケティング部、広報部の勤務経験を経てフリーランスとして独立。ITジャーナリストとして調査、記事執筆を手掛ける一方で、企業向けコンテンツ企画やマーケティング調査などを手がける。 また、コミュニケーションスキルやIT・英語教育分野における研究、事業活動も行っている。現在、 月刊asciiに『マインドマップ「超」仕事術]『深化するCSR』を、アスキービジネスに『ビジネスマインドエッセンス』を連載中。
次回のコラムでは、ダボス会議の残りのセッションの様子(Web 2.0時代のジェネレーションや地方のギャップをどう考えるか、政府による検閲システムの必要性など)や、観客の反応を紹介する予定。
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