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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第493回

業界に多大な影響を与えた現存メーカー CPU「ROMP」を開発して自滅したIBM

2019年01月14日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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40bitもの巨大な仮想アドレスを保有
ただしなぜ40bitにしたのか謎

 ROMPの仮想記憶は、物理的なメモリーは最大16MBまで対応ながら、仮想アドレスは40bitという結構巨大なサイズである。ただしこれ、12bit(0~4095)のセグメントに分かれた28bit(256MB)のメモリーエリア、というややおもしろい構成である。

個々のアプリケーション(今で言えばプロセス)からは32bit空間が見えるが、システム全体としては40bitで管理されているのがわかる。それにしても、一般ユーザー向けの特集号でよくここまで内部構造の説明ばかり書いたものである

 ページサイズは2KBで、12bitのセグメントIDと17bitのページナンバー、11bitのページ内オフセットという形になる。まだこの当時、この40bitをフルに利用できるOSは存在していないが、それに向けて32bitの仮想記憶マシンとして使うことももちろん可能だった。

 ただ逆に言えば、なぜ40bitの構成にしたのかの説明がついぞ見つからなかった。強いて 言えば、IBM System Journalの中に“ROMP is a good architectural base for future growth”(ROMPは将来の発展のベースとなる良いアーキテクチャーである)という文言があるあたり、この当時はROMPをベースに製品を展開していくつもりだったのかもしれないが、発展する前にROMPそのものの寿命が尽きたあたりが皮肉ではある。

 最終的にROMPは1981年、2チップ構成で完成した。プロセッサー本体は4万5000トランジスタでダイサイズは58.52mm2、MMUが6万1500トランジスタでダイサイズは81.36mm2である。

 先に書いた通り、どちらもIBMの2μm NMOSプロセスで製造されている。ソフトウェアとしては、こちらもまずPL.8が移植され、次いでこれを利用してさまざまな言語が移植されることになった。先ほどの4.3MIPSやIBM 801の15.1MIPSという数字は、いずれもPL.8を利用した場合の数字である。

ROMPのダイ。これは1986年に、文鎮として配られた景品(ガラスの中にROMPプロセッサーを封じ込めた、よくあるノベルティー)を撮影したものだそうである

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