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週替わりギークス 第305回

新規事業の撤退を“負け”にしない方法

2024年05月04日 07時00分更新

文● 正能茉優

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働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!

 「こんな働き方はもう嫌だ」「もっとこんな仕事がしたい」。
 誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。

 何か困っていることや考えていることがあれば、こちらまで気軽にメッセージください! 匿名のメッセージも、もちろん大丈夫です。

今回のお悩みは「企業人としての、事業やプロジェクトの終え方」について

 ASCII読者の皆さん、こんにちは! 正能茉優です。

 この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。

 今月のテーマは、「企業人としての、プロジェクトの終え方、畳み方」について。

 一社員として自身が立ち上げた新規プロジェクトの未来を悩む30代の会社員の方から、お便りが届きました。

 私も直近、自分がずっと担当してきたサービスを“閉じる、畳む”判断を、人生で一番と言っていいほどに悩みながらした経験があるので、実体験も踏まえつつ、一緒に考えていきたいと思います。

 「判断の仕方」についてお話しさせていただいた前回に続き、今回は「サービスを閉じることを負けにしない」をテーマに、いろいろと考えていきましょう!

プロジェクトを閉じるべきかと思いつつ、決められません

 私は現在、会社員として、社内での新規事業の起案を目指して、事業の卵のようなプロジェクトに取り組んでいます。メンバー2人と私の、3人で立ち上げたプロジェクトです。

 もともとこうした「事業立ち上げ」に学生時代から興味を持っていたこと、さらには新卒で配属された部署においてどうしてもこの事業がやりたいと思うような課題を見つけたこともあり、強い思い入れのあるプロジェクトなのですが、実際に世にプロトタイプを出してみると反応が芳しくなく、畳むべきか、閉じるべきかと悩む日々です。

 とはいえ会社員だからこそ、1年という締め切りこそあるのですが、緩やかにじわりじわりと続けられるという環境にいることもあり、その環境のなかでもう少し時間をかけて「自分が実現すべきと考えていることが必要かを確かめたい」「まだ社会が追いついていないだけだから、時間がほしい」という気持ちを抱いている自分がいることもまた事実です。

 正能さんは会社員としても自分のサービス・事業をリードするお立場にあると思うのですが、どういう時に、あるいはどういう条件がそろえば、自分の担当するサービスを畳もう・閉じようと決意されますか? また、過去そうした経験をされたことはありますか?

 ご自身の会社とはまた違う意思決定になると想像しているので、 “会社員の正能さん”として答えてもらえるとうれしいです。

(タケシタさん(仮名)・27歳・会社員)

プロジェクトを閉じることは、そりゃ悔しい

 「プロジェクトを閉じる」という判断。

 その背景には、思い描いていた計画がその通りに進まなかったり、前向きな見通しが立たなかったり、はたまた変わる会社の方針に抗えなかったり、何らかの明確な負が生じていることがほとんどだと思います。

 プロジェクトクローズの判断をする時にやめられることを嬉々とする人はおらず、誰もがまず、悔しい、不甲斐ないといったネガティブな感情になるはずです。

 私も類に漏れず、そうでした。

 自分で決めたことにも関わらず、「ああ、ダメだったか」という落胆に似た気持ちになる日々が続き、「戻れるなら、いつどこでやり直すか?その場合事業はどうなるか?」と振り返ることをやめられませんでした。

 具体的には、いつ、どこで、誰としたどんな意思決定やアクションが、今の結論をつくったのかという過程を図表に整理し、分岐をつくっては、今現実で走っているシナリオとは異なるシナリオを、いくつも描きました。

“やめる”と同時に、“つなぐ”

 ……と、やたら解像度の高い意思決定と、行動の“たられば”を繰り返すうちに、ふと考えが変わってきました。

 この“たられば”を、次の事業に活かしたらいいんじゃないか?

 あるいは、近くで知りたいと思ってくれる人がいたら、共有して活用してもらったらいいんじゃないか?

 というのも、会社員として事業をやっていて強く感じることのひとつに、会社員として新規事業をやる場合には、個人で新規事業をする場合とは違って、会社ごとのお作法があり、そのお作法をうまく乗りこなして初めて、社会に価値を出せるまで事業を継続できる(=会社に投資判断し続けてもらえる)ということがあるからです。

 こうした会社ごとのお作法が存在するなかで、クローズする事業が唯一価値を発揮できるのは、事業クローズまでにわかったことを、できたこと、できなかったことを含めて、次の、あるいは周辺の事業に“つなぐ”ことがなんじゃないかと私は考えました。

 “つなぐ”ことで、事業そのものの失敗がなかったことにはもちろんなりませんが、事業を“やめる”と同時に、こわかったことや培ったものを“つなぐ”アクションをとることで、「クローズ=負け」に閉じない前向きな動きができるはずです。

 例えば、

・クローズ判断をしたからこそわかった、社内でのお作法の乗りこなし方を新規事業Tipsとしてまとめ、知見として共有する

・後続のクローズ検討する事業やプロジェクトのために、クローズする際の法務、コンプライアンス、会計処理などを関係各所と論じて、知見としてまとめる

 というように。

 他にも、これまでの事業の中で培ってきた資産、具体的にはデータや分析ロジックなどを今後新たな事業で利活用する方法を考え、今後の組織にバトンパスしたり、サービスをいつか復活させる可能性を考えてその閉じ方を設計したり、私の場合は、とにもかくにも“つなぐ”ことを意識して、後続のアクションを設計しました。

クローズ=負けにしないための評価制度

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