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専門家だけでなく企業全体を巻き込むAI活用/データ分析の基盤を提供、日本市場での戦略を語る

データ/AI活用をもっと「ポップ」に! Dataiku日本代表・佐藤氏

2023年09月06日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 “Everyday AIのためのプラットフォーム”を標榜する米Dataiku(データイク)日本法人が2023年9月5日、事業戦略説明会を開催した。

 今年4月にカントリーマネージャーに就任した佐藤豊氏らが出席し、データ分析やAI/機械学習活用の全プロセスをエンドトゥエンドでカバーし、データサイエンティストだけでなくビジネスユーザーでもノーコードで利用できるDataikuの強みや、日本市場における今後のビジネス戦略を説明した。

Dataikuは、データ分析やAI/機械学習に必要な全プロセスをエンドトゥエンドでカバーする、単一のプラットフォームを提供する

Dataiku Japan カントリーマネージャーの佐藤豊氏。Tableau Japanカントリーマネージャー、セールスフォース・ジャパン 常務執行役員 Tableau事業統括 カントリーマネージャーを経て、2023年4月より現職

「Everyday AI」がコンセプト、データ専門家もビジネスユーザーも対象

 Dataikuは2013年にフランス・パリで創業し、2015年に米国・ニューヨークに本社を設立。2020年にユニコーン企業認定を受け、2022年には日本法人のDataiku Japanを設立した。グローバルの顧客数は600社以上で、うち150社以上が「Forbes 2000」に選ばれたエンタープライズ企業だ。

Dataikuの沿革と国内導入企業の例

 Dataikuの社名は「Data+俳句(Haiku)」の造語だ。一般的に、データ分析やモデル開発のプロセスは長く、複雑で、効率の悪いものになりがちだ。Dataikuはこれをシンプルな、構造化された単一の流れに作り替え、誰でも扱いやすい効率化されたものにすることを目指している。その目標を、「シンプル」「構造化」「単一の流れ」といった表現の特徴を持つ「俳句」になぞらえたのだという。

 タグライン(事業コンセプト)としては「Everyday AI, Extraordinary People(日々のAIで、皆が一歩先へ)」という言葉を掲げる。データエンジニアやデータサイエンティストだけでなく、ビジネス部門の従業員や経営層も含め、Dataikuを通じてデータ活用を容易なものにし、データを利用した業務や意思決定をより日常的なものにしていく、すなわち、データ活用の民主化を推し進めるという狙いだ。

 製品としてはフルマネージドのSaaS版、オンプレミス版の両方を用意している。チーム規模に合わせてプランが分かれており、無料プランもある。

Dataikuがターゲットユーザーと考えるペルソナはデータ技術の専門家だけでない。ビジネスの専門家や経営層もデータ分析やAI/機械学習活用が容易にできるプラットフォームを提供する

日本企業のAI活用を世界の先進レベルに引き上げるために

 佐藤氏はこれまで約10年間、Tableau Japanやセールスフォース・ジャパンにおいて、BIツールによるノーコードでのデータビジュアライゼーションの浸透を進めてきた人物だ。

 佐藤氏は、Dataikuにジョインした理由について「データを活用する日本のあらゆる人、組織、市場を次のレベルに持って行く。そのために、使えるデータ、データからのインサイト、そしてデータを使ったプロダクト(アプリケーション)を増やしていく」ためだと説明する。「データ活用を組織レベルで妥協なく進めることができれば、組織の創造力、実行力を解放できると思っている」(佐藤氏)。

 具体的には、AI/機械学習の取り組みが「実証実験(PoC)段階」にとどまり、現実のビジネス成果を挙げて規模も拡大する「産業化段階」進めていないエンタープライズを支援していくという。

 「日本のお客様と話をすると、『まだAIに取り組んでいない』や『実験段階にある』という企業が多い。実験段階なので、展開しているAIプロジェクトは10、多くても100程度。一方でグローバルのAI先進企業を見てみると、すでに数千のAIプロジェクトを同時に回している。Dataiku Japanとしては、日本のお客様(の現状のレベル)に合わせるよりも、世界のレベルに目線を上げて、日本のお客様を次のレベルに持って行く。そういうことを力強く進めていきたい」(佐藤氏)

グローバルでも60%以上の企業が「実証実験段階」(左下)にとどまり、ビジネスとして成果をスケールさせている「AI先進企業」(右上)は少ない(アクセンチュアの分析レポートより)

 日本のデジタル競争力強化のために掲げるのが、前出の“Everyday AI”ビジョンだ。具体的には、エンドトゥエンドのプラットフォームを通じて「すべての人に(データ/AI活用の)力を与える」「AIモデルの開発期間を数カ月から数日に短縮する」「AIライフサイクルを全社的に展開する」ことを目指す。

 とは言え「すべての人」をデータ人材、AI人材にアップスキルすることはハードルが高い。佐藤氏も「AI人材育成のためにRやPythonを教育プログラムに取り入れた企業も多いが、その結果はどうだったか」とその難しさを指摘したうえで、「BIの世界がそうであるように、データ準備や(分析結果の)可視化、AI開発もドラッグ&ドロップで実行できるようにすることで、多くの人がより“ポップに”アップスキルできる可能性がある。それを実現するのがDataikuの強さだ」と説明する。

 「たとえばRやPython、SQLなどで書かれたデータ接続やデータ変換の内容は(そのスキルを持たない人には)なかなか理解できないが、Dataikuならばビジュアルフローのかたちで一気に見ることができる。また、取り込んだデータの中身や機械学習モデルの意味するところも、簡単にビジュアライズできる。それによってデータの専門家でなくても、よりビジネスにアラインした(即した)かたちでデータへの理解を深められる」(佐藤氏)

 実際、佐藤氏が企業のエグゼクティブ向けにDataikuのハンズオンを行ったところ、どんなデータ処理を行っているのか、どんな意味を持つ分析結果なのかに対する理解が深まり、「その後のプロジェクトのおける業績のコミュニケーションの仕方が変わった」と評価を得たという。

Dataikuではデータパイプラインの構築、データの可視化や開発したモデルの評価などを、クリック操作で“ポップに”実現する

 Dataikuでは、100万人のデータエンジニア/データサイエンティストに加えて、特定のビジネスドメインに対する専門知識を持ち、コーディングスキルはないもののデータ分析やAI/機械学習活用を支援できる「未来のAIワーカー」を、グローバルで5000万人育成することを目指しているという。そして両者の協働による開発の成果を、10億人のナレッジワーカー(ビジネスユーザー)が使うというシナリオだ。

データ専門家とドメイン専門家が共同作業でデータ分析/AIの開発を活発に行い、ビジネスユーザーのデータ消費を促すという流れ

 さらに佐藤氏は、Dataikuでは顧客組織全体のデータ分析/AI成熟度を高めていくために、「戦略と組織」「人と変革」「ユースケースの拡大(デリバリーエンジン)」といったブループリントも提供し、顧客を支援していると説明した。

導入企業事例としてGE Aviation、カネカを紹介した

生成AIの組み込みも次なる視野に、日本市場における事業戦略も紹介

 現在大きな注目を集めている生成AI/LLM(大規模言語モデル)について、佐藤氏は「企業のAI活用を一気に加速させるもの」ととらえていると語り、Dataikuの次なる動きとして「生成AIを開発するプロダクトの中に組み込んでいく」方針だと述べた。

 具体的に実現するプロダクトの例として、自然言語による問い合わせに対してグラフィカルな分析結果や洞察を応答するセルフサービス分析、生成AIが出力した洞察をオファーメールなどの形にカスタマイズして提供するコンテンツ生成、非構造化データを会話型で探索する機能などを挙げている。

上述した3つのほかにも多数の生成AI/LLMの使用例を公開している

 佐藤氏は最後に、日本市場における事業拡大戦略に触れた。日本市場においてはエンタープライズにフォーカスして、「パートナーエコシステムの拡大」「ブランド認知力の向上」「ターゲット顧客の開拓」「日本市場への最適化」といった方針にプライオリティを置くという。カスタマーサクセスチームを配置して、ROIを重視しながら顧客の成功に寄り添っていくとした。

 なおグローバルでは、金融、製造業、ヘルスケア、リテールといった業種の顧客が多いが、日本市場では「金融、ヘルスケアの領域がグローバルと比べて遅れている」(佐藤氏)という。こうした顧客の開拓とともに、Dataikuの考える“Everyday AI”の方向性に共感するパートナーコミュニティ、顧客コミュニティの拡大にも努めていくと述べた。

Dataikuの日本市場における取り組み

 「Dataikuは、特定のデータ専門家だけではなく『企業全体で変革をするんだ』という強い意志を持つお客様、組織全体でデータ開発やAI開発をするという大規模な取り組みをしているお客様において、非常に強い。したがってDataikuの差別化要因は、コーダーでもノーコーダーでも、またビジネスの専門家でもデータの専門家でも、オールインワンのエンドトゥエンドプラットフォーム上の共同作業を通じて、皆でプロダクトを拡大していける点にある」(佐藤氏)

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