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IBM&OSSミドルウェアもコンテナで展開、既存業務アプリの“リフト&シフト”を促進

プライベートCaaS&PaaS基盤「IBM Cloud Private」国内発売

2017年11月09日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは11月8日、「Kubernetes」や「Cloud Foundry」などを組み込んだアプリケーション開発/実行環境「IBM Cloud Private」の国内提供を開始した。CaaS(Container-as-a-Service)やPaaSをプライベート/オンプレミス環境に配置可能にする基盤ソフトウェアであり、IBMのミドルウェア群もコンテナとして提供することで、クラウドネイティブなアプリケーションの開発/実行だけでなく、既存業務アプリケーションのクラウドへの“リフト&シフト”も促進する製品となる。

「IBM Cloud Private」の構成概要。Kubernetesによるコンテナ環境をベースとして、企業システム基盤としてのプライベートクラウドに求められる機能群を包括的に提供する
日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏同 IBMクラウド事業本部 第三クラウド・テクニカル・セールス 部長の上野亜紀子氏

Kubernetesをベースに、次世代システム環境の必須機能をコンテナ提供

 IBM Cloud Privateは、IBMのパブリッククラウドから、他社のパブリッククラウド、オンプレミスのVMware環境やOpenStack環境、さらに「IBM Power Sysmtems」や「IBM Zメインフレーム」まで、多様なインフラ上で同一のアプリケーション開発/実行環境を提供できる製品だ。

 そのベースとなるのは、Kubernetesにより構成されるコンテナ/CaaS環境である。Dockerコンテナ技術の採用によって、ハイブリッド/マルチクラウド環境におけるシームレスなアプリケーションの可搬性(ポータビリティ)が実現する。さらに、オプションの「Cloud Foundry」を追加することで、PaaS環境もIBM Cloud Private上に統合できる。

コンテナ技術によって、開発したアプリケーションの柔軟なポータビリティが実現する

 IBM Cloud Privateでは、「Db2」「MQ」「WebSphere Liberty」といったIBMのミドルウェア/ソフトウェア群や、主要なオープンソースソフトウェア(OSS)/ミドルウェア群もHELMでコンテナ化し、オンラインのソリューションカタログとして提供する。これにより、こうしたミドルウェアを必要とするオンプレミス配置されている既存アプリケーションのクラウド移行とモダナイズを容易にする。

IBMミドルウェアや主要OSSなど、多数のソフトウェアがコンテナ化され「ソリューションカタログ」として提供されており、容易にデプロイできる

 加えてDevOpsツールチェーン、マイクロサービス開発基盤、マルチクラウド管理ツール「IBM Cloud Automation Manager」やシステム構築自動化(Infrastructure-as-Code)ツール群などもコンテナ化され、同基盤上で提供される。Javaアプリケーションのマイクロサービス化ツール「Microservice Builder」も含まれており、前述のLibertyランタイムと合わせて、既存Javaベースアプリケーションのマイクロサービス化も支援する。

システム構築自動化ツールとして「Chef」や「Terraform」も組み込まれており、テンプレートを使ってマルチクラウドに対し同一の環境をデプロイできる

 IBM Cloud Private製品版の最小構成価格は、月額13万400円(税込、4コア)から。ここにはKubernetesやコア運用サービス、ソリューションカタログ(コンテナカタログ)のほか、Microservice Builder、WebSphere Liberty、IBM SDK for Node.js、Cloud Automation Managerのソフトウェアライセンスもバンドルされている。別途、試用環境向け無償コミュニティ版も提供されている(ソフトウェアバンドルはなし)。

IBM Cloud Privateを構成する各種ソフトウェア群。IBMとOSSのツールを“ベストインブリード”で統合して提供する

IBM Cloudの“リフト&シフト”戦略にとって重要な新製品

 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏は発表会の冒頭、今回のIBM Cloud Privateは、IBM Cloudにおいて「戦略的な新製品」であることを強調した。これまで提供してきたオンプレミスPaaS基盤「IBM Bluemix Local」の後継製品と位置づけているという。

 三澤氏が4月のクラウド事業戦略発表会でも説明していたように、IBMでは、顧客がオンプレミスで保有する既存アプリケーションを変更なしでクラウドへ移行(リフト)し、そのうえでクラウドに最適化されたものに更新、モダナイズ(シフト)していく“リフト&シフト”を、クラウド事業戦略の中心に位置づけている。

 三澤氏は、IBMではベアメタル環境やVMware環境も提供できるパブリッククラウドサービスだけでなく、プライベートクラウド、メインフレームなど幅広い製品を提供しており、(1)変えなくてよいアプリケーション/(2)クラウドへのリフトだけを行うアプリケーション/(3)リフトしたうえでシフトしていくアプリケーション/(4)最初からクラウドネイティブで開発するアプリケーション、という4つのケースすべてに対応していると説明。今回のIBM Cloud Privateは、特に(3)の“リフト&シフト”と(4)のクラウドネイティブアプリケーションに対応する環境を提供するものだと述べた。

IBM Cloudの戦略は“リフト&シフト”が中心。今回のIBM Cloud Privateはそれを支援する製品

 また三澤氏は、KubernetesやDockerをはじめ、IBM Cloud Privateに取り込まれている数多くのOSSコンポーネント群に対し、IBMは多大な投資とコミットメントを行ってきたことをアピール。同製品がオープンテクノロジーをベースとしており、ベンダーロックインを防ぐものであることを強調した。

 なお、これまで提供してきたBluemix Localとの違いについては、IBM Cloud Privateが“セミマネージド型”製品であり、基本的に顧客自身で運用管理する開発/実行環境であることを挙げた。非常に厳密な情報セキュリティを必要とする金融機関や政府機関などにおいては、パブリッククラウドサービスだけでなく、フルマネージド型で提供されるBluemix Localに対しても「ベンダー側が特権IDを持っている」ことなどを懸念する声があったという。オンプレミス設置や柔軟な監査証跡の取得などを可能にする今回の製品によって、こうした顧客への対応もできると三澤氏は説明した。

厳密な情報セキュリティを要求する顧客においても、パブリッククラウドの各種課題を解消できる

 なお、発表会にはIBMクラウド事業本部 第三クラウド・テクニカル・セールス 部長の上野亜紀子氏も出席し、アプリケーションのクラウドへのリフト/リフト&シフト/クラウドネイティブの3パターンに分け、それぞれを支援するIBM Cloud Privateの各種機能を説明した。

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