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米国IT事情を探る 第1回

米国で加熱する『iPhone』報道

2007年02月01日 12時00分更新

文● 遠竹智寿子

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 アメリカでは、年明けの“Macworld 2007”の基調講演(キーノート)で、スティーブ・ジョブズがアナウンスして以来、iPhone、iPhone、iPhone……となんだかメディア自身が踊らされているかのように盛り上がりを見せている。

米国IT事情 第1回

Macworldの基調講演に登壇するスティーブ・ジョブズ氏 撮影:kaz shiozawa

 ジョブズ氏の戦略、アナリストたちの見込み、市場の反響や反応、ブロガーたちの小競り合い(アップル信者とそうでない人たちとの)など、日を追うごとにさまざまな目線での記事やコラムが掲載されていて、なかなか興味深い。

 日本でも、発表直後に騒がれはしたが、それはやっぱり専門誌を中心とした“業界メディア”の中だけに感じる。

 例えば、ジョブズ氏のキーノート当日、米国のCNNやNBC、CBSといったテレビメディアは、Expoの会場から生中継を入れ、iPhoneの概要や聴衆の反応を伝えていたが、その様子を見るとキャスターたち自身もちょっと興奮気味……。そんな報道を見ていると、日米のiPhoneに対する温度差を少なからず感じる(もっとも国内の投入時期が明らかになっていないため当然なのだが)。

 話は若干変わるが、『The late late show』(CBS)では、司会のクレイグ・ファーガソンが(ネタでだが)『iPhone』を賞賛し、対するマイクロソフトの音楽プレーヤー『Zune』やビル・ゲイツをこき下ろしていた。かたや、コメディー番組『MAD TV』(FOX)や『Saturday Night Live Show』(NBC)では、ジョブズのもったいぶったようなパフォーマンスを物まねし大爆笑!

 こんなエンターテイメント番組を見ていると、アメリカではスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツらが、一般大衆への影響を持つ人物として扱われているなと感じる。



徹底した秘密主義を貫いたアップル


 さて、米国メディアが浮き足立っているのは、何もiPhoneが(彼らにとって)センセーショナルなプロダクトであるというだけではない。

 その瞬間まで徹底的にその詳細がベールに包まれてきたからだとも言える。アナウンス直前のTVインタビューで女性キャスターに「私もiPodを持っているけれど、もしかすると“iPod電話”に買い換えるチャンスはあるのかしら?」と問いかけられたジョブズ氏は「アナウンスしていない製品の可能性についてはコメントしないんだ」とかわしていた。メディアのあちらこちらで“iPod+携帯電話”がささやかれてはいたが詳細は結局つかめないままだった。

米国IT事情 第1回

基調講演直後の様子。ジョブズ氏の周りに人だかりができて、容易に近づけない状況だった

 例えば、Newsday.comのAPビジネスライター、ジョーダン・ロバートソンは発表後の記事で、iPhoneの秘密主義について“業界史上、最悪なまでにかたくなに守られた秘密のひとつだった”と評している。また、Cnnmoney.comに掲載されたFotuneシニアエディターのピーター・ルイス氏のコラムでは「約2年半もの間、CingularやYahoo!やGoogleといったパートナーを持ちつつ、いったいどうやってiPhoneを世間に隠し玉として守り続けてこれたのか?」を話題にする。

 同コラムによれば、アップルのシニアマネジメントクラスの人間でさえ、ジョブズ氏のキーノートで初めてiPhoneを目にしたという。また、パートナー企業や社員とは、機密漏洩の際の解雇や起訴体制を明確にし、ブロガーやジャーナリストたちに対しても何かあれば訴訟を起こすといった相当厳格な体制をとってきたようだ。社員に隠し、家族に隠し、ひたすら隠し続けてきたが、これ以上はもう隠し切れないと判断して、発表に踏み切ったのだとか。関係者たちが、妻や子どもに秘密にしていて辛かったというエピソードを取り上げるあたりは、アメリカならではと感じるのである。

(次のページに続く)

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