7週間ほど空いてしまったが、業界に多大な影響を与えた現存メーカー HP編の第3回をお届けしよう。拡大期に入ったHPであるが、1964年にCEOとCOO職を設けることにした。会長兼初代CEOにはDave Packard氏が就き、Bill Hewlett氏はCOO職に就く。
ただ5年後の1969年にはそのPackard氏がニクソン大統領の要請により国防副長官に就任することになり、Hewlett氏がCEO兼COOを務めることになる。ちなみにPackard氏は1972年にHPに戻ってくるが、復帰後は取締役会会長に再任されるが、CEO職は引き続きHewlett氏が務めることになった。
初のコンピューターを発表する前に
セシウム原子時計の製造に成功
さて、そのPackard氏がCEOを務めていた期間、HPは次々と新しい製品を投入していく。前回説明したように1966年には初のコンピューターを発表するが、少し前に戻る1964年にはセシウム原子時計の製造に成功する。
画像の出典は、“HP Memory Project”
セシウム原子時計そのものは1967年から1秒の定義に使われるほど精度が高いもので、誤差は10-15秒(1億年で1秒ずれる)程度のものである。ただこうした本当に精度の高い原子時計は、装置の規模そのものも大掛かりで、世界で数台に限られていた。
これが一次標準と呼ばれる、いわば秒の原器にあたるものだが、通常の商用などにはもう少し精度が低くても十分ということで、実際HP5060Aも精度は10-11秒程度であるが、それでも従来のものに比べると格段に精度が向上した。
“the Flying Clock”というニックネームは、実際にこれが航空機(旅客機クラスの機体に簡単に搭載できた)で利用されたことに起因する。ちなみにこのHP5060Aそのものは1964年から提供されているが、製品として出荷開始したのは1967年からである。
HP5060Aと同じ1964年には、初のスペクトルアナライザーであるHP851A/HP8551Aも発売されている。
画像の出典は、“HP Memory Project”
今でこそ普通に広く、しかも廉価に利用されているスペクトルアナライザーであるが、なにせ1964年なので最近のように周波数変換をFFTを利用したデジタル処理ができないため、これを全部アナログ処理で実施していたわけで、当時としては画期的な製品であった。
この連載の記事
-
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 -
第757回
PC
「RISC-VはArmに劣る」と主張し猛烈な批判にあうArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第756回
PC
RISC-Vにとって最大の競合となるArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第755回
PC
RISC-Vの転機となった中立国への組織移転 RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第754回
PC
インテルがCPUの最低価格を82ドルに引き上げ、もう50ドルでは売れない製造コスト問題 インテル CPUロードマップ -
第753回
PC
早期からRISC-Vの開発に着手した中国企業 RISC-Vプロセッサー遍歴 - この連載の一覧へ