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HPEがNimble Storage統合でInfoSight適用を拡大、同時にNimble全シリーズを国内発売

「HPE InfoSight」発表、3PARストレージにもAI予測分析を無償提供

2017年11月22日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は11月22日、買収後の統合を完了したNimble Storage(ニンブル・ストレージ)の新製品/サービスについて発表を行った。Nimbleが提供してきたストレージリソースや障害の予測分析/監視サービスを「HPE InfoSight」としてラインアップに統合し、新たに「HPE 3PAR」ストレージにも適用を拡大した。同時に、Nimble製品の全シリーズを国内販売開始したことも明らかにしている。

今回の発表概要。HPE Nimble Storageの全シリーズ国内発売と、HPE 3PARへのInfoSightの対応

日本ヒューレット・パッカード(HPE) ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッドIT製品統括本部 統括本部長の本田昌和氏

Nimbleで99.9999%の高可用性を実現したInfoSightが3PARにも対応

 米HPEは今年3月、フラッシュストレージベンダーであった米Nimble Storageの買収を発表し、同社の新会計年度がスタートした11月1日付で、その統合が完了している。

 今回はまず、Nimbleが競合優位性としてきたInfoSightサービスをHPEのポートフォリオに統合し、HPE InfoSightとして提供することが発表されている。新しいInfoSightの提供開始は2018年1月から。

クラウドベースの稼働監視とデータ分析を行うInfoSightの概要。顧客の実稼働環境から大量のテレメトリデータを収集し、ヘルスチェックや障害予兆検知、保守サポートの自動化などを実現

 InfoSightの特徴は、顧客データセンターで実稼働しているストレージシステムから大量のテレメトリデータ(センサーデータ、パフォーマンスや使用リソース量などの統計データなど)を収集し、クラウド上でパフォーマンスや容量を分析/可視化するとともに、高度な機械学習を用いた「予測分析」も行う点にある。たとえば、障害が発生する前にその予兆を自動検知し、業務への影響が発生する前にサポート窓口が顧客に対策をアドバイスしたり、ストレージ容量の増強がいつごろ必要になるのかを予測したりすることができる。

 HPE Nimble営業本部 技術部 部長の川端真氏は、Nimbleではこれまで、InfoSightのこうした能力によって、障害などのサポートケースの93%がベンダー側から自動的にオープンされ、そのうちの86%が解決策の提供によって自動的にクローズされてきたと説明。障害発生前の予防的対応や、障害発生後の迅速な対応を可能にしており、サポートに対する顧客満足度は「5点満点で4.9点」と高いことを説明した。

 なお、こうした機能によってNimbleのストレージは高い可用性を実現しており、2016年下半期には、顧客データセンターでの実測稼働率として「99.9999%(シックスナイン)以上」の可用性も記録している。

Nimbleのストレージでは、InfoSightの能力によって障害の自動予兆検知と事前サポートを実現している

 さらにInfoSightは、仮想化環境(VMware)の分析/可視化に対応する「VMSight」ツールも備えている。これは「VMware vCenter Server」から取得したデータを分析/可視化できる機能で、VMごとのストレージI/Oやレイテンシなどの状態を把握できる。川端氏は、Nimble顧客におけるアプリケーションパフォーマンス問題の原因を分析した結果、半数以上は「ストレージ以外」の部分にあったことを指摘し、VMSightは特に、こうしたパフォーマンス問題の原因切り分け/分析に有益だと説明する。

InfoSightが備える「VMSight」ツールでは、VMware環境におけるVMごとのストレージI/Oやレイテンシなども可視化し、パフォーマンス問題の原因分析を支援する

 今回の発表では、このInfoSightの対象ストレージとして新たにHPE 3PARストレージが追加された。3PARを導入済みの顧客は、最新OSへのアップデートによってInfoSightサービスを無償で利用できる(2018年1月から提供開始予定)。

 現時点(初期リリース)で3PARストレージ向けに提供されるのは、グローバルに分散配置された3PARストレージのパフォーマンストレンドやヘルスチェック、容量予測などを可視化するダッシュボード機能や、前述したVMSightツールを用いてスタック間をまたぐ分析機能など。初期リリースの段階では、Nimbleのようなサポートの自動化機能は提供されないものの、将来的には提供する方針であり、すでにその方向での開発も進行しているという。

 また、対応時期は明言しなかったものの、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品である「HPE Simplivity」へのInfoSight適用拡大の意向も明らかにされている。川端氏は、将来的にはサーバー製品などにもInfoSightのデータ収集ポイントを拡大することで、InfoSightが設定変更などのアドバイスを出すだけでなく、その処理を自動化し、データセンター運用管理の省力化につなげていくビジョンがあると語った。

将来的にはInfoSightのデータ取得ポイントをサーバーなどにも拡大し、ITインフラ全体にわたる分析/可視化/自動化を実現していく

バックアップ/セカンダリ向けNimbleストレージも追加

 今回は、HPE Nimble Storage製品ポートフォリオをリニューアルし、11月13日から国内でも全ラインアップの販売を開始したことも発表されている。

HPE Nimble Storageの製品ラインアップ。新たにセカンダリ/ハイブリッドストレージのSFシリーズが追加された

 具体的には、これまでも提供してきたオールフラッシュアレイのAFシリーズ、SSD/HDDハイブリッドのフラッシュアレイであるCSシリーズがモデルを増強したのに加えて、新たにバックアップ/セカンダリストレージ用途のフラッシュストレージ「SFシリーズ」2モデルがラインアップされている。SFシリーズも容量コスト効率の高いSSD/HDDのハイブリッド構成で、ディスクベースのバックアップストレージよりも高いパフォーマンスを持つことから、高速なリカバリー処理を実現したい環境に適する。

Nimble Storage SFシリーズの詳細。バックアップ/リストア処理の時間を大幅に短縮する

 さらにHPEでは、HPE Nimble Storageポートフォリオのリニューアルに併せて、実稼働率99.9999%の可用性を保証するプログラムを開始している。同社 ハイブリッドIT製品統括本部 担当マネージャーの諏訪英一郎氏は、この可用性保証はすべてのNimbleアレイ、すべての保守レベルにおいて標準サービス仕様として提供するものであり、「今回かなり思い切って、踏み込んだアプローチをしている」と語った。

 また諏訪氏は、Nimble Storageにおいても、HPEが提供する従量課金型の調達(利用)モデル「フレキシブルキャパシティサービス」に対応する予定であることを紹介した。2018年2月のリリース予定。

 加えて、NimbleがAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureのクラウド環境で提供してきた高品質なストレージサービスも、「HPE Cloud Volumes」と改称して提供される。これは、AWS/Azureデータセンターに近接するデータセンターに設置したNimbleのストレージ環境を、必要な容量やパフォーマンス(IOPS)を指定して利用できる従量課金型のサービス。ただし、現時点では北米リージョンのみで提供されており、国内リージョンでの提供は「検討中」だと述べている。

 製品発表会において、同社 ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッドIT製品統括本部 統括本部長の本田昌和氏は、フラッシュストレージ市場ではすでに“第3の波”が来ており、そこではフラッシュであることは当然の前提としたうえで「従来型ストレージでは実現できなかった要件を満たしていくことが求められている」と説明。具体的には「Predictive(予測可能)」「Cloud Ready(クラウドへのシームレスな対応)」「Timeless(永続的な投資価値)」の要件を満たすものとして、あらためてHPE Nimble Storageを発表すると述べた。

 特にInfoSightについて、本田氏は「“データセンター系AI”として、HPEのハードウェアビジネスを大きく変化させる要因になるのではないか」とコメント。「Nimble Storageは、われわれにとっても画期的な製品だ」と語った。

本田氏は、Nimble/InfoSightではこれからのストレージ基盤に求められる要件を満たしていると説明した

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