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山谷剛史の「アジアIT小話」 第147回

現地から見た、シャープのテレビが中国で売れている理由

2017年11月30日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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現地で売るためにはリアル店舗や看板が重要

小米のリアル店舗

小米のリアル店舗

地方都市でもOPPOやvivoは目立つ

地方都市でもOPPOやvivoは目立つ

 中国メーカーでも何でも売れるというわけではない。かつてシェア上位となったモバイルメーカーは、必ずと言っていいほど看板など露出が目立った。

 女性の自分撮りに特化した「メイトゥ(美図)」のスマートフォンは、ものすごくとがった製品だが、だからといって製品の良さだけでネットで売っていれば勝手に買ってくれるとは思っていない。同社もまた実店舗を展開し、認知向上につとめている。

 ECで売れているメーカーの代表格である「シャオミ(小米)」ですら、OPPOやvivoに学んで、実店舗を増やしているのが現状だ。

インドではサムスンの看板が多い

インドではサムスンの看板が多い

インドの地方都市では、こうした看板を置くだけでも、置かないよりは遥かに認知されるというもの

インドの地方都市では、こうした看板を置くだけでも、置かないよりは遥かに認知されるというもの

タイで普及するvivoの広告

タイで普及するvivoの広告

 中国以外のメーカーを見てみれば、世界的にシェアの高いサムスンは広告を地方まで出していた。アップル代理店でMacBookを売るようになり、家電量販店でSurfaceをよく見るようになったが、それがこの両製品が人気になった一因だ。

 しかし、日本の広告や販売店を筆者は中国やインドや東南アジアなどであまり見ることはない。

 筆者自身、ありがたいことに年に何回か講演に呼ばれている。そのたびに強く言っているのが、売るには現地で存在を認知されなければならないということ。

 どんなにマニアを唸らせる機能やパフォーマンスの製品を作ったところで、それが認知されないようでは買われないという話をしている。

 シェアを見ていると製品のクオリティーはそこそこいいという前提で、それよりも大事なことは店舗や看板を展開して多くの人に見て買って認知されることだと思っている。

 そうした講演で高確率で言われる感想のひとつが「営業の話を聞きにきているのではない、モノづくりの話がもっと聞きたい」というものだ。

 そういう感想は一部ではあるが、目にされない限り話題にならないし、認知されないものは買われるわけがない。「いいものを作れば売れる」という意見はあるが、どの国だってギークばかりではない。

シャープのテレビを中国内地でよく見るように
露出が増えることが重要

 最近になってシャープのテレビを筆者の滞在する内陸の省都でも見るようになった。親会社である鴻海が中国で展開した「天虎計画」なるテレビ販売計画によるものだ。

 その結果もあってシャープが復活しつつある。華人同⼠の交渉によるものか、中国中の店舗で販売されるようになった。

 無数のショップで売られるようになれば、それなりの台数が消費者の元に届き、口コミによってさらに拡散する。店があって認知されているからこそ、買おうかなという考えに至る人がいる。

 では、今どれだけの日本製品が露出しているだろう。家電量販店や電脳街の十数年前と現在で比べてみると、日本ブランドの露出は明らかに減っている。

 家電量販店やスーパーの⽩物家電売場でパナソニックの製品を、モールでカシオの腕時計を見るくらいだ。これでは中国で売れないし、日本の存在感がさらに低下するのもやむなしだ。

 日本企業やノキアの例のように露出が減ってシェアが低下するのとは対照的に、OPPOやvivoのように中国全土で露出をすることで、たった2年で急拡大するメーカーもある。

 中国でのブランドの神通力は「ナマモノ」のようなものですぐに鮮度は落ちてしまう一方、東南アジアやインドでは幾分鮮度は落ちない状況にある。

 だからといって「いいものを作れば買ってくれる」と思い込まずに、積極的に普通の所得の人(それでも購買力はある)が住む地域でも看板や代理店を置くなど、そうした方面にも投資して、数年で驚くほどシェアをあげて復活してほしいと思っている。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場」「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 」(星海社新書)。

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