ジョイントベンチャーを進める3つの目的
JVでは、「QCDSE(品質、コスト、デリバリー、セーフティ、環境)で競争力の高い商品を提供」、「より強いモノづくり企業として、さらなる供給先の獲得による事業拡大」、「技術・ノウハウの蓄積と共有による新規商材・エッジデバイスの創出」の3点に取り組むことになる。
「共通エンジンの設計、開発、共同購買、調達によるコスト競争力の強化を図る。また、他社にとっても魅力がある共通エンジンを開発できれば、2社以外にも採用を広げることができる。量の拡大により、一層のコスト競争力の強化、供給量の安定化を図ることができる」(リコーの大山社長)とする。
今回のJVは数年前から、リコーの山下良則会長と、東芝テックの錦織社長の話し合いが進められ、合意に至った。
オフィスにおける紙の出力は減少、コロナ禍がそれを加速
その背景にあるのは、共通した危機感だ。
東芝テックの錦織社長は、「複写機・複合機の市場は、5年、10年というスパンで見ると、ハードウェアはサチっていくことは明らかである。東芝テックは、2期連続で増収増益となっているが、ちょっと業績がよくなってきたから、それでいいという話ではない。いまこそ将来を見た上での総合的な判断が必要である」と危機感を募らせる。
リコーの山下会長も、「複写機・複合機は、働く人たちにとって、これからもなくてはならないデバイスであることを確信している」としながらも、「プリントボリュームは10年ぐらい前から、数%ずつ落ちる状態が続いている。ハードウェアの観点から見ると強い危機感がある」と吐露する。
デジタル化とペーパーレス化のトレンドは、複写機・複合機にとってはネガティブに働く部分が大きい。さらに、コロナ禍によるハイブリッドワークの進展は、その動きに拍車をかけている。
一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)によると、2019年の国内外の複写機・複合機の出荷台数は前年比7.3%減となり、2020年は20.6%減、2021年は0.2%減と3年連続で減少。とくに2020年の大幅な落ち込みはコロナ禍の影響が大きい。だが、2022年は13%増と、一転して回復基調に転じている。
東芝テックの錦織社長は、「コロナによって景色がだいぶ変わっている。それは、共通認識として多くの人が持っていることだ。だが、その議論だけに留まらず、本当に覚悟を持って動けるかどうかは別の話である。動き出すためには信頼関係が必要である。今回の合意は、そこまで至った点が重要である。これによって、ビジネスモデルをどう変えるか。協業の意義や思いは、がっちりと共有してきた」と、JVの取り組みに自信をみせる。
それに対して、山下会長は、「錦織社長とは、腹を割って、複写機・複合機業界の将来を話しあった結果、今回のJVの組成につながった」と語り、「A3複合機の世界シェアをみると、80%以上を日本企業が占めている。、光学画像処理技術に加えて、トナーや感光体などの化成品技術、紙搬送などのメカ技術を擦り合わせることが、新規参入や追随を困難にし、複写機・複合機市場で、日本の企業が世界を席巻することにつながっている」とする。だが、「個人的には、30年前の半導体業界に似た景色だと思っている」とも語る。
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