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T教授の「戦略的衝動買い」 第479回

こだわりのCtrl+Alt+Delキーだけを抜き出した手遊びガジェット「KACHA」を作る

2018年05月02日 12時00分更新

文● T教授、撮影● T教授、編集●編集部ハシモト

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アキバでパーツを買ってプロトタイプを制作してみる

13ヵ月前に身の回りのガラクタと秋葉原の裏通りで買ったキーキャップで作った初代のKACHAのプロトモデル。開発コードネームが「Reboot Anytime」だった

13ヵ月前に身の回りのガラクタと秋葉原の裏通りで買ったキーキャップで作った初代のKACHAのプロトモデル。開発コードネームが「Reboot Anytime」だった

 キースイッチ3個とキーキャップ(キーボード1台分)は秋葉原で買って、本体は適当に身近にあったモノを削って作ってみた。

デザイナーにつくってもらった3Dモデルのデータ。すでにフロント(底面)は1984年に発表され、現在のPCの基盤となったIBM PC/ATへの傾倒が見える

デザイナーにつくってもらった3Dモデルのデータ。すでにフロント(底面)は1984年に発表され、現在のPCの基盤となったIBM PC/ATへの傾倒が見える

 この時点で商品名は「Reboot Anytime」と決めた。そして、本体素材は手に持って優しい感じのシリコン製にしようと決めて、早速、デザイナーに入ってもらって3Dのイメージを作ってもらった。

チェリーのキースイッチを使うことは当初から決めていたが、実際に採用するキースイッチを選択するのはなかなか楽しくも大変だった

チェリーのキースイッチを使うことは当初から決めていたが、実際に採用するキースイッチを選択するのはなかなか楽しくも大変だった

 同時に数多くのキースイッチをキーボード屋や秋葉原のパーツショップから入手し、何度も付け替えて採用キースイッチの選抜作業に入った。

手作り初代プロト(左)と3Dプリンターモデル(中央)、最初のシリコンモデル(右)の3つを使ってキースイッチやステンレス製のキースイッチベースのテストを重ねた

手作り初代プロト(左)と3Dプリンターモデル(中央)、最初のシリコンモデル(右)の3つを使ってキースイッチやステンレス製のキースイッチベースのテストを重ねた

 その後は、3Dプリンターで最初のプロトモデルを作り、シリコン製本体の最初のテスト製造となった。初期のシリコン製ボディーに、レーザーカットした厚さ0.7mmのステンレスベースをはめ込み、キースイッチを3個取り付け、キーキャップ取り付けて何度も何度もテストした。

強度の確保を第一に考えて、最終的にステンレス製のキースイッチベースは当初の2倍の厚さである1.5mm厚のステンレス板を新潟の工場でレーザーカットすることに決定した

強度の確保を第一に考えて、最終的にステンレス製のキースイッチベースは当初の2倍の厚さである1.5mm厚のステンレス板を新潟の工場でレーザーカットすることに決定した

 その後、シリコンは2度改善変更。1度は素材がやわらかすぎたので補強して肉厚に改善。そしてステンレス製のキースイッチベースが0.7㎜では、何度もカチャカチャと遊んでいると、時に力が入り過ぎて曲ってしまうことがあったので、一気に2倍の厚さの1.5mmに強化。これでまったく何をしてもたわむことのない頑丈なベースとなった。

ステンレス以外の素材もテストした。左からカーボン、チタン、2㎜厚の鉄板。チタンは極めて魅力的だったが、価格がそれを超えている

ステンレス以外の素材もテストした。左からカーボン、チタン、2㎜厚の鉄板。チタンは極めて魅力的だったが、価格がそれを超えている

 キースイッチベースのステンレス板が2倍に厚くなったので、シリコン本体内側の溝も拡張、同時に、真っ白のシリコン材ではなく、1981年当時のIBM PCやその後、登場したIBM PC/ATのようなちょっとくすんだオフホワイトに変更した。

 キースイッチを取り付けるステンレスベースは、キーを最後まで押した時の底打ち時の指先感覚と音に大きく影響するので、ステンレス素材以外のベースをその道の超プロの友人たちの力を借りて作ってみた。

 選んだ素材はチタンとカーボン、それと2mm厚の超重厚な鉄板。いずれも一長一短はあり、個人的にはチタンが印象に残っているが、とてもコスト的には見合わない感じだった。

筆者が個人的に出張などで愛用しているコンパクトなキーボードもチェリーの「青軸」だったこともあり、心はどんどん青軸に傾いていった

筆者が個人的に出張などで愛用しているコンパクトなキーボードもチェリーの「青軸」だったこともあり、心はどんどん青軸に傾いていった

 改善のためにシリコンが替わる都度、キースイッチベースが替わる都度、さまざまなチェリー製MXメカニカルキースイッチを取り替えてテストの毎日だった。

最終的に、極めてポピュラーだがKACHAの目的に最も適合している要素の多かったチェリーMXメカニカルキースイッチの青軸に決定して出荷対応できる最終プロトの制作にかかった

最終的に、極めてポピュラーだがKACHAの目的に最も適合している要素の多かったチェリーMXメカニカルキースイッチの青軸に決定して出荷対応できる最終プロトの制作にかかった

チェリーMX青軸はスペック的に見ても素晴らしいキースイッチです。分解してみましたが部品点数も少なく極めてシンプルな作りです

チェリーMX青軸はスペック的に見ても素晴らしいキースイッチです。分解してみましたが部品点数も少なく極めてシンプルな作りです

 最終的に、我々が選択したのは、チェリーMXキースイッチの「青軸」。一番最初の印象が、最後まで続いた感じだった。

 文字入力するための本当のキーボードを選ぶのなら別の選択肢もあるが、人生や生活をリブートするハートに刺激を与えるキースイッチは青軸以外は見当たらなかった。

 指先に感じるタクタイル感、その時に耳に届くサウンドフィードバック、いずれも青軸が優秀だった。

 唯一、青軸より使ってみたいと思ったのは、すでに製造、販売とも終了している工業用の緑軸だった。しかし、入手の難しさに加えて青軸の2~3倍のパーツコストは対象外だった。

 結局、筆者が青軸を選択したのは、自分が普段使っているキーボードの影響が大きかった。

最終的にKACHAで採用した部品。日本でデザインして中国で生産しているシリコン本体(上)、新潟でレーザーカットしている1.5㎜厚のステンレスベースとドイツのチェリーのMXキースイッチ青軸が3個、手になじむ懐かしいスカルプチャーのキーキャップ

最終的にKACHAで採用した部品。日本でデザインして中国で生産しているシリコン本体(上)、新潟でレーザーカットしている1.5㎜厚のステンレスベースとドイツのチェリーのMXキースイッチ青軸が3個、手になじむ懐かしいスカルプチャーのキーキャップ

3個のキースイッチを取り付けたステンレス製のキースイッチベースをシリコン本体に押し込み、キーキャップを取り付ければ完成。アセンブリーは新潟で行なっている

3個のキースイッチを取り付けたステンレス製のキースイッチベースをシリコン本体に押し込み、キーキャップを取り付ければ完成。アセンブリーは新潟で行なっている

 そして2017年12月末に、Reboot Anytimeの最終スペックは決定され、青軸キースイッチを発注。シリコンも3回目の改善をして最終発注となった。

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