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最新パーツ性能チェック 第230回

Radeonを内蔵するインテル製CPUの実力は?

“Kaby Lake-G”搭載NUC「Hades Canyon」は超小型VRマシンだ!

2018年05月16日 21時00分更新

文● 加藤 勝明 編集●北村/ASCII編集部

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 インテルとAMDは良き競争相手であるが、そのインテルがAMDのIPを取り込んだCPUを製造するなんて、少し前までは世迷い言でしかなかった。だがインテルはAMD製のGPUコアを自社製CPUと合体させたモバイル向けCPU、開発コードネーム“Kaby Lake-G”の投入を発表。このニュースに驚いた人もいたことだろう。

“Kaby Lake-G”こと「第8世代Coreプロセッサー with Radeon RX Vega M Graphics」

 インテルはHD GraphicsシリーズやIris Graphicsといった自社製GPUの技術を持ってはいるものの、描画性能という点ではAMDやNVIDIAのそれに遠く及ばなかった(integrated GPUとdiscrete GPUなので直接には比べられないが、それはさておく)。

 だがKaby Lake-Gでは、自社の弱点をライバルの手を借りて克服するという、少年漫画もびっくりの展開である。これに胸が熱くならない自作erはいないはずだ。

 このKaby Lake-Gはゲーミングノート向けの製品だが、インテルは一足先に自社の小型PCブランド「NUC」に搭載してきた。それが開発コード“Hades Canyon”の名で知られてきた「NUC8i7HVK」である。

インテル純正なのにAMDも入ってる“Kaby Lake-G”を初めて採用した「NUC8i7HVK」。米国Amazonでは910ドル(約10万円)で5月19日から販売される予定だ。本邦における販売に関しては原稿執筆時点においてまったくわかっていない

 従来のNUCと同様に、蓋を開けてDDR4 SO-DIMMメモリーとストレージ(本機はM.2専用)を追加すれば完成するお手軽キットだが、あらゆる意味でこれまでになく強力である、というのが売りだ。

 今回はこのNUC8i7HVKの評価キットを短時間だが試用するチャンスを得られた。インテルとAMDがフュージョンしたCPUを初めて採用した歴史的マシンの性能を、簡単ではあるがレビューしてみたい。

Vegaコアがほぼそのまま載った斬新なCPU

 まずはNUC8i7HVKのスペックを確認しておこう。下位モデル(NUC8i7HNK)と、同系統ボディーを使った前モデル(NUC6i7KYK)のスペックと比較する。

NUCの比較表
  NUC8i7HVK NUC8i7HVK NUC6i7KYK
開発コードネーム Hades Canyon Hades Canyon Skull Canyon
CPU Core i7-8809G Core i7-8705G Core i7-6770HQ
コア数/スレッド数 4 / 8 4 / 8 4 / 8
定格クロック/TB時最大 3.1GHz / 4.2GHz 3.1GHz / 4.1Hz 2.6GHz / 3.5GHz
L3キャッシュ 8MB 8MB 6MB
対応メモリー DDR4-2400+ DDR4-2400+ DDR4-2133
TDP 100W 65W 45W
dGPU部 Radeon RX Vega M GH Radeon RX Vega M GH --
SP数 (CU数) 1536基 (24CU) 1280基 (20CU) --
ベース/ブーストクロック 1063MHz / 1190MHz 931MHz / 1011MHz --
VRAM HBM2 4GB HBM2 4GB --
iGPU部 HD Graphics 630 HD Graphics 630 Iris Pro Graphics 580
GPU/最大クロック 350MHz / 1.1GHz 350MHz / 1.1GHz 350MHz / 950MHz
eDRAM -- -- 128MB

 ざっと比較すると、Skull Canyon時代からコア数やスレッド数は同じだが、Kaby Lake-Gを採用したHades Canyonでは動作クロック、特にTurbo Boost時の最大クロックが4GHz超に設定されている。

 さらにVegaベースのGPUコアを併設したためTDPはモバイル用CPUとしては異例とも言える最大100Wに到達している点も見逃せない。Kaby Lake-Gについての詳しい解説は、発表記事があるので、そちらをご一読いただきたい。

NUC8i7HVKに搭載されているCPUの情報を「CPU-Z」で拾ってみた。CPU自体の最大TDPは45W、差し引き55WがVegaのTDPということになる

同様にdGPUの情報を「GPU-Z」でチェック。情報に抜けが散見されるが、注目は接続インターフェースがPCI-E Gen3のx8接続であるという点だ

 Kaby Lake-Gに搭載されたGPU“Radeon RX Vega M”は、システム上からは完全に独立したGPUとして認識される。

 NUC付属のドライバーを導入するとRadeon設定までもがすべてインテルの青色ベースになるが、機能的には何ら普通のRadeonと変わらない。ReLiveやWattmanはもちろん、Fluid Motion VideoといったRadeon特有の機能はおおよそ利用可能だ。

 唯一“Radeon Software Adrenalin Edition”から追加された「AMD Link」を起動するための“接続”ボタンがない。おそらくこれはコストやサポート的な理由でスマホアプリが用意されてないからだと考えられる。テクノロジー的には融合できても、AMDロゴの付いたスマホアプリとリンクさせることは難しかったようだ。

搭載されたVega Mの各種設定は通常版Vegaと同様に右クリックからの“Radeon設定”で行なうが、NUC同梱のドライバーはスキンが青ベース。AMD Linkを設定するための“接続”ボタンは省略されている

Radeon設定によるVega Mの情報。ベンダーID“1002”が辛うじて残されたAMDであるという情報だ(サブシステムIDに記述された8086はインテルを示すもの)

録画機能である「Radeon ReLive」も通常版Radeonと同じ機能が利用できる

Ryzen Gシリーズではなぜか標準で利用不可能になっていたりする「Fluid Motion Video」にも、まったく問題なくアクセスできる

 前掲のスペック表を見ればわかる通り、NUC8i7HVKに搭載されているCore i7-8809Gには、インテル製内蔵GPU「HD Graphics 630」が内蔵されている。

 普通の自作PCでは、iGPUはdGPU(グラボ)を接続した時点で見えなくなるのが普通だが、NUC8i7HVKではデフォルトでデバイスマネージャに表示される。

 とはいえ、ディスプレーへの送出はRadeon側が行なっており、インテル製内蔵GPUを利用してUHD鑑賞用として使えるわけではない。ただRadeon側の出力を利用していても、Intel Quick Sync Video(QSV)は使えるようだ。

デバイスマネージャー上では、HD 630もVega Mも認識されている状態。ただし映像信号はすべてVega Mが出力しており、HD 630での出力はできない

HTC Viveのセットアップを行なうツールからはVega Mは認識されないため、性能不足と判定される。CPUも非対応と表示されている点から考えると、将来的なバージョンでは改善される可能性は十分にある

iGPUでの映像出力はできないが、NUC8i7HVKではQSVが利用可能のようだ。「TMPGEnc Video Mastering Works 6」で試してみたところ、QSVを利用する“Intel Media SDK Hardware”とVega M内蔵のハードウェアエンコーダーを利用する“AMD Media SDK”が表示された

※お詫びと訂正:記事初出時、Intel HD Graphics 630に関する記述の一部に誤りがありました。記事を訂正してお詫びします。(2018年5月24日)

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